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「勝てば幸せになれる」という呪い

「勝てば幸せになれる」

そう思い込んで生きてきた。

受験、就活、出世競争

物心ついたときからずっと、
誰かと争い、勝つことを目指していた。

でも、僕は知らなかった。
誰かに勝っても、幸せになれないことを。
むしろ、その言葉が自分自身を苦しめていたことを。

オランダ生活が無ければ、一生気づかなかっただろう。


勝利への承認


はじまりは幼稚園。

僕のクラスでは、ポケモンが流行っていた。
ひとりのクラスメイトが、ポケモンの絵を描いて持ってきた。

「絵を見せて」と彼の周りには、連日人が集まっていた。
彼の人気が羨ましかった。

家でポケモンの絵を練習して、彼より上手な絵を持っていた。
クラスで見せると、彼の周りにいた人達が、僕の方に集まるようになった。

”勝てば認められる”と知ったきっかけだった。


オランダ駐在への切符


それからは競争の連続だった。

小学校では、書初め大会と中学受験
進学校の中高では、大学受験一色
大学では、バイトと就活

社会人になっても、同期や同僚としのぎを削っていた。
「勝ち抜いたら幸せになれる」と一心に信じて。

がむしゃらに努力した結果、”社内最年少”での海外駐在を獲得できた。

「他人が羨むエリート街道を手に入れた、これで幸せな人生が待っている」そう思って疑いもしなかった。


オランダに住み始めて半年、僕の表情は曇っていた。


自分にかけた呪い


ヨーロッパ生活、一人暮らしには広すぎる家、手厚い給料や手当。
何ひとつ不自由はなかった。

でも、何もかもが上手くいってなかった。

  • 関係者と揉めて空回りが続く仕事。

  • 親しい友人や恋人もいない、孤独な私生活。

  • 趣味で始めたギャンブルでの失敗。


瀕死の僕にとどめを刺したのは、街中にあふれるオランダ人の笑顔。

  • 好きなことを仕事にしている、同僚やチーズ屋の店主

  • 趣味に没頭する隣人

  • パートナーとの時間を大切にする老夫婦

彼らはいつも幸せそうだった。

学歴、出世、高収入
そんなものが無くても、”自分のやりたいこと”をしていたのだから。

自分の中で何かが壊れた。
30年近く積み上げてきたものが、粉々になっていく。

残骸を見守る僕を包んでいたのは、
清々しさだった。


薄々気付いていた。

誰かに勝っても、渇きは癒えないことに。

勝った瞬間だけは潤うが、また直ぐに”渇き”がやってくる。
前よりもずっと激しい”渇き”が。

いくら注いでも、決して満たされるはずもなかった。
自分で穴を開けていたのだから。


自分を幸せにできるのは、自分だけ


  • 他人からの視線

  • 社会の価値観や常識

  • 過去への執着

全てを捨ててわかった。

僕が求めていたもの、
それは、「自分からの承認」だった。


ずっと自信がなかった。
自分が嫌いだった。
弱い自分を守るため、誰かと争っていた。

身軽になった僕は、初めて自身と向き合い。
”やりたいこと”を探し始めた。


それから紆余曲折を経て辿り着いたのが、この創作活動だ。

これが正解なのかはわからない。
また大きな変化が訪れるかもしれない。


それでも、自信を持って言い切れることがある。

それは、

僕は幸せに生きている、ということだ。


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