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第一話 濡羽を纏う吟遊詩人
![](https://assets.st-note.com/img/1702399247579-gaJ7QLi50n.png?width=800)
ここに一人の吟遊詩人がいる
かつて日本という国の民族楽器
三味線を手に世界の現状を
知るべくして桃源京を旅立つ
![](https://assets.st-note.com/img/1702630930355-hDEeK4d2Nz.png)
世界は、人間と半機人とで
二分割されて共存している
特区外の半機人たちの暮らす
各地を放浪する旅の最中
そこで目の当たりにしたのは
互いの正義という旗を掲げ
思想を巡り、領地を巡り
いまだに人々の争いは絶えず
![](https://assets.st-note.com/img/1702626247530-qZHmdyfXeF.png?width=800)
生き物や自然を犠牲にして
必要以上のもので溢れかえる
人間だけが欲を満たす世界
半機人たちの暮らす世界は
あらゆるものが人工物で代替され
人々も機械を身体の一部に取り込み
生きながらえていた
![](https://assets.st-note.com/img/1703419292583-g286tNijVa.png)
そんな人間たちのエゴは
やがて纏う衣へと映し出される
![](https://assets.st-note.com/img/1702626130243-KKXRHXFf9c.png?width=800)
本来は、透き通るような羽衣は
まるで鴉の濡羽の如く黒ずんでしまう
それに大層と思い悩み
心までをも閉ざしてしまいます
ある月夜の晩、
もう歌うことも弾くことも
しなくなってしまった吟遊詩人は
![](https://assets.st-note.com/img/1702626571249-pX8yccSxHr.png?width=800)
碧い湖のほとりで
ひとり坐り佇んでいた
するとそこへ
毛皮の頭巾を被った少女が現れて
こちらの様子をうかがっている
![](https://assets.st-note.com/img/1702400028158-yTosIzAI1B.png)
少女は無言でそっと近づくと
ひとつの絵を差し出し
すぐにその場を立ち去ります
吟遊詩人は、その絵を眺めて
しばらくするとポツポツと涙を落としました
![](https://assets.st-note.com/img/1702627801215-MoWLnJLCjk.png?width=800)
そこに描かれていたものは
吟遊詩人が放浪で見てきた
目を塞ぎたくなるような
悲痛な心情の描写の数々
今まで目を背けてきたものが
絵としてそこへ写し出されると
ここで我に立ち帰ります
この絵を差し出した少女に
いくつかの問いを投げかけようにも
そこにもう姿はありません
![](https://assets.st-note.com/img/1702627773734-ri4aM5bD3Z.png?width=800)
吟遊詩人は、彼女の影を追って
再び立ち上がるのです
つづく
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