シビル・ウォー アメリカ最後の日(感想)
監督:アレックス・ガーランド
脚本:アレックス・ガーランド
出演:キルスティン・ダンスト、ヴァグネル・モウラ、ケイリー・スピーニー、スティーブン・ヘンダーソン、ニック・オファーマン
独裁を敷く大統領と、それに抵抗する勢力との間で内戦状態になっているアメリカが舞台で、主人公のカメラマン・リー(キルスティン・ダンスト)達はその大統領のインタビューを取るため、戦場となっている各地を通ってニューヨークからワシントンD.C.まで向かう。
ドラマ『ラスト・オブ・アス』やゾンビ映画を思い出すような、荒廃したアメリカというシチュエーションだが、ゾンビも人が凶暴化するウイルスも宇宙人も出てこないのに常に死の恐怖が付きまとう風景は、逆に新鮮で引き込まれる。
予告編でも登場する、正体不明の軍人(ジェシー・プレモンス)の「どんな種類のアメリカ人だ?」というセリフを言うシーンは、特にアジア人として非常に恐怖を感じるシーンである。ただ直後のスティーブン・ヘンダーソン演じる老記者の行動は思わず驚きと笑い入り混じった声を上げてしまった。
またアクションシーンも非常にリアルで、すぐそばで銃弾が飛んでくるような恐怖感と迫力がある。
終盤にかけての西部勢力(劇中の反大統領勢力)によるワシントンへの侵攻シーンも、「アメリカ軍がアメリカを攻めている」という異常さも相まって非常に見ごたえがあった。特にこれは主人公を従軍している記者に置いており、兵士ではないのに前線に晒されていることからくる感覚だろう。
英語ではカメラで撮影することも銃を撃つのと同じ「shoot」である。主人公のカメラマン、リーもその弟子のようになっていくジェシー(ケイリー・スピーニー)も序盤は控えめに撮影しているが、終盤にかけては特に若いジェシーが積極的に前に出て撮影しようとするため、「shoot」の暴力性が際立ってくる。
軍事作戦が描かれるのと同時に、登場人物達が撮影した戦場の写真が挟み込まれ、本当にこういう戦争が起こったのではないかという錯覚してしまうのは、そのこと自体が何を信じるべきなのかが問われる現代の比喩にも感じた。
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