死闘ジュクゴニア_マガジン

第22話「オーバーキル」 #死闘ジュクゴニア

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前回

「この程度ではワシらの相手にはならんのだ。残念だが、オーバーキルってやつじゃの」
「ぐふははっ!!」

 フォルが笑いだした。獣のように、獰猛に。

「もー、どうでもいいだろ、こんな奴っ。誰が先にこいつらを全滅させるか! さぁっ、競争といこうじゃねーかっ!」

ぐはっ! ぐふはっ! ぐぅっはっ! はっはあっ!!

 狂笑するフォル! 青龍偃月刀を振りかざすその背後で、不気味な何かが蠢いている。

 うぉおおおん……悔しい……
 うぉおおおおおん……許せない……
 うぉおおおおん……うぉおおおん……

 苦しみ悶え、もがく亡霊のごとき影。フォルの体から噴き出す朱色の瘴気が、怨念渦巻く亡霊の姿を形作り、不気味な唸りをあげているのだ!

 耳許まで裂けんばかりに獰猛な笑みを浮かべ、フォルは叫んだ。

ぐふははっ! 見えるか! 聞こえるかっ! 俺が葬った奴らの怨念が! その叫びがっ! ぐぅははっ! その数は、万なんてもんじゃぁ利かねぇーっ!!

 うぉおおおおおん……うぉおおおん……

 渦巻く瘴気の亡者たち。彼らが形づくる屍の山が、フォルを怨念の唸りで包み込んでいく!

「はぁあ、くだらん」

 ため息をつくダカツ。その長い黒髪がざわざわと揺らぐ。そして蛇とも竜ともつかぬ、不気味な長虫のごとき異形を作り上げていった。

 ぬらぬらと蠢く七匹のそれは、急激に肥大化。ダカツを中心として半円状に広がっていき、ついには三体の巨人をも上回る巨大な怪物へと変容を遂げた! その不気味なる長虫の目から、そして口から、死を予感させる奇怪なる七色の光が溢れ出している!

ぬぅうんっ!

 一方、シンキは腰を落とし、両腕を落とした腰の位置にまで引き下げていた。その姿勢に秘められた恐るべき力のポテンシャル。それが、ビリビリと大気を振動させている!

「あわわ……これはなんだかまずい。まずいですよっ……! 激甚災害のザスタ! お前はわたくしを守れ! 悪鬼羅刹のデムン、豚虎列剌のピグレット! お前たちは奴らを叩きのめせっ!」

 芝居がかった口調で、大袈裟に慌てふためくピエリッタ。

ズガガガガーーッ!!

 激甚災害のザスタの体に幾筋もの雷光が閃き、突風と共に暗黒が吹き出した。その暗黒がピエリッタの体を包み込んでいく!

グルルルルオォォーーン!!

 咆哮とともに赤く灼熱する悪鬼羅刹のデムン。口が大きく開かれ、そこに溶岩のごとき死の濁流が渦巻いている!

フゴッ、フゴォオ!

 醜悪なるピグレットの体から、紫色の蒸気、そして緑色の液体が噴き出している!

ゴォフッ、ピギィイーー!!

 それらを撒き散らしながら、ピグレットはフォルに向かって突進した!

 フォルが吠えた!

ぐぅほはっ! もうっ! 遅ぇーーっ!!!

 フォルの青龍偃月刀が、巨大な弧を描いた。

唸れっ! 俺のっ! 屍山血河ぁあっ!!!

 うぅぉおおおおおおおおんっ!!!

 怨念の雄叫びをあげ、巨大な津波と化した朱の瘴気が巨人たちを飲み込んでいく!

「「「ピギグォガガガオオオォーーン!?」」」

 この世為らざる叫びをあげる巨人たち。その体から迸る鮮血! そしてそれとほぼ同時。シンキがその両拳を螺旋状に突き出し、叫んだ!

ふぅうんっ! 震天っ!!

 猛烈な勢いで突き出されたその拳の周囲に、凄まじき力が渦巻いている!

 ズズゥズズズズウウウウウウウウンッ!!!!

 シンキの拳の動きに合わせて大気が鳴動する! そして巨人たちの存在していた空間が! そこから噴き出していた鮮血が! その巨体が! 全てが圧縮され、押し潰されていく!

「はぁあっ……」

 ため息をつくダカツ。その周囲に拡がる悍ましき長虫たち。その口がバカりと開き、禍々しき七色の怪光線が放たれた!

 ビガガガッ! ビガガガッ! ビガガガガッ!!

 怪光線が巨人たちを直撃! おお、なんということだ! その光を浴びるや否や、押し潰されていた巨人たちの体が、まるで揮発するかのごとく即座に消滅していく……。

「終わりだ。はぁ、くだらんっ」
「ぐほっ、どうやら全滅競争は俺の勝ちだな……」

 勝ち誇るフォル。しかし直後、その眉根が怪訝そうにしかめられた。

「んん。あぁ~んっ?」
「ぬぅ、あれはなんじゃの?」

 三人の視線の先。空中に染みのような暗黒が浮かんでいる。

「あっはっはっはっ。勝ったと思いました? 勝っちゃったと思いました? 勝ったと勘違いしちゃいましたぁ?」

 小バカにした笑い。暗黒のような染みが拡大していき、それが巨人の姿を成していく。その周囲に風が吹き荒れ、暗黒の中を稲妻のごとき光が明滅しはじめた。

ズガガガガガギシャァーーーーン!!!

 巨人の咆哮! 激甚災害のザスタである!

【第二十三話「星旄電戟」に続く!】

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