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掌編とか短編とか!

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自作の掌編・短編小説を格納していきます。
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#異能力バトル

【ぼくときみの海辺の村の】 #第一回お肉仮面文芸祭

 ゴッゴッカン……  ゴッゴッカン……  ぼくの記憶はそんな音からはじまった。繰り返し打ちならされる音には不思議な静けさがあって、そしてぼくの口のなかには、いっぱいになにかがひろがっていて、ぼくはとにかく夢中でそれを食べていた。とてもおいしかったことだけはよく覚えている。  ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。するとそれは少しずつ小さくなっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……。それはかけらのようになっていく。ゴッゴッカン……。ぼくは食べる。ゴッゴッカン……

表現者たち

「貴様ァ! 音楽に政治を持ち込むとは何事だぁ!」 「ち、違うんですっ……僕は……」 「言い分けはするなぁっ!」  殴るようにカウンターテーブルに叩きつけられる拳。ガシャン! まるで憲兵のような衣服に身を包んだその男は、威嚇するかのように周囲を睨み付けた。  レトロ感漂うバー。店内は週末の夜を過ごそうとしている客によって賑わっていた。だが……その場の空気が澱み、重く沈んでいく。抗弁しようとした少年は唇を噛んで押し黙った。 「そうそう、そうだぞ。奥ゆかしさ。それが肝要だ」