筋トレ:筋肥大について

テレワーク続きでおなかが出てきたので、去年の12月からジムに通い始めました。そこそこ体重も落ちたので(マイナス11kg!)、2月からは増量期に入ることにしました。

ようは、きちんと筋肥大を狙って筋トレを始めて、およそ半月経ったというところです。しかし悲しいかな、鏡を見てもなかなか筋肉がついている感じがしません。腹の肉はかんたんについたのに。

そもそも、筋肉というのはどうすればつくのか?というあたりのメカニズムをちゃんと理解していなかったので、いろいろ調べてみることにしました。

筋肉繊維がちぎれるって何?

「筋トレするとどうして筋肉がつくのか?」に対するアンサーは、「筋トレすると筋線維がちぎれて、それを治すときに筋肉が太くなる」だと思っていたのですが、資料をいくつか見てるとこれは正確な情報ではないようでした。

これについては、わたし自身も直感的に変な気がしていたところではあります。例えば、ちぎれた筋線維が再びつながるとして、その筋線維同士はどうやって元の位置まで戻ってきたのか、とか。ちぎれた配線がひとりでに繋がることなんてあるのかな?という疑問です。(これが末梢神経ならシュワン細胞のガイダンスで元の位置まで神経細胞が伸びていったりするのですが、、)

また、筋線維数は胎生期までに増加が終了するようなので、筋線維が傷ついて切れたので新しく筋線維を作り直す、という働きも我々の体にはもうないものと考えて良さそうです。

筋肥大のメカニズム

「筋線維がちぎれる」というのは、やはりわたしの勘違いのようでした。調べていて多く目にする言葉としては、「筋肉が傷つく」というものでした。ちぎれはしないが、筋線維にダメージが入るということでしょうか。

筋力トレーニングを行うと筋肉に負荷がかかるため、そのストレスによって生じた筋線維ないし筋細胞へのダメージを「傷つく」と称しているようです。ダメージの例としては、細胞膜の一部が破れることなどでしょうか。傷ついた筋細胞から漏出した細胞内物質に反応して炎症因子や白血球が集まってくることが、筋肉痛の要因のひとつであったりします。

つまり、「筋細胞がダメージを受けて、その修復の過程で筋細胞が大きくなることで筋肥大が生じる」というのが大まかな理屈のようです。となると、次に出てくるのは「どのようにして傷ついた筋肉を修復するのか?」という疑問です。

サテライト細胞

筋肉には大きく3種類あり、骨格筋、平滑筋、心筋と分類されています。このうち、筋トレで肥大が期待されるのは骨格筋です。

骨格筋の筋細胞の特徴として、多核細胞であること、細長い円柱状の形状をしていることなどが挙げられます。多核であることについては、発生段階で筋細胞が形成される際に、筋前駆細胞という単核細胞からなる筋芽細胞が融合するためのようです。成長してから筋線維が増えないのは、これを構成する骨格筋細胞が多核であることにも起因しているようです。

骨格筋細胞は傷ついても自身でそれを修復する能力は備わっていません。ではどのようにして傷ついた細胞を修復するのかというと、筋線維の周囲に存在するサテライト細胞が修復に一役買っているようです。筋幹細胞であるサテライト細胞は、筋がダメージを受けて損傷したことをトリガーに増殖を開始し、傷ついた部分を補うように筋細胞と融合することで修復を行うという機能を持っています。

サテライト細胞(が分裂して生じる細胞集団)が傷ついた筋線維と融合し、これにより既存の筋線維より径の太い筋線維が生じる。これが筋線維が肥大するメカニズムのようです。逆に、サテライト細胞を欠いたマウスを用いた実験では、損傷を受けた筋肉には再生が起こらず、筋委縮が生じてしまうという結果もあるようです。

まとめると、筋トレによる筋肥大とは、
 筋線維に負荷がかかる
→筋損傷が生じる
→サテライト細胞による修復が行われる
→結果として筋線維の径が太くなる
というメカニズムで成されるということになります。

蛇足:筋力について

筋力に関する要素は、大きく2つあります。

ひとつは、ここまで散々論じてきた「筋線維」。骨格筋の筋張力と筋断面積には相関があるようで、筋線維が太い=筋肉が大きいほど最大筋力は大きなものとなります。

もうひとつは「神経系」です。筋肉の収縮はそれぞれの筋線維に連絡している神経からの命令で行われます。この命令は、神経科学で言う「全か無かの法則」に則り、それぞれの筋細胞ごとに収縮するかしないかが0/1で決まります。つまり、命令が下される筋線維が多いほど発揮される筋力も大きくなるという理屈です。

いくつかの文献を調べてみると、筋トレを始めて2~4週間は顕著な筋肥大は見られないとのことでした。これは、トレーニング初期は筋肥大ではなく、神経系の最適化が優先されるためのようです。増量を始めて半月のわたしは、おそらくまだこの最適化のプロセスにいるために見た目の変化が小さいのではないかと推測します。はやく大きくなりたい。

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