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グッドパッチの海外展開には地味に注目している理由

デザイン業界では超大手のグッドパッチ

今日、取り上げるのはグッドパッチです。6月30日にマザーズに上場したデザイン会社です。
主にWebサイトやアプリなどのデジタルデザインを手掛ける会社で、UIやUXデザインを得意している会社ですね。ニュースアプリの「Gunosy」や家計簿アプリの「MoneyForward」のデザインを手がけたことで知られています。また、noteをよくご覧になる方であれば、土屋社長の組織崩壊と復活の話でご存じの方もいるかもしれません。

私はIT業界にいるのですが、良く耳にする会社の一つで、肌感としては「お、グッドパッチにお願いしてるんですね」というのが割とありますね。つまり、業火内ではよく名の知れた会社ということです。

さて、このグッドパッチはどんな会社かと言うと、社員の多くがデザイナーや、デザインに明るい人材を200人規模で揃えています。
デザイン会社は数人、多くても数十人でやっているところがほとんどなので、この200人以上の規模というのはかなり大きくいわば、デザイン業界の超大手と言っていいかもしれません。

事業の要は「デザインパートナー事業」と「デザインプラットフォーム事業」

さて、どんな会社なのか見ていきましょう。
売上は2020年8月期の連結業績予想は売上高22億3700万円。

グッドパッチでは「デザインパートナー事業」、「デザインプラットフォーム事業」という2つの事業セグメントを分けています。

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前者の事業がクライアントがいるサービス、後者が自社サービスという位置づけです。

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現在の収益のメインはデザインパートナー事業で、全体の8割程度はこちらの売上だと思っております。

・デザインパートナー事業
・デザインプラットフォーム事業
 ・Prott
 ・ReDesigner
 ・Goodpatch Anywhere
 ・Strap
 ・Athena

整理すると上記のような2つの収益柱があり、デザインプラットフォーム事業にいくつのかの自社サービスがいくつかあります。

自社サービスの内容について2つ例を上げて少し触れておきます。

「Prott」はアプリ制作制作などに活用できるプロトタイピングツールで1ユーザごとに月額使用料を支払います。ちょっと古いデータですが、2015年に2万7000人のユーザを達成したので、今はもっと多そうですね。
「ReDesigner」はデザイナーのための転職エージェントです。2020年2月の時点で、252社の契約企業数があるようです。おそらく、この手のエージェントと同様に、成約したら、企業から求職者の年収○%をバックしてもらう収益モデルかと思います。

売上100億円をどう目指すか

上場時に土屋社長は100億円の売上を目指すと言っておりましたが、どのような戦略を取っていくでしょうか。

焦点はクライアントから依頼されて制作を行うクライアントワーク中心のデザインパートナー事業だけでは限界があるのでは?というところかと思います。このモデルのメリットは、ある程度のスキルを持った人を確保していけば、積上げ式で利益を産めて、かつ、急に利益が剥落しないメリットはある一方で、爆発的なスケールはしづらい労働集約型になるデメリットは抱えると思います。

市場も、このような労働集約型のビジネスに対しては限定的な評価をすることが多いです。土屋社長もクライアントワークには並々ならぬ思いを持っています。
Goodpatchがクライアントワークを続ける理由

私もこれは同感で、ひとえにクライアントワークと言ってもグッドパッチの方法論やブランドは一朝一夕で真似できるようなものではないと思います。これは、私の経験上ですが、外部の制作会社に同じような類の仕事を依頼しても、会社によって、進め方はさることながら、アウトプットの品質は全然違ってきます。

面白法人カヤックを参考にしてみる

いい比較対象が無いかと思いついたのが、同じくマザーズに上場している面白法人カヤックです。カヤックは2014年に上場したゲーム開発やWeb、アプリの制作を行う会社です。その名の通り、携わる企画や社風もとてもユニークです。売上高は2020年12月期予想で売上71億円、営業益は2億円を見込んでいます。社員数は300人程度で、そのうちの9割はデザイナー、エンジニアが占めているので、グッドパッチより1.5倍ほど社員数が多い感じです。

カヤックは上場以前は受託+自社サービスをいくつか運営(大小問わなければかなりの数あったはず)していましたが、上場前後のタイミングで事業譲渡やクローズをしていき現在はソシャゲー開発に絞っているように見受けられます。

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2014年(上場した年)の通期決算
全体売上:28.96億
クライアントワーク:11.8億円 40%
ソーシャルゲーム:12.9億円 44%

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2019年の通期決算
全体売上:63.82億
クライアントワーク:21億円 32%
ソーシャルゲーム:23億円 36%

※パーセントは全体に占める割合

この5年ほどで、いずれも2倍弱の成長となりました。
ただし、営業利益は新領域への先行投資などの影響で思うように伸びてないです。それはさておき、グッドパッチの現在の売上はカヤックの上場時とほぼ同じ規模ですね。グッドパッチのほうが、クライアントワークでの売上は当時のカヤックに比べても高いかもしれません。クライアントワークについては、人を増やしながら、受注数を増やす&受注単価を上げるグロス施策を
コツコツやれば、利益率も大きく下げないで現在のカヤックくらいの成長率には十分なると思います。

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実際にこの数年のデータを見ると、受注単価は徐々に上がっております。そして、鍵になるのは自社サービスとも言えるデザインプラットフォーム事業の方でしょう。

正直、今の自社サービスは既存事業とのシナジーはあって悪くないですが、B向け、かつかなり専門領域に寄っているので爆発的なスケールはしないモデルかなと思ってます。それゆえに、投資視点という意味でも期待値は低く妙味は少ないかもしれません。

事業的なスケールというよりは、グッドパッチという唯一無二な存在をどこまで評価できるかという点にかかってきそうです。この時点で海外に拠点を構えて、世界を市場に見据えているのは非常に面白いと思いました。2015年にドイツにデザインスタジオを構えています。

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現時点では全体売上の15%を占める2億円ほどが海外での売上です。

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今後、海外展開は強化していく方針ではあるみたいです。このコロナ禍だと、なかなか新規開拓は難しい気もしますが、世界中にデザイナーのネットワークを構築ができれば、日本のデザイン業界でもさらに頭一つ出られるきっかけになりそうです。

この点は、実はスマートニュースにも近いかたちも模索できるのではないかと思っています。国内のニュース市場が飽和しつつあることを見越してか、数年前からスマートニュースはアメリカでの展開を試み、最近では「日米で展開」という枕詞がつけられるように、その点での評価やブランド確立がされてきています。
グッドパッチに話を戻すと、自社サービスのGoodpatch Anywhereはフルリモートでのデザインチームを掲げているので、シナジーもありそうですし、リモートは今後、数年のテーマにもなってきそうなので、この辺りの成功事例が付けられれば、売上規模だけでは評価しきれない時価総額に到達できると信じております。