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風呂の中で髪を触る

 特にお湯で髪を濡らし髪を触っている最中、指の間に髪が何本か挟まり、それを反対側の指で取る作業中のこと。決まってそういうときだ。いろいろと書きたいことが思いつくのは。いつも頭の中で「ああ書き留めたいな」と思っても、風呂を出た途端にすぐに忘れる。悲しいかな、自分の記憶力のなさは。

 しかし、今日は風呂上がり化粧水をつけるのもそこそこにパソコンを起動してみた。noteを開いてみた。……と、じつはここに辿り着くまでもツイッターを見てしまったり、noteの通知をチェックしちゃったりした。したがって、先ほど思いついた「ああ書き留めたいな」ということはほぼ忘れてしまった。

 二年ほど前、恩師と会食中に「去年の今ごろ、何をしていたか覚えているか?」と唐突に聞かれたことがある。私は何も覚えていなかった。たしかその頃は27歳。ライター駆け出しだったけど仕事がバンバンきてめちゃ稼いでいた。でも、その分まったく休みがなかった。

 毎日朝7時に起きて中野のルノアールに行き、モーニングを食べながら喫煙席で煙草を吸って仕事をして、昼ごはんもそのまま高円寺とかで外食してその後ジョナサンに行って朝の5時まで仕事をする……みたいな生活をしていた。風呂になんて全然入らなかった。だから、昨日何を食べたとか、どこに居たのかとか、風呂で気づいたから考え事しちゃうみたいなことはまったくなかった。

 2020年は変わった。初めてスキンケアやお化粧の大切さや意味を知ったから、自分のことを外面的に大事にできるようになった。デパコスも初めて買った。自分のことをかわいくないから何をしても無駄とか考えなくなった。

 仕事もパンパンに入れず、まあ暇なときがあったっていいでしょ!くらいの考えにしたら、マンガ読んだり、映画を観たりする時間ができて、そうやってカルチャーに触れている自分のことが好きになった。

 ランニングを始めて、体をいたわるという感覚を知った。ああ、今体がつかれている。だから今、湯船に使って体を休めようと体のことを考えられる。筋肉痛を感じたのがここちよかった。

 高校の部活前に「始める前にストレッチをするように」と決まって顧問に言われた。当時は何を言っているのかよくわからなかった。頭と体と心が離れている感覚。今は顧問が言っていたことがわかる気がする。

 風呂ん中で指の間に髪が何本か挟まり、それを反対側の指で取る、なんてどうでもいい動作をいちいち書こうとも思わなかった私はもういない。だれも気に留めないようなどうでもいいことを書き留めておきたいと思う新しい自分ができた。


今度一人暮らしするタイミングがあったら猫を飼いますね!!