逃げ水 #4| コピック
マグカップから立ち昇る、コーヒーの香りを含んだ蒸気を鼻から吸い込みながら、急勾配の階段を登ってデスクに戻る。
僕のデスクは、ビリジアン色の上に白い1cm間隔のグリッドが描かれたのカッターマットが机いっぱいに敷かれた、窓から一番遠く光の入らない暗い片隅にある。
こんなに大きなカッターマットの存在を知る人は、ファッション誌の街角スナップに掲載されることを夢見て、あらかじめ調べた取材現場のストリートを何往復することも厭わない人の数くらいではないかと思う。
僕はその両方を知って