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コンサルタントとプログラマが映画『天気の子』を見た感想と評価

※このnoteは2019年公開の映画『天気の子』のネタバレを含みます。noteを読むにあたって、映画を見ている必要はありませんが、ネタバレを好まない方は先に映画をご鑑賞ください。

※映画の感想はあくまで個人のものです。映画鑑賞直後の会話をまとめたものですが、鑑賞は一度だけですので、記憶に不正確な部分があるかもしれません。

映画の感想を語る人物:
・コンサルタント(以下、コ)
日々コンサルタントとしての勉強中
高校から短歌を趣味としている。
映画は「映画館は寝るのに適し過ぎている」という理由から劇場ではあまり観ない。

・プログラマ(以下、プ)
ゲームのプログラマ。
グラフィックについて若干の知識がある。
アニメ映画を好んで観る。

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鑑賞前の期待値
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コ:
新海誠とRADWIMPSをコンビで再登板させるからには、前作とどこかで違いをつける必要がある。そこが見どころであり、よさであれば面白いし、つまらなければつまらない映画になると思う。
最近のエンタメ業界は二番目三番目のドジョウが大好きだから、二匹目のドジョウが一匹目のクローンでないか、厳しい目で見たい。

プ:
新海誠作品なら『秒速5センチメートル』が好き。
独特の文学表現で観ている人を置いていくようなストーリーでなければいいな。

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感想
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コ:
とりあえずの感想ってとても大事だと思うし、映画がどうだったか100点満点でつけるか。

プ:
38点。

コ:
厳しいね、、、自分は58点かな。
自分は60点で合格のイメージで採点したけど、ギリギリ合格点行かなかった。

プ:
自分は映画の評価は基本的に減点方式なんだけど、減点ポイントがあまりに多かったなあ。特に設定に引っかかる所が多かった。
『君の名は』みたいに音楽を全面に出して感動させにきたら、もう少し設定が気にならなくなったんじゃないかな。

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コ:
ここからは観点に分けて映画を振り返ろう。新海誠作品を観点で分けるなら
・映像
・音楽
・ストーリー
・設定
の4観点かな。

プ:
ストーリーと設定の違いは?

コ:
ストーリーは「映像に映ってた部分」
設定は「映像に映っていない部分」
かな。被ってしまうところもあるとは思うけど。

プ:
オーケー。その観点で行くと、設定の部分に大きな疑問があったね。

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〈設定〉
【帆高(主人公)はなぜ家出した?】

プ:
映画を見始めてから、終わるまでずっと疑問だった。
帆高がフェリーで東京に行くシーンから始まるんだけど、その動機ってどっかで言及されていたっけ。
帆高は東京に来てから、ネットカフェ生活をしてでも、警察に追われても決して島に帰ろうとはしなかった。
家での動機は、島に帰らないことと繋がるから、割と強調されて良かったと思うんだけど。

コ:
そうね。家出の動機がないのは疑問に思ってた。多分、どのシーンでもはっきりとは映像になってなかったし、ね。

プ:
よかった。他の部分に気を取られて見逃したかと思った。

コ:
警察に追われても島に帰ろうとはしなかったのは、それだけ陽菜(ヒロイン)に思い入れがあったことで説明はつくかなとは思った。
島を出る動機らしい動機は「光の先に行きたかった」しかなくて、光の先が東京とは一言も言ってないもんね。

プ:
東京にこだわる必要は全くなくて、例えば長崎とか横浜とかでもいいもんね。

コ:
東京は雨が続いてるって聞いてたし、雨降ってないところ行きたかったろうにね。

【陽菜のお母さんは太陽の下を歩けたのか】

コ:
冒頭と中盤の2回登場した、陽菜が天気の子になった理由のシーン。鳥居をくぐって天気の子になったのはいいけど、お母さんと太陽の下を歩けたかどうか、説明すらないね。

プ:
お母さんが原因で天気の子になったし、その後陽菜は天気の子とどう向き合っていくかに関わると思うんだよね。100%の晴れ女、という噂になるくらいだから、帆高と出会う前から天気の子をプラスに捉えていそうではあるけど。

コ:
難しいね。元々は上のふたつとも説明するシーンが入っていたけれど、全体の時間の関係で削られた部分なのかもしれない。
あえて曖昧にしておく必要がないもの。

プ:
その他、ちょっとずつ圭介さんのこととか、設定が気になってしまう部分があって、ストーリーが入ってこなかった気がする。

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〈ストーリー〉

コ:
設定がゆるいから、ストーリーも人物の行動の原因がわかなかったきがする。

【圭介がクライマックスでとった行動】

コ:
最大の疑問はココ。前のシーンで人に指摘されるまで泣いていることに気づかなかったのは、心が動いたからなんじゃないの?と思った。
歳をとると人生の優先度が変えられなくなる的な自分に言い聞かせるようなセリフを言った後に泣いてたんだから、
会いたい人に会う、やりたいことをやることこそ人生で大切なんだと気づいたのかなと思った。
だから、代々木の廃ビルで帆高と会ったときは、すんなり屋上に行かせて、自分は最初から警察を止めると思ってた。
そしたら、帆高に銃を向けられてもまだ、帆高が警察に行くように説得している。結局、最後の最後で寝返ったけど、遅すぎない?あの涙は嘘か?と思ってた。

プ:
なるほどね。確かに凪から電話を受けて、わざわざ代々木に向かったのだから保身ではなく応援だと思うよね。
どうせ、子供を引き取るのも未成年誘拐の容疑をかけられている以上、すぐには実現しなそうだし。
だって未成年を引き取るのに未成年を誘拐する疑いがあって、しかも、代々木で帆高と会ってシロではないことが明らかになったもんね。

コ:
さすがにブレブレだぞ!圭介!

【夏美の就活シーン必要だった?】

コ:
作中で一番わけがわからなかった約1分間だと思う。
ESを書いたり、面接をして「御社が第一志望ですぅぅっ!!」と叫ぶシーンがあったり、映画において大して主要じゃないキャラクターにフォーカスしすぎなのでは?と思った。

プ:
今考えると、そのシーンを映像化するなら帆高の設定を明らかにして欲しかったなあと思う。

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〈映像〉

コ:
安定の作画力だったね、細かいところまでどこ見てもスキがなかった。
東京の街がリアルすぎるくらいリアルだし、共感を得やすいようにいろんな街を出している。

プ:
ひとつだけ言うとしたら、夏美の服装が気になったかな。
初登場の事務所のシーンからしばらくは映画の「お色気担当」だったから紫とかを着てたんだよね。
そっから就活で白黒を着て、最後の方では明るい色の服を着てた。

この映画って、青と白をベースに作品が組まれているから、青と白以外の色はとにかく目を引くんだよね。
陽菜はヒロインだから、基本的にはピンクを着たり、雨を止めるときは黄色を着てたのね。花火大会の浴衣も黄色ベースだったし。
弟の凪は幼稚園の服から何から、全身黄色って感じだったし。
だから、陽菜の色はピンクと黄色、凪は黄色、他のキャラクターはその色を譲って使わないでいるのかと思ったら、途中から夏美が黄色とか着ちゃうの!警察署から脱走した帆高をバイクで拾うシーンも、黄色のスカーフにオレンジの服にピンクのバイクだったでしょ。主人公奪還かと思った。

コ:
なるほどね。自分はそのあたり全然気づかなかったけど、洪水のようになった青一面の東京に、オレンジが映えるなあとは思っていたかな。

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〈音楽〉
コ:
予告編でも出てたけど、合唱が使われていた部分がとてもよかった。
神々しさがあって、「世界の形を変えてしまった」という作品のテーマにも繋がるし。音楽が急に止まって「行けという」が流れたときは大技が決まったと思ったね。

プ:
『君の名は。』を観たことがあったから、もっと RADWIMPSがジャカジャカ入ってくるかと思っていたら、そうでもなかったね。曲自体もしっとりしていたし。
映像と音楽で魅せる映画だと思っていたから、ちょっと拍子抜けはしたけど、基本的にはよかったね。

コ:
『前前前世』はとにかく目立ってた。サビだけじゃなくてAメロからストリングス全開で派手派手だったし。
それに比べたら『愛にできることはまだあるかい』はとても地味。Aメロとか映画を見た直後なのに覚えてないもん。笑
でも映像と音楽の関係は『君の名は。』とは違うぞ、という意思が感じられて良かったかな。

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〈総評〉

コ:
今まで話してきて一番気になってしまったのは、
わざと設定をゆるくしている部分もあるだろうし、実際これだけ示唆に富む内容の映画であったけど、
作品が提供する「つっこませどころ」以外のところに見た人が引っかかってしまう場所が多いように感じるね。
その辺は作品の「疵(きず)」なのかもしれない。

プ:
気になった人が何回も劇場に通って楽しめるという意味ではいいのかもしれないけど、2回見ない人にとってはなあ……。

【結論】
設定の詰め方、もしくは設定の見せ方が足りないのではないか。

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ここまで読んでいただきありがとうございました。
写真: (C)2019「天気の子」製作委員会
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