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短編羅生門もどき


「幻影の十字路」
深夜、漆黒の闇に包まれた路地を彷徨う男、その姿はまるで孤独の化身であった。名を持たぬ彼は、偶発的に小さな村に足を踏み入れた。古びた建物と狭い路地、それらが織りなす風景は、何とも言えぬ寂寥さを漂わせていた。
彼が足早に進む先には、一つの十字路が広がっていた。その十字路は、静寂に凍りつくほどに静まり返っていた。そして、その中央にただひときわ立ち並ぶ、一本の樹木。その姿はまるで闇から湧き出たような影を広げていた。
彼はその樹木を見つめながら、不安を覚えた。足を進めようとするその瞬間、不可思議な声が彼の耳に届いた。
「静かにせよ。」
振り返ると、彼の後ろには漆黒の影が立ち並んでいた。その姿は見えないほどの暗闇に包まれており、それでいて、安心感をもたらしていた。
「君はこの村に迷い込んだ放浪者か?」
彼はうなずき、その影に対して答えた。
「そうです。」
「我は此処の番人。案内を差し上げよう。」
彼はその影に従い、村の奥深くへと歩みを進めた。その道のりはまるで幻想のようであり、彼は自らが夢の中にいるかのような錯覚に陥った。
やがて、影は彼を小さな茶室へと案内した。その中には一人の老人がおり、静かに茶を点てていた。
「君、ようこそ。我が村の長老なり。」
老人の声は柔らかく、彼は心の安堵を感じた。
「何か尋ねることがあるかね?」
彼は一瞬ためらった後、口を開いた。
「この村には何か秘密があるのですか?」
老人は微笑みながら、ゆっくりと頷いた。
「然るに、此処には秘密がある。然しそれを知ることは、君の運命を変えるかもしれぬ。」
彼はその言葉に心打たれ、しばし考え込んだ。そして、決意を固めて老人に問いかけた。
「我はそれを知りたい。」
老人は微笑みながら、彼に物語を語り始めた。その物語は、村が抱える悲劇と、それを取り巻く謎についてのものだった。
彼は物語を聞き入りながら、自らの運命がこの村で交錯することを感じた。そして、彼がこの村での出会いが、彼の人生に大きな影響を与えることを理解した。

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