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読書感想 ~痴人の愛~

 小説の文庫本を読み始めて3ヶ月弱になります。
これまではタイトルが印象的でしたり、表紙のイラストがいいなぁと思ったものばかり読んできました。

 前回読んだ新潮文庫の「オルタネート」もその例で、見慣れない単語と水彩画の不思議な雰囲気に惹かれたのです。読み進めると、現代を生きる高校生の人間関係の複雑さや高校生活の出来事に様々な感情が一気に溢れ出す感覚を覚えました。
ホント綺麗な作品でした☺️


 次に読むのもそういう感動を味わいたくなるのですが、そればかりだと読書の幅が広がらないとではと考えて、今回は時代を遡って人間関係の黒い部分を知れる作品にしました。

 谷崎潤一郎の「痴人の愛」です。

 谷崎氏を知ったのは高校受験のために塾で文学史の授業を受けた時です。塾の先生からスケベな作品を書いた作家だと聞いたことが印象に残っていました。男女の仲をとかく描写するのかなぁと勝手に思い込んでいました。

 谷崎氏の作品で「細雪」と「痴人の愛」が有名だと覚えてました。どちらかを読んでみようと考えていたものの、「細雪」は上中下巻の三巻に分かれているほどボリュームが多いために手を出す気力が湧きませんでした。そこで1冊で完結する「痴人の愛」を読むことにしたのです。


 この作品は新潮文庫と角川文庫が発売されてますが、角川文庫の方を買いました。なぜなら、アニメ調の表紙に惹かれたからです。維持の作品は読み難いのではと想像し、良い感じの表紙の力を借りれば読み進められると考えました。


 実際に読んでみると、大正と昭和の戦前の時代背景なのだと分かる見慣れない単語が幾つかあるけど、文章自体は読みやすくて、ストーリー展開と登場人物の心境が理解しやすいです。意外にも濡れ場と思われる描写は一切なくて、純粋に女性の美しさを丁寧に表現されています。


 とにかく印象に残るのはナオミの悪女っぷりです。男をたぶらかすのが巧みで、際どいところまで男を惹きつけながら決して一線を超えさせません。これで知性と品性を兼ね備えていれば誰もが認めるレディなのでしょうが、残念なことに、ナオミは教養が足りず自堕落で身勝手です。

 こんなナオミの様子を読んでいると眉間に皺がよって怒りが湧き上がってしまいます。読み終えた後に思わず、こんな女に絶対に惑わされてはならないと肝に銘じました。

 けれど、文字だけを読めば決心するのは簡単ですが、もし実際にナオミのような蠱惑的な美女と直面したら、その誘惑打ち勝って自我を通し続けるのは難しいでしょ。結婚するまでに交際を重ねて相手がどういう異性なのかをどうやって見極めようかを考えるようになりました。


 文豪の作品は表現の巧みさと美しさを感じ、人生における教訓を示しているかのように思えてなりません。

終😌

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