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汗が止まらない

ある冬の寒い朝
目が覚めると手が汗でじっとりしている。
体は寒さで冷え切っているのに
何か妙な感じだ。

手の平に鼻を近づけると
メントールのようにスースーするような
苦いようなケミカルな感じの匂いがする。
なんとなく普通じゃない気がした。

その日以来
手汗とそのケミカルな匂いが日常になった。
手汗を気にしていたら以前のように足汗もまたひどくなった。

同じ頃もう一つ気になることがあった。
尿から妙に苦い匂いがすることがあった。

やっぱり何かの病気なんじゃないかと思い病院であれこれ検査をしてもらった。でも私は表向き健康そのもので異常が見つかることはなかった。

精神的なものかもしれないから気にし過ぎないようにストレスを溜めないようにと言われた。
正直言ってこの症状が私のストレスの全てなんだけどとぼんやり思った。

完璧な悪循環。

また原因不明の体臭を気にする日常が戻ってきてしまった。

会社勤めだった私は毎日毎日一日中体臭を気にしていた。楽しかった仕事も楽しめなくなった。
近くの席の誰かがなんか変な匂いがするーと話しているのが聞こえてきっと私の匂いだなと思った。
いつもなるべく目立たないように存在感を消して静かに過ごした。

この頃巷ではスメルハラスメントという言葉が使われるようになってテレビやネットでもよく聞くようになった。

香水や柔軟剤、体臭などの匂いに迷惑している側の人たちが使う言葉だ。
逆に自分の体臭に困り果てている私のような人間は決して使わない言葉だ。

ただただきつい言葉だなと思った。

汗は日に日にひどくなって
それは手や足だけでなく胸の谷間や脇もいつもじんわり湿っているようになった。汗が増えたことで元々のケミカル臭より雑菌による体臭が気になるようになった。

このままだと普通に働くこともままならない。
そう思って一時凌ぎでもまた皮膚科に行った。

もはや恥ずかしいという気持ちも感じなくなっていた。
表情もほとんどなくなっていたと思う。
私は率直に暑くもないのに汗が止まらず体臭が気になると先生に伝えた。
先生は少し悩んだ後ある薬を出してくれた。
それは私もよく知っている薬だった。

この頃の私の救世主
アクアチムローション


ニキビに悩んだことがある人なら一度は使ったことがあるのではないかと思う。ニキビの原因となるアクネ菌等を殺菌する薬だ。
手に少量を出して気になる部分につけると嫌な匂いが消えた。ローション自体の消毒っぽい匂いはするけど体臭より全然ましだった。

それは私のお守りになった。
いつも持ち歩いて気になったらつけるようにしていたら汗をかいても体臭が気にならなくなった。

助かった。

また平穏な日々が戻った。
でもいろいろあって精神的に疲れたこともありその後私は会社を辞めた。
幸運なことに個人的に仕事の依頼をもらえるようになって自宅で仕事をするようになった。

もしもの時のお守りもあり
また周りの人を気にする必要がなくなって辛かった悩みは完全に消えた。

でもそれが根本解決ではないことは明らかだった。

止まらない汗とケミカル臭

ストレスで増える汗と雑菌臭

抗菌剤で殺菌
会社を辞めてストレスをなくす

減ったけど変な汗は止まっていない
今ここ

病気ではない。
でも私の体で何か異変が起きているのは明らかだ。

これから数年後
全ての原因と思える根本的事実に
私はようやくたどり着く。

続く

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