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「惑星ザムザ」

こんにちは。コダカです。
連休はあまり関係なく働いています。
行きも帰りも電車が空いていてイイね。

労働の休憩時間、いつものように無意識でツイッターを開くと、ゴールデンのウイークを観光地で過ごす御満悦なTLの隙間に、ムムム!尖った展覧会のツイートを発見。

本展のタイトルは、110年前にフランツ・カフカによって執筆された小説『変身』の主人公グレゴール・ザムザの名前から名付けられた。

引用:美術手帖webサイトより

元製本所の廃ビルとカフカの組み合わせかー。
聞いただけでゾクゾクするじゃないですか?
もうこれは行くしかない!とチケットをサイトで購入し労働終わりで、
イザ!牛込神楽坂!大江戸線にライドオン。



駅から徒歩1分ぐらい。特徴的なカーブの横にそびえる黄色い建物。
会場の小高製本工業株式会社 跡地を発見することができました。


夜20時まで開催しているのは本当に嬉しいです。
しかも休日なので、お客さんは昼に集中するのでゆっくり見られるし良いことずくめ。

到着すると列ができています。
すごい人気なんだな。予約してきてよかった。

現代アートの展覧会なので、センスが良さそうな若者だらけ。
場違いな感じもしたけれど、製本工場にはどちらかと言えばオッサンのが近いよ!関係ないさ!と大西ライオンさんばりの心の叫びをかましつつ澄ました顔で入場列最後尾のカップルの後ろに並びます。

受付をすませると、鑑賞順路の説明。
このビルは道に面した受付のフロアが3F、6Fまで行くと別の階段があり、そこを降りると1F出口にたどり着きますのでその順序で進んでくださいと言われました。

いいぞーいいぞー。
事前情報なしで来てしまったのでわかりませんでしたが、こちらの入り口は高台の上にあるらしいのです。高低差建築のトリッキーな作りにキュンときてマスクの下でニヤリとします。

さて、建物を回る前に今回の展覧会を少し予習しておきます。

『惑星ザムザ』は、「テキスト以前の物質」を出発点として、総勢17名の作品が展示されます。
(中略)
極限までテキストにあふれ、善悪や虚実が混ざり合った今日の社会のなかで、インクや唾液、電気信号、埃、塩基配列などの物質を通じて、未来を遺し、書き、記し、物語り、撫で、描く方法が模索されます。
新陳代謝する東京のなかで、迷路のように入り組んだ工場跡地を巡り、芸術作品と出会う体験は、展覧会の魅惑と可能性を再確認する機会となるでしょう。

(開催概要より一部引用)

建物に入った瞬間、役割を終えた工場の床、壁、配線、埃、かすかに残ったインクか本の臭いが僕を迎え入れます。

「これら物質が、安定したテキストやコンテキストに到達することなく、身勝手な生命活動を開始した状況を観測することこそ『惑星ザムザ』の目的」 「この展覧会の観測は、私たちが、なにものともつなげられていない孤独な存在だった記憶を回復させるだろう。 」(ステートメントより一部抜粋)

(引用:美術手帖より)

テキスト以前かー。
伝達が直接的なものになるってことなんだろうか?
うーむ、見てみないとわからないな。
そんなことを思いながら先を急ぎます。

進んでいくと見覚えがある茗荷谷、市ヶ谷、水道橋…あのあたりに点在している製本や印刷工場の典型的なビルの感じです。



これだけ年期の入った建物は東日本大震災や五輪の再開発で建て替えたり郊外に移転したりで数は減りましたが、まだまだあるだろうなー。灰色の壁や廊下の作りに昔アルバイトでお世話になった出版社さんや印刷会社さんを思い出します。

しかし、まだ人の活動の残り香が残っている工場を展示会場としてブッキングするのはなかなか大変だろうな。すごいなーと感心してしまいます。

印象的だったのが高層のフロアに差し掛かった時、ちょうど夕暮れどきで光が屋内に入ってきたんです。

展示風景画像、田中勘太郎《上書きの下のミイラ》

プレスされる花、包み込む手…。

そのとき見ていたアートと使用感のあるロッカーやナショナルの配電盤が混じり合って同じ景色の中に。

展示風景画像、米澤柊《絶滅のアニマ》



どこかで見覚えがある風景。
ここに人がいて、働いて、笑って、食って、怒られたり、喜んだり、しょんぼりしたり、冗談言ったり、恋話したり、入社したり、残業したり、退社したり、今の僕と同じように夕日を見て作業の手を止めたり、流れてきた夕焼けチャイムに帰るぞって思ったりしていたんだろうな。

夕焼けソラの光に包まれ、機械の音がきこえる中、作業に身を包んだ工員がまさにそこにいるみたいです。

ん?これは「思考が現実化している」?

これって…惑星は違えど惑星ソラリスじゃん。(ちょっと強引な気もするけど)

そしてハワイにもハワイにも行った事がないし娘もましてや女性でもないけれど、どこかで見覚えがある幼少期の記憶の映像作品。

展示風景画像 青柳菜摘《孵化日記 旅行》

説明を受けないと出口までたどり着けないような高低差建築の迷路の中をぐるぐる周り、現実と虚実が判断できない不思議な感覚に陥りました。


これが惑星ザムザか。

展示風景画像、宍倉志信《P.S. Installer》
そんなことを考えていたら「惑星ソラリス」が!!展示風景画像、宍倉志信《P.S. Installer》

全部の作品を書ききれないけれども素晴らしかった。
17名の作家さんのどの作品も無形有形に広がっていて、明るく暗くそれぞれ光を放っていて、あっという間に2時間滞在。


どの作品も製本工場跡にハマってんだよなー不思議だなー。
つまり、以前テキストを作っていた場所でテキスト以前の物質を見つけることができたってことなのかな。

そして、惑星ザムザ探索から帰還した僕は変身してしまったのだろうか…。

うーむ。
わからないなりにガッツリ鑑賞しました。

場とアートの融合みたいなことをよく聞きますが、場所とテーマがガッチリ噛み合っていました。さらには二度とこの場所ではできないだろうし、これは究極なんじゃないかな。

行って良かったです。
チャンスがあればぜひ行ってみてください!


表に出るとすっかり夜。頭上には綺麗な三日月が出ていました。

会期は5月8日日曜日まで。(追記:延長日程もあるみたいです。)

日程:2022年5月1日〜5月8日
時間:12:00-20:00(最終入場19:00)
入場料:1000円(※中学生以下無料・事前決済頂くと混雑時の入場がスムーズです)
住所:162-0834 東京都新宿区北町41
アクセス:都営大江戸線「牛込神楽坂」駅 A2出口から徒歩1分、東京メトロ・JR「飯田橋」駅から徒歩10分
主催:株式会社ユニーク工務店リレーションシップ
企画運営:田中勘太郎、布施琳太郎、株式会社ユニーク工務店リレーションシップ
キュレーション:布施琳太郎
デザイン:八木幣二郎
協力:株式会社欧友社
(peatixより引用)

最後までお読みいただきありがとうございました。


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