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拍手

 私が仲良くしている小劇場の役者の場合、舞台に立ってギャラが発生するということが、ほとんどありません。報酬があるとすれば、終演後、観客からもらう拍手のみとなります。その事情を知っていますので、観客として劇場を訪れた場合、できるだけたくさん大きな拍手をしたいと思っておりました。しかし、私は拍手が下手だったのです。大きな音はでないし、すぐに手が痛くなってしまいます。拍手が上手くなる方法はないものかと思っておりました。
 話変わって、私が育った家には、仏壇や神棚がありませんでした。父が亡くなった折、やはりあったほうがいいだろうと私の判断で、仏壇と神棚を備えました。備えるだけではいけないので、毎朝、形通りのお祈りを捧げることにしました。
 神棚の祈り方は、二礼二拍一礼。2回お辞儀して、2回拍手して、もう一度お辞儀をします。信心深い方はこれを朝夕やります。私はそんなに信心深くないので、朝だけやります。
 8年ほど過ぎた頃、ある変化に気が付きました。拍手が上手くなっているのです。ある芝居を観て、拍手していると、いくら打っても痛くないし、いくらでも大きな拍手ができるのです。本気で拍手すると、周囲の客が驚いてこちらを見るくらいです。
 毎朝の二拍が拍手の練習になって、知らないうちに、拍手が上達していたのです。
 この練習法はあらゆる分野に応用可能なのではないでしょうか?
 私達は何かを習得しようと思ったとき、ひたすらぶっ続けで練習してしまいがちです。3日ぐらい続けると、うんざりしてやめてしまいます。三日坊主の正体です。
 物事を上達したいと思ったら、1日2回、祈るように心を込めて練習する。熱心な方は朝夕2回ずつ。これを何年も繰り返せば、何事も上達するのではないでしょうか?
 そもそも、二礼二拍一礼はこのことを秘めて伝える古代人の知恵なのかもしれません。
 我々が古代人から学ぶことはきっとたくさんあります。

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イラスト by TzLab

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