これって引き寄せ? キャパの写真を毎日見てたら、クーデターのド真ん中で写真撮ってた②
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これって引き寄せ? キャパの写真を毎日見てたら、クーデターのド真ん中で写真撮ってた②

1991年8月に、ソ連でクーデターが起きた話を前の記事で書きました。

その少し前、同じ年の6月に渋谷のBUNKAMURAザ・ミュージアムで、マグナムの写真展が開催されました。

正式名称は『我らの時代/マグナム写真展:IN OUR TIME/キャパ、シーモア、ブレッソン、ロジャーらが創設した報道写真家集団マグナムの40年』。

この展覧会は、国際的な報道写真家集団・マグナムのカメラマンたちの傑作写真を展示したもの。このマグナムの中で中心的存在だったのが、スペイン内戦や日中戦争、第二次世界大戦、第一次中東戦争など多くの戦場を駆け巡って驚くべき写真を撮り続け、“世界一の戦場カメラマン”と呼ばれたロバート・キャパです。

このマグナム展のポスターにもキャパの撮った写真が使われていました。

ただし、戦場の兵士を撮った写真ではなく、大勢の人々が歓喜に満ちた表情を浮かべている写真で、タイトルは「パリ解放」。


第二次大戦中、ヒトラー率いるナチ・ドイツがフランスを占領し、キャパ自身がかつて住んでいたパリもその支配下に……

しかしその後、連合軍がドイツ軍を追い出してパリを解放すると、それまで息をひそめるように暮らしていたパリっ子たちは表通りに繰り出し、喜びを爆発させたのです。その瞬間を、連合軍とともにパリに入ったキャパは捉えたのでした。

通りは人々で埋め尽くされ、両側に並ぶ建物のバルコニーや屋根にもこぼれおちそうなほどに人があふれ、しかも誰もがこの上なく嬉しそうな笑顔を浮かべて手を振っている。最高にポジティブなエネルギーに満ちた写真でした。

僕はこの展覧会を2度見に行きましたが、2度目は写真展最終日で、閉館ギリギリまで粘って見てから、外に出ると、美術館の外にはこのキャパの写真を使った大きなポスターが何枚も貼ってあり、係の人がそれを外していたのです。
「今日で写真展は終わりだから、このポスターも捨てられるのか……」
 そう思うと、ものすごくもったいない気がしてきました。

 そこで係の人に話をしてみると、その人は美術館の事務所に連れて行ってくれて、責任者に会わせてくれました。
「自分はフリーライターで写真も撮ったりしている者ですが、今回の写真展はすごく気に入って、2度来ました」と僕は説明し、

「特にこのポスターの写真は、本当に気に入ったので、もし処分されるのであれば、1枚もらえませんか」というようなことを伝えました。


 すると、驚いたことに、その責任者の方はこころよく応じてくれ、「どうぞもって帰ってください」と、ポスターを一枚くれたのです! ちょっと躊躇しましたが、勇気を出して美術館の人に話しかけてみてよかったです。

僕は大喜びで頭を下げ、ポスターを手に意気揚々と帰宅しました。そして、当時住んでいた8畳+狭いダイニングキッチンという木造アパートで、仕事机代わりにしていた4畳くらいのキッチンのテーブルの前に張り、それから毎日、原稿書きに疲れると、そのポスターを眺めて過ごしていたのです。

「いつか俺も、こんなふうに大勢の人が喜びに満ち溢れた笑顔を見せている写真を撮りたいな」と思いながら。
 
すると、驚いたことに、その日は、すぐにやってきたのです。

ポスターをもらったのは6月30日ですが、それから2ヵ月もたたない8月21日、モスクワで僕はそんな写真を撮っていたのです。


モスクワで、失敗した保守派のクーデターの後、民主派のリーダーだったエリツィンが、何十万人もの市民を前に勝利の演説をした時――。
僕はエリツィンから10メートルも離れていないところで、広場を埋め尽くした人々が、満面の笑顔で、大歓声を上げる姿を撮っていました。

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Shu Inagaki

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稲垣 收@ShuInagaki 出版社に3年勤務後、89年よりフリーライター。露クーデター、ドイツ統一、ソ連崩壊、ユーゴ内戦、パレスチナ等取材。格闘技取材も30年。元WOWOW UFC解説者(10年)。ヒクソン・グレイシーからジム・ロジャーズまで世界中のオモロイ人にインタビュー。