同期同期(doki×doki)飯

最悪のブログタイトルだよ。
一年近く文章を書かないでいたら、てんで言葉の才能は薄れ、
こんなクソ寒い題名を冠することしかできなくなっていた。
元から才能があったかどうかも些か疑問だが、就活の時期はとにかく「掛かって」いたことは確かである。

最近の私といえば、もっぱら「いつも大変お世話になっております」「何卒よろしくお願いいたします」が頻出文章となり、うっかり小学生の生徒にも「何卒……」と定型文を口走りそうになっている。敬語で喋るようになっただけのガストの猫。ビジネスメールロボットだ。いや、そうなれたらどれほどいいか。
「なるほど」という言葉が失礼にあたると知ってからは、なるほどと思っても「なるほど」など口にできなくなり、最近では神妙な面持ちでコクンと頷くことしかできなくなった。完全に言葉を奪われた。
なるほどって言いたいだろ!こっちは感心してんだよ!

そんな丁寧格付チェック社会に身を置いていると、どうにも些細なことにも「不敬」を見出す厄介な人間になってしまう。

先日、会社で先輩に「伝票の中で二重線で消さないといけない場所を当ててごらん」という非常に優しい問題を出してもらった。
ただ、その時の私は不敬に厳しいガスト猫だった。
そのため、伝票に書かれた「ご依頼主」の「主」は「あるじ」という意味で偉い人につかう漢字なので、ここも二重線で消さないと失礼なのではないかという完璧な閃きを得てしまった。
完璧な私は「主って偉いですよね、消しますか。」と逆転裁判の如く宣言を行ったが、「主は消しちゃダメだよ〜〜」「消したら依頼だけになっちゃうよ〜〜」という至極真っ当な返答をいただいた。

以降、先輩からは定期的に「主は消さないようにね」と言われる。
さながら謀反を企てるいくさびとへの忠告である。
こんなに礼節を重んじたいのに。重んじたいが故に謀反。悲しい。
せめて本物のビジネスメールロボットになれていれば、と思うのだけど、なかなか世の中そうはいかないようだ。

そんな折、自分の大学の同期×会社の同期という異様な体制でご飯をすることになった。
大学の同期で挑もうとしていた脱出ゲームの人数が合わなくなったため、急遽近隣在住の会社の同期を呼び出したのだ。

急に呼び出された会社の同期は完全に戦々恐々としていた。
彼は、会社の同期の中で唯一のお友達である。
端正な顔立ちで、おしゃべり好きの陽気で素敵な人間である。
ただし彼は進路の関係で極端に女人との交流がなく、人生に女の子が五人ほどしか登場していないという、逆ラノベのような人生を送ってきた。

また彼は大変な偏食家で食べれないものが多い。
卵、牛乳、全部ダメだ。
卵が苦手なのでオムライスも「まずい」と言って食べない。
付き合った女性にオムライス屋さんに連れて行かれた場合には「彼女に「オムオム」を食べてもらえばええ。俺が「ライスライス」を食べるから。」などと宣っていた。味噌汁'sの再来かと思った。
そんな訳で入社してからというもの、彼の卵を盗んで食べるのは私の役目であった。

そんなわけで彼は4月より「いい女の子を紹介してくれ」と私に泣きつき続けていた。かわいそうに。

そこで、だ。
女3人と男1で挑もうとしていた脱出に彼を呼んで、そのままご飯に行った。
なんだってこっちには、オムライス位しか外食ができないスーパー偏食女がいるのだ。オムライスほこたてと行こう。もしかしたらオムオムが成功するかもしれないぞ!

ところで、私とオムライス女はその時どうしても「ファミレス」に行きたかった。稀代の名作と漫画と出会ってしまったからである。
漫画でのファミレスはかなり明確にサイゼリヤとして描かれていたが、そのままサイゼリヤに行ってしまうと、どうも情緒が安定しないだろう、というくらいには漫画にやられていた。

そこで入ったのがガストである。
ガストはすごい。なぜかどのメニューにも「ミニハンバーグ」やら「エビフライ」をトッピングすることができるのだ。これほど楽しいことはない。
そしてガストには件の猫ちゃんロボがうろついており、4人席に無理やり5人で押し込められた我々を起点とし、度々渋滞を起こしていた。
当たり前のことだが、狭い通路にお誕生日席を置けば、猫は詰まる。ピロンピロと軽快な音を奏でながら。「何卒…」と言わないだけで、些細なことで狼狽えて定型文を繰り返す姿は大体日中の自分と同じだった。

誕生日席に座るオムライス女は、その度猫ちゃんに激昂した。
猫に威嚇を繰り返し、20年代ロシア映画の表現の話を繰り返し、全てのトッピングを頼んだピザを錬成する。都会の女の子の洗礼は厳しい。
とはいえ、彼もアパホテルで見られる謎の映画(詳細不明)を引っ提げ応戦する。さすがだ。全員図太い。私を通じてはいるが、なるほど。類友というやつだろう。
友人と居る時間の自在さは、どうしたって心地いい。ほら、なるほどだって言い放題じゃないか。なるほどなるほど。
ガストの猫ちゃんもバックヤードに戻れば、好き勝手にお話しできていれば良いなと思う。迷惑客の話とかなんかで大盛り上がりしてほしい。
そうしたらきっと、大渋滞を起こした私たちの話をされしまうのだけど。
それで猫ちゃんたちが盛り上がるならそれでいいだろう。

オムオムは別に成立しなかった。
とはいえ、どういう訳か、どちらの同期もお互いを割と気に入ってくれており、「また遊びたいな〜」とウキウキしている。
なんとなく、小学生の頃に「好き好き同士」を繋げるべく画策していた頃の気持ちを思い出す。大学の友人には、まだ紹介できていない秘宝もいる。
あのマイペースな25歳男児にはきっとびっくりするぞ。

今年も良い一年になりますように。
今後とも何卒、よろしくお願い申し上げます。





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