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この世から「患者」という言葉をなくしたい。

私は3歳で腎臓病になり、18歳から血液透析を始めました。
現在、透析歴は34年です。

血液透析は、週3回、1回4~5時間前後で行われます。
その負担の大きさに、体調のみならず精神的に落ち込んでいる透析仲間も目にしました。また、人事業務を担っていた会社員時代、病気になった社員らの休職手続きを通し、様々な病気に伴う苦悩と向き合いました。
また、自身がんにも罹り、透析の合併症とも向き合ってきました。

そして「病気をもつ人を支援したい」、「医療の恩恵を受けるだけでなく、貢献したい」と38歳で会社を退職。「腎臓病・透析に関わるすべての人の幸せのために」とペイシェントフッドを設立しました。

ペイシェントフッドの活動「ピアサポート」では、同じ病気をもつ人同士(ピア)で対話することで、大きな不安や困難を抱えた人が自分の生き方を取り戻し、治療に、そして社会生活に向き合えるようになりました。

また、病気をもつ人の経験や想いを創薬に活かすため、製薬企業社員向け講演・研修も行ってきました。病気をもつ人たちが、自分の経験が医療を変える力になると気づき、病気であることはマイナスではないと、既存の価値観が大きく転換していきました。私は、病気をもつ人が「生きる力」を取り戻し、その力が社会に波及したとき、医療はもっともっと良いものになると確信しました。

ペイシェントフッドの活動を通し、他の病気をもつ人たちと協働することも多くなりました。病気は違っても困りごとは似ていることが多く、疾患横断的な取り組みが必要と考えるようになりました。

そんな中、武田さん(ピーペック現理事)との出会いは大きな転換点でした。武田さんはもともと疾患横断的な活動をしてきた人間であり、私が抱えていた課題意識を共有できました。

病気をもつ者は可哀そう、護られる存在という社会の価値観をぶち破り、病気をもっているからこそ「社会を変えるパワーがある!」「カッコいい!」と思われるようにしたいという想いを、二人で熱く語り合いました。

こうした二人の思いに共感したメンバーと、2019年、一般社団法人ピーペックを設立しました。

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人は病気になった時、社会の価値観を通じてできた「患者」という枠組みに支配されがちです。それは「与えられた治療に合わせた生活を送るしかない」という固定概念です。「患者」と呼ばれた瞬間、社会の中で生きる様々の属性を奪われ、主体性を失ってしまうのです。

だから、私たちは この世から「患者」という言葉をなくしたい。

私とあなたを「患者」という言葉で分断させたくない。
私たちは一続きの地平に生き、たまたま私は病気をもっているだけなのですから。

病気をもつ人が、当たり前に社会参画して生きていける社会は、誰もが生きやすい社会です。
ピーペックは、病気をもって生きる当事者を中心に、多様な価値観を取り入れながら「病気があっても大丈夫!」と言える社会の実現に向けて活動していきます。

数々の取り組みの中の一つが、
「みんなでつくろう、これからの医療 <People’s Power flow into Healthcare:PPH> プロジェクト(PPHプロジェクト)」 です。

あらゆる人が立場を超えてこれからの医療を一緒に考え、創っていくためのプロジェクト。

病気をもつ人が治療のために生活を諦めるのではなく、自分らしい生活のための治療ができるように。そして、日本のこれからの医療を素敵なものにするために、病気や資格の有無に関わらず、すべての人たちが語り合い、病気をもつ人視点の治療・薬・サービスを「あたりまえ」にすることを目指します。
次回以降にはこのプロジェクトについても書いていこうと思います。

ということで、第一回目はこれにておしまい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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