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『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』を読んだ

何故読んだか

『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』という本を読んだ。
本書を読んだのは、サービスに熱狂的なファンを生み出すブランド戦略に興味があったからだ。

グレイトフル・デッドは、1960年代にアメリカ西海岸のサンフランシスコで生まれたバンドで、アメリカでとても人気のあったバンドだ。
グレイトフル・デッドについて、帯には次のように紹介されている。

ビートルズよりストーンズより儲けてしまったバンドの秘密
それはフリーでシェアでラヴ&ピースな21世紀のビジネスモデル

ヒット曲もなければ、ジョン・レノンやポール・マッカートニーのようなスターもいない。
にもかかわらず、このバンドは当時年間5000万ドル以上を稼いでいた。

信者とも言えるような熱狂的なファンを生み出し、巨大な市場を作り上げたグレイトフル・デッドの事例からは、現代のビジネスにも生かせるヒントが得られるのではないかと思い本書を手にとった。

サマリー

本書では、グレイトフル・デッドから学べるレッスンが19の項目に分かれ書かれている。
中でも重要な要素をまとめると、以下の三点となる。

1. 業界の思い込みを見直し、ユニークなビジネスモデルを作る
1960年代当時、ロックバンドにとってツアーとは「新しいアルバムの宣伝をする場所」であり、出来るだけ多くのレコードを売るための手段だった。
しかしグレイトフル・デッドは、レコードを売ることではなく、「ライブから収入を得る」ことに全力を注いだ。
そして他のバンドとは異なる方法でツアーを運営することで、独自の体験を生み出した。

例えば、大半のバンドが一つのツアーで同じ曲を同じ順番で演奏する中、彼らは演奏する曲のセットをライブ毎に変え、同じ曲でも演奏の仕方を変えた。
何を演奏するのか予想できない意外性が、他のバンドとは全く異なる音楽体験を作り上げた。

彼らはライブ体験を最高のものにするために、業界で最も優れている照明と音響システムの導入に大金を投じることを惜しまなかった。
また、ツアーの目的がアルバム販促ではないので、ほぼ恒久的にツアーを行っていた。
これら全てがグレイトフル・デッドのライブ体験をユニークで特別なものにし、毎晩異なる素晴らしい体験を得ようと、繰り返しライブに来る信者のようなファンが生まれた。

2. 熱心なファンのコミュニティを形成する
グレイトフル・デッドは、自分たちが変わり者でいることで、ファンにも風変わりでいることを奨励した。
ボーカルのヒッピーのような身なり、ヒットチャートに載らない曲の数々、即興スタイルで作り上げるユニークなサウンド、何千人もが吸うマリファナの煙、30分の休憩や20分近い曲、などなど。。
グレイトフル・デッドのファンは変わり者が多かったが、それを受け入れれる温かい雰囲気がライブにはあり、彼らはそこを自己表現の場として利用した。

また、グレイトフル・デッドは年に数度、ファンに向け会報を送った。
会報は、ライブでファン同士が集まったり、近日開催されるイベントについて知ったりすることを助け、ファンはコミュニティの一員であることを実感した。
グレイトフル・デッドのファンは同じ音楽を愛し、多数派とは異なる変わり者同士であり、固い絆で結ばれた仲間だった。
そしてライブは、彼らにとって自分らしさを表現することの出来る居場所だった。
町から町へ、数ヶ月に及ぶツアーに付き添い旅をした数百人のファンもいた。

3. 消費者をエヴァンジェリストにする
ほとんどのバンドは、観客がライブで録音をするとレコードが売れなくなると考え、そうした行為を禁止していた。
しかしグレイトフル・デッドは、ファンがライブ中に自由に録音し、そのテープをファン同士で交換し合うことを許可した。
それだけでなく、良い音質で録音できる場所に機械をセットできるよう「テーパーセクション」を設けさえもした。
こうして自由に録音テープを交換させることは実際には不利になるどころか、ファンの手によってバンドの音楽が広まっていくことを促進した。
結果として、ファンの作った録音テープが広告となり、ライブのチケットは飛ぶように売れた。

感じたこと

グレイトフル・デッドから学べる一つの重要なことは、業界の常識を疑い新たなビジネスモデルを生み出すことで、他のどことも違う尖った価値を生み出せるということだ。
ユニークなビジネスモデルを生み出すことは、一見難しそうに感じる。
しかし、競合との差別化要因となる自社の提供価値の本質(グレイトフル・デッドであればライブ体験とファンのコミュニティ)を明確にしてその価値を最大化することに全力を注ぎ、その対価を正しく受け取れるような収益構造を設計すれば、自ずとユニークなビジネスモデルを構築出来るのではないだろうか。

また、価値観を共有する熱烈なファンの存在も見逃せない。
モノが溢れる現代社会において、人が消費を通して求めることは、機能的便益から情緒的便益、そして自己実現的便益へと変遷してきたと言われている。
例えば、昔は走るという機能を果たしさえすればよかった車は、次第に美しいデザインや快適な使用感といった情緒的要素が必要とされるようになり、最近では「環境負荷が軽いか」など、ブランドの示す価値観に共感出来るかも重要視されるようになってきている。

グレイトフル・デッドも、この自己実現的便益を正にファンに提供していたのだと思う。
「変わり者のままでいい」「自分らしくあろう」という価値観を、グレイトフル・デッドがバンドとして我が道を行くことによって身を持って発信し、その価値観に共鳴した変わり者たちが集まってコミュニティを形成していく。
彼らは自分たちのことを「デッドヘッズ」と呼び、その一員であることの誇りと、強い絆を持った。

何かサービスを作り運営していく際、「デッドヘッズ」のような熱烈なファンコミュニティを築くことは、特にこれからの時代にとても重要なことになるのだと思う。
自分たちがどんな価値観を代表したブランドなのか、企業としての一つ一つの行動を通してお客さんに伝えていくこと。
そして、価値観に共鳴してくれたファンを大切にし、小さくても濃密なコミュニティを築くこと。
それが出来れば、グレイトフル・デッドのファンが録音したテープを交換しながらその輪を広げていったように、サービスのお客さんが自らサービスを広めるエヴァンジェリストとなり、サービスを拡大する上で欠かせない仲間となってくれるのだ。


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大学4年生、現在2回目の休学中です。TABICAという体験シェアサービスの運営を行っています。