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【感想】ガールズバンドクライ(第十一話)
以下、第十一話全編の内容に触れていますのでご注意ください。
<前回の感想>
●冒頭
音楽フェスの会場らしき場所、ステージに立つ仁菜たちトゲトゲの面々が歓声を浴びている。
「いい風・・・」
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空中に手を伸ばす仁菜。
髪ちょっと染めてる・・・?半纏・・・?背中の文字は「傍若無人」に見えるけど・・・何??未来の光景???ちょ、ちょっと待って・・・情報量、情報量が多い!
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「桃香さん、私・・・」
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色々気になるところで、OPへ。
●Aパート
サブタイトル
第十一話のサブタイトルは「世界のまん中」だが、実はTHE BLUE HEARTSとGOING UNDER GROUNDのどちらにも同名の曲がある。どちらの曲からとったタイトルなのかは、わからない。両方という可能性もあるかもしれない。
世界のまん中/THE BLUE HEARTS
朝の光が 待てなくて
眠れない夜もあった
朝の光が 待てなくて
間違った事もやった
僕が生まれた所が世界の片隅なのか
誰の上にだって お日様は昇るんだ
世界のまん中/GOING UNDER GROUND
君が世界のまん中だった その隅っこで僕は生きていた
驚くほどに小さな世界 背伸びしたらはみ出した
狭い世界で気付けば迷子 さびしいときは泣いて欲しかった
どこにいても探してあげる 君の声は僕の光
追い風が吹いてる
スタジオ練習中の仁菜たち。いつもよりかなり狭い部屋だが、レンタル料金の問題らしい。
第三話で、仁菜とすばるのスタジオ代を桃香が負担しているという描写があったが、まさか一人増えた未成年(智)の分って・・・
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「大丈夫なんですか?もうすぐフェスなんですよ? 」
「大丈夫なんですか?もうすぐフェスなんですよ?・・・べー(舌出し)」
「・・・(嬉しそうな笑み)」
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・・・?????
ハァ???
えっと・・・何ですか、これ???
逆に聞きたいんですけど、ここ、何が何なのかわかる人います???
何回考えを巡らせてもここのやりとりに「イチャついてる」以外の内容を読み取れないのですが?????
筆者と同じことを思ったのかどうかはわからないが、「時間なくなるわよ」とジト目の智。練習中の曲についての話題になる。各々が意見を出し合い、桃香の判断をあおぐ。今のトゲトゲは、自分たちの音楽について忌憚なく話し合える間柄になったようだ。
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「最後のサビから」
「・・・はい!」
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練習を終えると、すばる、智、ルパがトゲトゲも出演する今度のフェスのポスターを見ていた。トゲトゲの出番は初日のトップバッターらしい。すばるは同日出演する別のバンドを色々見ようという算段をしている。
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フェスの客数を気にする仁菜。桃香の説明では時間帯やバンドの人気によってまちまちということで、「その中でどれだけ爪痕を残せるか・・・」と自分の手をじっと見つめる仁菜。
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「実はさ・・・」と桃香が何か切り出そうとしたところで、セルビアンナイトのオーナー氏から声がかかる。
「聞いたよ?今度のフェス、出番変わったんだってね~?応援してるよ」
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桃香が言おうとしたのもちょうどその話だったようで、他バンドの出演がダメになったために、トゲトゲの出番を同ステージの二日目に変更させてほしいというオファーが来ているとのこと。
「二日目はオールナイトだし、今の出番の時間に比べたら大出世でしょ」
「最高じゃないですか」
どうやら、このオファーはトゲトゲにとってかなりの好条件らしい。
不安や緊張もあるのだろうか、汗を滲ませつつも笑みを浮かべる仁菜。
「もしかして、追い風・・・吹いてますか?」
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そんなメンバーの様子を見て、笑みを浮かべる桃香。話は決まったようだ。
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場面変わって、桃香の提案でフェスの会場を下見に来た仁菜たち。重機や設営スタッフが稼働して開催の準備が進められている。メインステージの大きさに驚く仁菜だが、仁菜たちのステージはもう少し小さい別のステージであることを桃香に教えられる。
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「もちろん、ダイヤモンドダストはあっち(メインステージ)」
「・・・」
少し笑った仁菜の反応に少し驚きつつも、表情を引き締める桃香。
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「私、嬉しいです・・・なんか、カッコいいなって
大きなステージで歌うダイダスに、小さなステージで歌う私たちが挑んでくんでしょ」
「ジャイアントキリング」
「窮鼠猫を噛む、よ」
「待て待て、向こうもファンも、そんなこと思ってないし」
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「思ってるよ。私と桃香さんは」
「思ってるよ。私と桃香さんは」?????
オイオイオイオイ何なのその「お前らは違うの?」みたいなさあ、、、、、
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「みんな、順番のこと本当にいいんだな」
「いいですよね」
出番変更の最終確認に、無言でうなずくすばる、智、ルパ。
「気持ちいいいよね・・・こんな空の下で歌えたら」
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「桃香さ~ん!今度のフェス、ギター貸してくださ~い!」
バイトに行くと言って走り去る仁菜。どうやらルパ智の吉野家とは別で新しくバイトを始めたらしい。
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「決めたんですよ。一人でなんとかするって」
「たしかに、最近変わったよなあ・・・あいつ」
そんな仁菜の背中を何か言いたげな表情で見つめているすばる。
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何のために
おそらく同じ日の夜、すばるの自宅。
「ったく・・・一人だけスッキリした顔しやがって」
すばるが見つめるスマホには祖母、安和天童からのメールが表示されており、「今度オーディションがありまして、良ければ参加されませんか?」という文面が確認できる。
また、見切れているが「夏のお芝居もとても評判がよろしくて」と読み取れる部分もある。これはおそらく、第四話ですばるが天童と共演したドラマのことではないかと思う。
もしこの「評判がよろしくて」というのが客観的事実であれば、すばるには役者として進んでいく道もじゅうぶんに開かれている(単に天童の孫だから、というだけでなくある程度の実力が備わっている)のだろうということが言えると思う。
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立ち上がり、見下ろす視線の先には、第五話のライブで衣装として着た「嘘つき」Tシャツがある。
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「私は嘘つきじゃない・・・」
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同じ夜だろうか、場面変わってルパ智の部屋。智はすばるのことを気にしている様子。
「すばる、まだバンドやってること隠してるんだよね」
「智ちゃんのそういうところ、好きですよ」
「わ、私は別に・・・」
やりとりからすると、すばるの事情はルパ智にも話してあるのだろう。(仁菜や桃香が勝手に喋ったという可能性も否定はできないが、まあそういうことでもないだろう)
ルパのセリフは智の言いたいことというか心情(すばるを心配している)をかなり先取りしたもののようにも思えるが、以心伝心の二人ならではの会話に思える。
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「智ちゃんもいつか、許せるときが来るといいですね」
「そんなわけないでしょ・・・」
「未来のことはわかりませんよ」
「無理よ・・・」
ルパが言っているのは、智の両親あるいは母親(第七話で言及されていた)のことだろう。智は母親の不倫現場を目撃したことがきっかけで、高校を中退して親元を離れており、これまでの描写から親とは絶縁状態にあることが伺える。
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「でも、届く場所にはいます
一切会わなくて、話さなくても、今、生きてる・・・
私の大切だった人たちは、もう、灰になってどこにもいません」
「灰になって・・・」というのは、事故で亡くなったというルパの家族のことだろう。重い言葉だと思う。ルパが言っているのは、「死んだ人間とはケンカすることすらできない」ということにも等しいだろう。
「私がいるでしょ・・・」
「ありがとう」
遠い空を見上げ、涙を滲ませるルパに智がそっと身を寄せ、二人は抱き合う。
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この二人の関係性については、第九話でも描かれていたが保証人の問題などで智がルパに頼っているという側面の方が筆者にとっての印象は強かった。だが、二人はこうして寄り添い支え合って生きてきた(生きている)のだなということが改めて感じられた。胸にじんと来るシーンだ。
ここで、トゲトゲの面々によるモノローグが入る。あたかもインタビューを受けて質問に答えるかのような語り口に思える。
「はあ?なんで歌うのかって?」
「そうですねえ・・・誰かとつながっていられるからでしょうか」
「う~ん・・・自分が正直でいられる場所だから、かな」
「そうだな・・・何もかも忘れて、自由になれるから」
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「私は・・・間違ってないって思いたいから」
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ここの仁菜についてだが、先ほどBAYCAMPの会場からバイトに行くと言って去っていった仁菜が次に映る場面なのでバイト終わりで帰宅したところだろう・・・というのが自然な連想かと思うのだが、そうなるとなんか、このリュックサックを落とすように置く仕草とか、電気もつけずにうつむく仕草とかから、「新しいバイト、きついんか?」みたいなことを考えてしまう。だがそれはこのシーンで喚起したい視聴者側の感情ないし印象としてはおそらく制作サイドも意図していないものだと思うので、そこはもうちょっとなんとかならんかったんか、と思わなくもない。(筆者の感性がおかしいだけかもしれないが・・・)
ここでAパート終了。
●Bパート
約束
いよいよフェスの当日。空は快晴、多くのお客さんで賑わっている。
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車で機材などを搬入する仁菜たち。会場スタッフの反応から、トゲナシトゲアリの知名度がまだそこまでではないんだろうなという感じが伝わってくる。
「ちょっと他のバンド見に行けるかも♪」
夕方の出番までに他のバンドを見に行こうとするすばる。
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仁菜もついて行こうとするが、「ニーナはだめ~!」とすばるは一人走っていく。
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トゲトゲの楽屋(テント)スペースをミネさんが訪れる。驚かせたかったのか、桃香にも連絡無しで来てくれたようだ。
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仁菜を見て、「いいね」と言うミネさん。
「だんだん、いい顔になってきた」
「本当ですか?」
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「歌うたいの顔してる」
「はい・・・!」
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そこへ現れたのが、なんと第一話で登場し仁菜と桃香を追いかけ回したストリートミュージシャンの片割れキョーコだった。なんと彼女はミネさんの知り合いらしい。
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「うわあ!攻めてきた!!」
「ふふふん、世の中狭いねえ」
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なんと彼女、仁菜たちのファンらしい。驚く仁菜。
「私、あんたの声好きなんだ!また私たちと一緒にやってよ!いいっしょ?」
「わ、私でよければ・・・」
「また」というのは、第一話のラストでやった「空の箱」のライブを指しているのだろう。
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記念に変顔で写真を撮ろうというキョーコ。桃香たちも一緒にと言われるがルパ智はうまく逃げたらしい。桃香は、第一話の負い目(中指立てたり、ライブに乱入したり)があるせいか、逃げ切れず一緒に変顔をさせられるハメに。
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ところで、初見のときキョーコ登場に気を取られて、仁菜が桃香にナチュラルに抱きついているところをスルーしてしまっていた。
なので改めて・・・
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オイオイオイオイオイオイオイオイ
ナアナアナアナアナアナアナアナア
・・・ふう(満足)
トゲトゲのSNSで変顔写真の反応や応援のコメントを見ていると、ルパがケータリングで飲み放題のビール(そんなのあるのか・・・)を片手にやって来る。さすがにストップをかける仁菜。
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「少しだけ・・・」
「ルパの少しは少しじゃないし」
そこへ通りがかった人影に仁菜が声をかけるが・・・
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「三浦さん、ですよね・・・」
「ひ、ひひ、人違いですぅ~!」
Bパートの冒頭でも映り込んでいたのはやはり前回登場の三浦氏だったようだ。なぜ他人のフリを・・・
どさくさでビールを飲もうとするルパを智が制止したりしていると、すばるの話題に。仁菜が「一緒に行きたかったなあ」と不満をこぼすが、ルパいわくもう楽屋に戻ってきているとのこと。
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ビールに三度目のアタックをかけるが、智に止められて涙目になるルパ。
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夕日が差し込む楽屋には、ルパの言った通りすばるが戻ってきていた。
「どうだった?ライブ、見れた?」
「・・・うん」
瞬きひとつ分の、若干の「間」が気になるすばるの返答だが、仁菜は気にならなかったのか、「いいなあ」と少しスネた様子。
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「ふふふ、羨ましかろう・・・一人スッキリしやがって」
「どうかしたの?」
「昔さ、初めてフェスに行ったとき、出てたバンドのドラムの人が言ってたんだよね。メンバー全員の背中見て頑張ってますって」
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「それ聞いて、ああ、私だって思ったんだよ。私って、そういうポジションだって」
「すばるちゃん・・・」
「昨日、おばあちゃんにメールした」
「何を?」
ここで桃香が楽屋に戻ってくるが、二人の会話に気づくと、中には入らずそこで立ち止まる。
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「えっ?役者じゃなくて、他にやりたいものがあるって伝えたの!」
「本当?」
「だからさ、ずっと続けようよ、このバンド・・・もし今日がダメでも」
ここですばるがちょっと驚きつつ怒ったような様子を見せたのは、「おばあちゃんにメールした」という言葉から一発で何の話かが仁菜に伝わっていないからだろう。
おそらく、すばるからしたらバンド活動をやっていくことに対して「枷」となる「家族との問題」を抱えているという点で仁菜に対する仲間意識があったのだと思う。
つまりすばるが今回二度ほど口にしている「一人だけスッキリしやがって」というのは、そこ(家族との問題)について「抜け駆け」というか、一人だけ先に問題を片付けてしまった仁菜に対する(たぶん)「ずるい」みたいな感情があり、なおかつ仁菜がすばるに対して「抜け駆け」の負い目も引け目も感じていないどころか、「すばるは家族(祖母)との問題をまだ解決していない」ということを気にもかけていない様子だから、苛立ちを覚えていたのではないだろうか。(智がすばるの問題を気にかけているという描写が先に入っていたことで、「そうではない仁菜」というコントラストがより際立っているように思う)そもそも、この問題について第四話で「このままはよくない」とすばるを焚き付けたのは仁菜でもあるわけだし、それも踏まえるとなおさら、という気がする。
「えっ?役者じゃなくて、他にやりたいものがあるって伝えたの!」というセリフの時のすばるの態度は、つまり「なんでわかんないの!?」という気持ちから出たものだろう。
ただ、以上がすばるの心理だとしても「仁菜が悪い」とまで言えるかどうかは微妙なところで、筆者としては「まあすばるの気持ちもわかるな・・・」くらいの感覚だ。
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「いいの?」
「ニーナはさ、視野は狭いし、正論ばかりで融通はきかないし、そのくせ人見知りで愛想もよくないし、そりゃいじめにも遭うわ」
散々な言われようでさすがに少し眉をひそめる仁菜だが、「そりゃいじめにも遭うわ」という弩級の悪口で逆に笑みを浮かべられるのがスゴい。二人のやりとりと表情の変化からは、二人の間の強い絆が感じられるように思う。
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「でも、嘘はつかないんだよね。それにすべてに全力で、それはなんか安心できるし、つきあってみるか、っていう気持ちになる」
「ありがと」
「嘘だけど!」
「嘘つき!」
そう言って笑いあい、二人は立てた小指と小指を結ぶ。
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第二話で初めて「小指を立てる」サインが登場したとき、筆者は「約束(指切り)」を思い起こさせる仕草でもあるという感想を書いた(思えば、あのシーンも夕暮れ時だった)のだが、こうして「中指を立てる」ことの代替行為として生み出された「小指を立てる」サイン・・・小指であっても「反抗」や「抵抗」の象徴であることは変わらない・・・が、共に同じ道を歩んでいこうという「約束」の「指切り」になったこのシーンには涙を禁じ得なかった。大げさかもしれないが、とても神聖な瞬間を描いたシーンだと思う。
ちなみに、前述のすばるの心理が筆者の考察した通りだったとするならば、「視野は狭いし・・・」とかちょっと皮肉は言ったが、それくらいで済ませてくれて仁菜に対する苛立ちだったりを引きずったりしないすばるは本当にさっぱりした性格をしていると思う。
そこへ桃香が顔を出し、「行くぞ」と二人に声をかける。
「どこに?」
「ついて来ればわかる」
![](https://assets.st-note.com/img/1718503220762-9duNpibaH0.jpg?width=800)
さらに日は落ちて、メインステージの後方に集まった仁菜たち。
「肩車します?」と軽口を叩く仁菜に小指を立てる智。
「智ちゃんもすっかり使うようになっちゃったね、それ」
「・・・!」
![](https://assets.st-note.com/img/1718503337136-UW2A7kJ2XN.jpg?width=800)
そのとき、「ETERNAL FLAME ~空の箱~」をBGMにダイヤモンドダストの4人がステージに登場する。
![](https://assets.st-note.com/img/1718503340719-WKrgAOk5GE.jpg?width=800)
その姿を見て「トゲ」を放出する仁菜。
![](https://assets.st-note.com/img/1718503343622-mXm6fllgfH.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1718503353105-ijJ0fJDFSv.png?width=800)
回想シーン。校舎の屋上に寝そべる仁菜とヒナの二人。
「いつまで悲劇のヒロインやってるつもり?
・・・仁菜が間違ったんだよ。
これ以上やっても損するだけ・・・ほんと、バカじゃねーの?」
![](https://assets.st-note.com/img/1718503378494-pUjfZghexP.jpg?width=800)
「せからしか・・・」
![](https://assets.st-note.com/img/1718503388228-OydonVNgEl.png?width=800)
おそらく、これが友人同士であった二人が袂を分かった瞬間なのだろう。
「仁菜が間違ったんだよ」というセリフからは、仁菜が「正しさ」「間違ってない」ことの証明にこだわる理由の一端が感じられる。
場面は現在に戻り、ステージに向かって小指を立てる仁菜。
その姿が見えたのか、不敵に笑うヒナ。ダイヤモンドダストのパフォーマンスが始まる。
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<第11話挿入歌「Cycle Of Sorrow」>
叫び足りないのこの世が 乾いた汗になびかせ
変わりゆくものに 一粒の願いだけ
叫び続けるよ 何度でも
残酷な宿命の鎖が絡みついていく
違う悲しみの輪廻
曲が終わり、大歓声を浴びるダイヤモンドダストの面々。
「ようこそ~!」
「後ろも見えてるよ~!」
「ETERNAL FLAME ~空の箱~」とは打って変わって、ハイテンポなロックナンバーを見せつけられ、仁菜たちもそのパフォーマンスは評価せざる得ないようだ。
「うまくなってるし・・・」
「確かに」
「アイドルがボーカル入って、企画先行のバンドに成り下がったって散々叩かれてさ、ふざけんな、バカにすんなって、ここで評価ひっくり返してやるって、絶対思ってる。
お客にもちゃんと伝わってるんだ・・・本気は」
![](https://assets.st-note.com/img/1718503502751-KAMrr7MlfK.jpg?width=800)
その時、ステージ上のヒナが拳を掲げ、小指を立てる。
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舌を出すヒナ、続いて他のメンバーも小指を立てる。「後ろも見えてる」との言葉どおり、仁菜たちの姿を認識してのことだろう。
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「向こうもそう思ってたか」
「ムカつく・・・!」
「私、こういうの好きです」
「桃香さん、みんな・・・このお客、全員引っ張っていきましょう!」
「おう!」
仁菜たちの闘志に、改めて火が点いた。
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いよいよ本番!
すっかり日も落ちて、夜。仁菜たちはステージでのサウンドチェックに臨んでいた。
![](https://assets.st-note.com/img/1718503585719-YwyEHnlyGs.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1718503591371-hsUa3tW0M0.jpg?width=800)
サウンドチェックはすばるのドラムから。
![](https://assets.st-note.com/img/1718503659890-i6HTIU07li.jpg?width=800)
Twitterを見ているとこのシーンの描写のリアルさは有識者から評価が高いようだ。そもそも、こういったサウンドチェックの描写があること自体、なかなか珍しいと思う。(筆者は別にあらゆるバンドアニメを網羅しているわけではないのだが)
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続いてルパのベース。舌なめずりをして始めるルパ。気合じゅうぶんといったところか。
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ルパの弾いているフレーズはさっきダイダスがやってた曲のように思うのだが・・・だとすればやり合う気満々だ。
ルパのベースに、すでにちらほらと集まっている観客からも軽く歓声があがる。さらにエフェクターで歪(ひず)ませた音色のチェックにも入る。
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サウンドチェックも終えて、いよいよ本番が近づいてきた。
「そういえば三浦さんは?」
「さっき連絡来た。観客席で見てるって」
「顔も出さないの?」
「私は距離感があって、そっちの方が信用できるな」
「それだけかなあ・・・」
桃香・・・悪いけどたぶんこの人、仕事半分、フェスを満喫しに来てるの半分なんじゃないかと思うんだけど・・・
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それはそれとして、月に黒雲がかかっていく
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「トゲナシトゲアリさん!本番、お願いしまーす!」スタッフの呼び込みがかかり、ついに仁菜たちの出番となった。
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「じゃ、円陣とか組んじゃう?」
「やだ」
「小指・・・小指、立てませんか?」
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「いいじゃん!」
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「さむ・・・」
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「これから始まるのは、私たちにとって一番のライブだ。そのステージで、仁菜の歌を聞かせてくれ。叫んでくれ。私たちの歌で、みんなの心を抉ってくれ」
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「・・・はい!」
「あ~!泣かした~!」
「本番前に何してんのよ!」
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ステージに走ってくる仁菜。ひったくるように桃香のギターを受け取り、勢いよくかき鳴らす。
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「ギター弾けません!!」
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観客から笑われつつ、ギターを桃香に返す仁菜。
「めちゃくちゃだな・・・」
「ヘタクソ」
「ロックですね♪」
このシーンの仁菜だが、一見脈絡が無い行動のようにも思えるがこれは「ヒナみたいにステージでギターを弾けるテクニックはまだ無い」「けど、それがどうした」という宣言のように思える。
仁菜がギターを始めたのは、第九話での仁菜自身のセリフによれば「桃香に頼るだけではなく力になって一緒にやっていきたい」という理由からなので、別にヒナがギターを持つようになったからではないと思うが、かと言ってヒナのギターを意識していないはずはないと思う。
なのでそんなヒナ(ダイダス)との勝負に臨むこのステージで、仁菜としては宣言しておきたかったのではないだろうか。「今の自分はこうだ」「ありのままの自分で勝負だ」ということを。
![](https://assets.st-note.com/img/1718504238750-9aUwOUAuMf.jpg?width=800)
「はじめまして、トゲナシトゲアリです。えーと・・・バンドやってます」
仁菜の「バンドやってます」という発言に少し笑いが起こる。
「でも、それって全然簡単なことじゃなくて・・・
私たちみんな臆病で、人を信じないし、ぐじぐじしてるし、誘っておいて本気じゃやらないとか言うし・・・」
「それは私のことか?」
「てかぐじぐじって何!?」
「だってそうじゃないですか!」
いきなり言い争いになるが、すばるがうまくメンバー紹介へとつなげてくれる。
「こらこら、今のがギター桃香さんと、キーボード智ちゃん!
そして正論モンスター、ボーカルのニーナ!
で、ベースのルパさん!」
「ケンカ最高~!」
![](https://assets.st-note.com/img/1718504539657-RgFYixIQjf.jpg?width=800)
「そして、ドラムの~!」
「すばるで~す!」
かつては「本名はヤバいでしょ」とステージではハンドルネームの「プレア」を名乗っていたすばる。
名乗りの直前、瞑目した瞬間に万感の想いがあったのではないかと思わされるシーンだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1718504594857-uhDk0HLVQu.jpg?width=800)
全員の紹介が終わり、仁菜が観客に語りかける。
「諦めろ。叶うはずがない。そんなの無理。現実を見ろ。このくらいでいいんだよ。私だって辛いんです。そうやって現実が私を飲み込もうとして、クソ優しい顔で蝕んでくる」
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「だから、この歌を貫いてやります。そして、この歌で信じていない人たちを信じさせてやります。私の全てを否定した全ての連中に・・・」
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「間違ってないって、叫んでやる!!」
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●ED
<第11話挿入歌「空白とカタルシス」>
ライブシーンについては細かく言及したいところだが、長くなってしまうので特に触れておきたい部分に留めてピックアップしたいと思う。
![](https://assets.st-note.com/img/1718610736615-j2wiqcFcRA.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1718610817541-XYsd2dBQv3.png?width=800)
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![](https://assets.st-note.com/img/1718610614262-5XscLRWzTp.png?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1718610644782-6hl78ruThE.png?width=800)
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2024-06-18追記:他の方の考察で見たのだが、ここの鳥について「最初一番うしろにいた鳥が仁菜で、最後5羽になったときに先頭になってみんなを引っ張って行ってる」というのがあってすげー!と思いました。確かにそういう見方もできるかもしれない。
![](https://assets.st-note.com/img/1718611129164-0EAhtYaIHS.png?width=800)
二番からは2Dのカットもインサートされ、トゲナシトゲアリの楽曲MVのような映像が展開されていく。
![](https://assets.st-note.com/img/1718600725931-0wtoHX3B8D.png?width=800)
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なんとフェスに来ていたすばるの祖母天童。
ここで思い出すのが、バンドを見てくると言って「仁菜の同行を断って」去っていったすばるの姿と、楽屋で「どうだった?ライブ、見れた?」と仁菜に問われて「・・・うん」と返答に若干の間があった様子だ。
おそらく、すばるは昼の間に祖母天童と会っていたのではないだろうか?
そこで、メールで伝えていた「他にやりたいものがある」という話を改めてしてきたのではないかと思う。
穏やかな笑顔でステージを見守る天童の様子からすると、すばるはちゃんと気持ちを伝えることができたのだろう。
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この光る花びらだが、メンバーの関係者や家族が次々と映し出される流れと、墓地で過去のルパが抱えていた花束から一枚の花びらが風に飛ばされるカットとのつながりを考えると、おそらく亡くなったルパの家族を象徴しているのだろう。アホみたいな感想で恐縮だが、映像の表現ってこんなこともできるんだ・・・と筆者は感動していた。
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爪痕
曲終了後、観客はセキュリティスタッフが抑えるほどの盛り上がりを見せていた。声援と振り上げた拳。小指を立てている者もいる。
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空中に手を伸ばす仁菜。冒頭のシーンはここにつながっていたようだ。
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「桃香さん、私・・・間違ってないですよね」
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●全体的な感想
紛れもない神回だったと思います。
やはり圧巻だったのが「空白とカタルシス」のライブシーン。
新曲をフルサイズで、これまでのトゲトゲ楽曲のMV的な演出も盛り込んでぶちかましてくるとは予想もしていませんでしたし、曲自体がカッコ良すぎるだろ!!!
一方、ダイヤモンドダストのライブシーンもしっかりカッコよくて。ライバルはこうでなくちゃ、という説得力がある。
そしてライブシーンに至るまでの前半で主に描かれたのがすばるの問題でしたね。第四話以降、たしかに棚上げというか未解決ではあった部分。実はトゲナシトゲアリの大きな目標となった「バンドでプロを目指す」という部分について、メンバーの中ではもっとも動機に乏しいというか、理由が無いのがすばるだったんじゃないかと思うんですが、そこについてきちんとフォーカスして、ややあっさり気味ではありましたが解決を見せてくれた。その点やはりしっかりした構成になっていたと思います(何様?)
すばるの言っていた以下のセリフですが、
「昔さ、初めてフェスに行ったとき、出てたバンドのドラムの人が言ってたんだよね。メンバー全員の背中見て頑張ってますって」
「それ聞いて、ああ、私だって思ったんだよ。私って、そういうポジションだって」
こういう感覚がすばるの中にずっとあったのなら、やはりそれは苦しかったと思うんですよね。役者って、まあいろんなタイプの役者さんがいるとは思うんですけど、どんなタイプであってもいわゆる出役の人には違いなくて、バンドのドラムのように誰かの「背中を見て頑張る」っていうポジションとは決定的に違う部分なんだと思います。
にも関わらず、役者のタマゴとしてスクールにも通っていたわけですから・・・でも、すばるもきっとお芝居が嫌いではなかった、どころか好きなはずだと思うんですよね。このへんは第四話の感想でも書いたのですが、たぶん役者という道についてすばるの判断は「好きだけど、自分には向いてない」というものだったんではないかなと思います。
そんなすばるが、「嘘だけど!」とはぐらかしつつも自分の「本心」にしたがって仁菜たちと共にバンドをやっていくという決意を見せてくれた今回・・・よかったなあという気持ちで胸がいっぱいです。
いつかこのへん別記事で改めて掘り下げたいというか、自分の考える「すばる像」をまとめてみたいですね。
余談
Spotifyで今回のライブのセットリストが公開されており、アニメ本編では描かれなかった「空白とカタルシス」以外にステージで披露された楽曲が確認できるのだが、その中に「空の箱」がある。
ダイダスが出演しているフェスのステージで「空の箱」をやるとは・・・私、こういうの大好きなんです。
<トゲナシトゲアリ LIVE @ BAYCAMP>
・空白とカタルシス
・運命に賭けたい論理
・雑踏、僕らの街
・極私的極彩色アンサー
・理想的パラドクスとは
・空の箱
・名もなき何もかも
【#ガールズバンドクライ NEWS④💥】
— アニメ『ガールズバンドクライ』公式 (@girlsbandcry) June 14, 2024
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トゲナシトゲアリ LIVE @ BAYCAMP#Spotify でセトリプレイリストを公開!👀
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第11話で初の音楽フェス出演として
BAYCAMPのステージに立ったトゲナシトゲアリ。… pic.twitter.com/fRi8pA9eeQ
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