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タカラヅカに出会わなければ本は読まなかったなぁと思う著者の話【宝塚の座付き作家を推す!発売に際して】

お笑いコンビのかまいたちの二人が共通の座右の銘として紹介している言葉があります。

「怠惰を求めて勤勉に行き着く」

『哲也−雀聖と呼ばれた男−』3巻(さいふうめい・星野泰視)より

少年マガジンで連載していた漫画の一節らしいのですが。彼ら曰く、賞レースを総なめにし、決勝の常連だったことが転じて「ストイックな芸風」といつしか思われるようになったと。だが、それは少し違って「どうやったらラクに早く売れるか」を考えた結果、大きい賞を獲ることと判断したまでで、自分たちのような者を芸にストイックだと言われるのははばかられるというような主旨で紹介されていました。

で、これを聞いて、私はまさに私たち(私と弟。巻き込んですまん)だなぁと思いました。そこから、私自身の座右の銘ともなっています。

今日、仕事と後学のための資料を探しに本屋街をうろついていて改めてそれを思い出しました。

前回の記事でお知らせいたしましたように、私は3月末(予定)に『宝塚の座付き作家を推す!』という本を上梓いたします。
著者としては、ご依頼いただいた版元さんの手前「みなさまぜひ買ってください」と申し上げるべきなんですが、今この時代、本をわざわざ買うのってめんどうだし手間だなと思う人の気持ちも痛いほどわかるんですね。

目的なく本を読めないスーパーせっかち 幼少期も今も

何を言い出すかと言えば、私自身、読書が全然好きじゃないからです。
編集・ライターで食っているというと、どうしても本の虫のように思われるし、本の虫であることが正義のようなコミュニティに属しているんでなかなか言いづらいんですが、今日神保町を歩いていて気づきました。私、本自体は全然好きじゃないなと。

理由は簡単で、せっかちだからです。
読むことそのものが好きで、本棚で選んだ1冊から新しい知に出合いたいという人が本当に読書好きだと思うんですが、私はとても無理。図書館に行くなら運動場や視聴覚室(死語)にいたい、家でも本を読むくらいなら漫画やテレビを観たい子供でした。必要に迫られて小学生の時に1年間だけ図書委員をしたんですが、その理由は次の項で……

とにかく、私が物心ついたころには、テレビだけでなくインターネットが普通に触れる環境で、興味があるかわからない本に手を伸ばすのは時間も労力も無駄だと割と本気で思っていました。ほしい情報はまずインターネット、未知の情報のザッピングはテレビと新聞で事足りると思っていたし、今も半分そう思っています。

だからこそ、逆に読書感想文の課題図書とかは積極的に読めていました。だって読みたい本なんてないんだもん、読めって言われるものを読めばいいなら超ラクって話。かなり得意でしたね。

今もその基本性質は変わっていないと思います。必要な本以外は買わないし、読まない。合うかどうかわからない本を読んでる時間が合ったら、舞台を観るか友達や家族に会うか、取材に行きたいです。

「読みたい」の理由を掘り下げると「観られないから」だった

先述の通り、小学5年生のときに1年間図書委員をすることになります。確か第2希望だったんですが、希望したのはなぜかというと……
宝塚の原作になっている小説や登場人物の伝記を読みたかったからです。
「本読みたなってるやんか!」って話なんですが、まあ聞いてくれよ。

拙著のもとになる連載でも紹介した気がするんですが、当時ぴあから発行されたムック『宝塚歌劇ワンダーランド』というものがありました。あった、これこれ

これは、こんなふうに1つの作品の上演情報(日程・スタッフ・キャストなど)とあらすじに加え、原作情報などが見開きで紹介される構成となっていました。

当時最前線バリバリの宝塚ファンの方や、都会の人からしてみたら“こんなもの”はただのコレクション的なムックに過ぎないのかもしれないですが、九州でなけなしの情報をかき集めている新規ファンにとっては宝物のようなムックでした。
子供だった私だけでなく当時30代だった母にとってもそうで、彼女も時間やお金が自由にならない主婦時代ですから、宝塚関連の書籍・雑誌をたくさん購入していたな、と。

それは隅から隅まで読んでいました。
なぜなら、それしか情報がないからでした。博多座もない。スカイステージもない。やっとキャトルレーヴ福岡ができたらしい、というくらい。はじめて宝塚を観たのはNHK(たぶんG)の番組「あなたが選んだタカラヅカ」というものでしたが、そうそう舞台放送や中継もない。「花の指定席」「フラッシュ タカラヅカ」も映らない。

ムックや本を隅から隅まで読んでも、情報量は有限です。次第に読むところがなくなってしまう。
そうすると、左下の方に書かれている原作情報に手を出すわけです。

これが私の、読書との出合いでした。
載っていて手に入る原作を手に入る範囲で読む。それも尽きたら、作家を軸に横展開する、というふうに。

それをするのに、図書室に入り浸れるのは都合がよかったというわけです。うちの小学校は大人向けの文庫も多くて、フィッツジェラルドもスタンダールも太宰治もありましたね。永井先生もあった気がする。アガサクリスティーとかも。そういう児童向けでない小説の棚を子どもらは「怖い本の棚」って言ってました。今思えばいいのか、あれ。

小学5年~中学と、そうやって日本から世界の文学を手当たり次第に借りたり読んだりしているものだから、担任や当時の友達は私のことをさぞ読書家だと思っていたかもしれないんですが、なんちゅうこたない、宝塚の原作になってる小説や人物の伝記を読んでただけ。
それから次第に、見た映画やドラマの原作に軸は広がりますが、基本はその姿勢も変わらないです。賞を獲ったとか売れてるとか、平積みで推されてるとかで読むことは皆無。就活で意識が高まったついでに読んだこともあるんだけど、挫折しました。‟ベストセラー”が本当に肌に合わない体質らしく、確かに合うかわからない本を読むことへのアレルギーは加速しました。

あとは、歌劇の座談会ページとか、生徒(出演者)や座付き作家のインタビューで紹介されてた書籍は読みます。映画も見る。それで『モロッコ』にハマったからなぁ~(recommended by 荻田さんだった気がする。確かマラケシュのとき)

最近は観劇すらそうで、信用している俳優さんや劇団代表の方がイイというものから広げていく感じで。そうするとほとんど「カネ返セ~」に当たらないんですよ。

大好きな舞台観劇ですら「失敗したくない」と思って選んでるわけで、本読む時間なんてもっと無駄にしたくないわけです。変わらないというか、その志向ますますひどくなっている。

ただ、だからと言っちゃなんですが、持ってる本や読んだことのある本をなぜ読んだかは全部話せます。極端な奴です。

文章の論理構築技術が“せっかちに金棒”に

ただ、そのくせに文学部に進学しているのだからあまのじゃくな話です。
これも結局、文学というか文学や現代芸術、パフォーミングアーツを取り巻く文化に総合的に興味があったゆえの選択で、学部として大っぴらに総合的にやれることを謳っている大学には限りがありました。あとはW稲田さんとD志社さんくらいのイメージで。D志社さんには美学芸術学科があるのは魅力的でしたな~

で、私の母校では映画や芸能史は文学部でなくS業社会学部という別の学部のプログラムでした。(※授業選択は可能)
そっちにしなかった理由はただ1つで、修了課題が卒論じゃなくて卒業プレゼンだったからです。プレゼン能力なんて社会に出てから、ヘタすりゃアルバイトでも身につけられるけど(実際経験したし)、まとまった量の論文を書くなんて暇な大学生時代しかできないんだから絶対こっちをやるべきだと思ったのでした。

そうこうして無事入学したら翌年に、対象は芸術分野だけれども、本来は社会学的アプローチを専門にている教授が文学部に着任されるという奇跡が起こる。これが恩師との出会いです、余談ですが(合掌)

大学の4年間は、本当にたくさんの本を読みました。が、やっぱり全部、専攻研究のために必要な情報を得るために読みたい本だけでした。この4年間でも、それ以外の本は一切読んでません。英語と仏語の速読の練習のために読んだ本くらいか。
というか、読みたい本すら読み切れなかった4年間で、今読んでいる本はその余韻で選んでいます。卒業後14年も持つ興味関心なんて、やっぱ大学って、高等教育ってすごいなぁと思います。受けさせてもらえてありがたい。

で、冒頭の「かまいたちの座右の銘の話」に戻るんですが、読書という行為そのものに愛着がなかったからこその速読・精読の力がついたなと自分で思うんです。
どうやったらこの苦痛な時間が早く終わるのか、さらには読み直す必要も最小限にとどめるためにいかに効率よく内容を吸収するか。特に大学の4年間はそればかり考えていました。宝塚の原作みたいに、興味があるものを読むのではないので、基本的にはめちゃくちゃ苦痛でした。

やっぱ今も嫌いです、本を読むのは。本を読むより人としゃべっていたいし、外でお日さまにあたっていたいし、もっというと寝たいです。

そう、基本的に寝てたいんです私。怠惰なんです。
起きて働かないとごはん食べられないから好きなことしかしたくないし、っていうタイプです。お金さえあったらずっと寝てます。
怠惰を求めて行き着いた結果がこれなんです。

読書そのものを楽しまなかったからこそ‟言葉”から得られるものを考えてきた

さらに、直感で「絶対こっちだ」とベットした卒論を通して培った文章を書く技術が10年飯のタネになっているのだから不思議な縁です。
今回はたまたま著者としてのお仕事をいただいたけれど、そうでない場合も雑誌、書籍、ウェブとどの媒体でも長文を書くのに苦労したことは新人時代から皆無だったのは大きな恩恵でした。

で、今回の書籍化のお話。
元々ウェブ連載のご依頼の段階で「こんな時代だからこそ読みふけってもらえるようなコラムを」とご依頼いただいたんですが、そんな私↑だから「無理だよ~私が読みふけりたくないのに」と思っていました。
が、そういう仕事もできなきゃダメだよな~という自分への負荷としてが7割と、‟宝塚の座付き作家”というコンテンツがそもそも面白いから大丈夫か!という気楽なテーマ頼みの自信が3割で何とか完遂。

結果としてご好評の声をいただいたのは、作家論でありながら批評にはもっていかず、「半分共感、半分発見」の割合で着地でき受け入れてもらえたからかと。
評価を論ずるだけ、良さをプレゼンして‟推す”一辺倒のものでもないし。
かといって100%論理でゴリ押しでなく、なぜそう思うのかという私の育ちや感情といった、エモーションの部分もかなりさらけ出しているし。

で、これを書籍化したいというお話をいただいたときも「嘘でしょ、こんな私的な文章が国会図書館に残るなんて黒歴史すぎるんだけど」と思いはしたんですが、宝塚歌劇関連書籍で“おそらく初の作家論”となると、このくらいがいいのかなという覚悟も決まったというか。

初の作家論が、他の素晴らしい専門家の方のあまりに完璧な論考だったら「他の声」が挙げづらいかなと思ったんですよ。かといって、感情的に褒めちぎる一辺倒だと読みごたえがないし、推しポイントを羅列しまくるのもなんだか時代に媚びてる感じがするし。

だから、この本を通して得られるものを先に申し上げると、あなたの中に「座付き作家」の好き嫌いを語る言葉が生まれます。今日の6,000字の要旨はここ! ここだけ読んでもらえればもうOKです!解散!!

拙著の中でも繰り返し出てくるキーワードなんですが、世間の「大きな声」に埋もれない言葉の力単に「私は私」という精神論での防御でなく、なぜ私は人と違う感想を持つか言葉にできます。そしてそのほうが、心が平和でいられます。

本が大嫌いだった子供が宝塚を通して本を読みまくり、本をつくる仕事に行き着いた今、言葉が何をくれるかという答えは「人と違う感性を受け入れて伝えられる力」かなと思うので。その思いを込めました。

本を読むのが苦痛な私の目線で‟共感+発見”のバランスにこだわりました

私自身が本読んでる時間が苦痛だからこそ、エモーショナルで読みやすい部分と論理的な読み応えのある部分のバランスもこだわって加筆しました。読後感が難解でもペラペラでも腹が立つもんだと自分が一番知っているからです。
お好きな先生の節は共感いただけるだけでなく、新しい角度からの新たな発見のお力になれるかと思います。嫌いな先生がいらしたらそこは納得いただくつもりはなくて、私という人間を知ってもらえたら超幸い、という感じ。これはウェブ連載やnoteのビジョンと同じです。
四六判200ページ超とは結構ボリュームがありますが、ダダダダッと一気に読めると思います。

これも繰り返しになりますが、これから座付き作家がフィーチャーされてほしいということはなくずっと脇役であってほしいんですが、作家を語る本やコンテンツ、場が増えるといいなと切に願います。
○○別おすすめ作家ガイドみたいなのもできたらおもしろいよね。つくりたい。つくりませんか?(営業)

あらためまして、出版社 青弓社さまより発売『宝塚の座付き作家を推す!―スターを支える立役者たち』をどうぞよろしくお願いいたします。

宝塚の座付き作家を推す!   スターを支える立役者たち 七島 周子(著)
四六判  280ページ 並製
定価 2000円+税
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074

https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787274533/

なお、前回記事でも申し上げました通り、発売予定日は近刊情報に記載がありますが、発売日は未定となっております。3~4月初旬の発売予定で、日取りが決定いたしましたら改めてお知らせいたします。
そして、できればあなたの町の書店で買ってほしいので、今回もISBNコードを5回唱えてご挨拶に代えさせていただきます。

ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074
ISBN978-4-7872-7453-3 C0074

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