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10/5 秋の気配と古川本舗の訪れ


台風が過ぎると、夏の残り香が風雨に流され、空気の匂いが一気に秋に変わってくる。誕生日が10月ということもあり、秋は一番好きな季節だ。肌に触れる涼しげで、物悲しい温度が、たまらなく心を締め付ける。耳にする音楽も、その感傷に適したものへ自然と変わってくる。


フジファブリックの「赤黄色の金木犀」やMr.Childrenの「口笛」など、秋にふさわしい名曲は数多くあるが、僕が中でも気に入ってるのは古川本舗の「SOUP」というアルバムだ。この季節になると、このアルバムを何度も聞き返してしまう。元々はボカロPとして活躍していた作曲家だが、このアルバムではキクチリョウタというシンガーソングライターをメインに添えた共同作品となっている。


このコンビの織りなす世界観は、まさに最高に幸せな結婚と言うべきだ。叙情的で美しい古川本舗の作曲と、繊細で掠れた雰囲気のキクチリョウタの声が、お互いのいいところを見事に掛け合わせた珠玉のコンビネーションを生み出している。オアシスのリアムとノエル、ヨルシカのn-bunaとsuisように、1+1を10にも100にも変える奇跡の組み合わせに準えていいと思う。


10代の頃は自分で曲を作り、自分で歌うのがミュージシャンとして最も理想的な姿だと思っていた。歌い手と作曲が分離している作品はどこか不完全のように見えたし、商業的な匂いを感じて距離を置いていた。しかし、人と人が繋がり、予想を超えた化学反応が起こり、当人たちにも思いがけない奇跡的な作品が生まれていくのを、年を重ねる度にどんどん目にする機会が増えた。「鬼滅の刃」や「Ado」などはその最たる例だ。個人で完結する世界には限界がある。古川本舗もキクチリョウタだけではなく、様々な歌い手をコラボをしながら自分の作品を展開し続けている。彼もまた「繋がり」の中で、表現に広がりを与えているのだろう。


人肌恋しくなる秋の季節に、手を取り合った二つの才能が、内側からそっと暖めてくれるような作品。それが「SOUP」だ。皆さんもオススメの秋を感じる作品があれば、是非とも教えて欲しい。

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