これからAI人材に_求められるのは__2_

未来のAI人材に必要なのは「AIをデザインする力」

「AI人材」と言われて、何を連想しますか?
・Python
・R
・数学
・統計学
・機械学習

色々な場面で「AI人材」と言われているのは、だいたい上記のような能力を持った人のことを指しています。各地で行われているAI講座も、ほとんどは上記のようなデータサイエンスを学ぶものです。
しかしビジネスの現場で必要な「AI人材」は、本当にデータサイエンスの力なのでしょうか。今回は、本当に必要とされるAI人材とは?というテーマについて考えてみます。

AIの民主化

機械学習のアルゴリズムは、ますます高度化しています。単純な回帰分析の問題であっても、学びたての初級者とベテランでは、認識精度に大きな差が現れます。今から機械学習の勉強を始めてベテランに追いつくのは、相当な努力が必要でしょう。

その一方、機械学習の研究者の中では、「AIの民主化」という活動が進んでいます。自分たちの研究成果を誰でも使えるように!彼らのオープンマインドによって、機械学習の専門知識が無くても使える便利なAIツールが次々に登場しています。
以下のノートでは、これらのツールの中でも特に無料で使えるものをいくつか紹介しました。

このような背景の中で、今からPython、数学、統計学、というディープなスキルを磨いてデータサイエンティストを目指すことは、もちろん研究者になりたいという方にとっては必要なステップですし、この領域で尖った人材が必要なことも事実です。
しかし、これまで数学とは全然関わりの無かった文系のビジネスマンが、「AI人材不足だ!」という言葉に従って専門書を手に取ることは本当に必要なのだろうか?と、僕は思うのです。

「AI人材」は分業体制に

では、いまからAI人材を目指すのはやめたほうが良いのか?
そうではありません。AIの民主化は、世の中に新しい役割を生み出します。それは、研究者の開発したAIツールを「活用する」という役割です。

研究者は、自分たちの研究成果を誰でも使えるようにツール化して提供します。すると、このAIツールを使って「どんな課題を解決するか?」「どうやって課題を解決するか?」を考える役割が必要になります。
この役割は、もともと研究者が兼務していたわけですが、AIの民主化で分業が可能になったことで、AIを適用する領域に天才的なアイデアを持つ人や、AIツールのラインナップを熟知している人、課題に合わせて適切なツールを提案することに強みを持った人などが登場し、AIによるイノベーションがより加速していくことでしょう。

要するに、「Excel使えますか?」というノリで「AI使えますか?」と聞かれる時代がやってくるということです。

その結果、いま一口に「AI人材」と呼ばれている能力は、「AIサイエンティスト」「AIデザイナー」「AIエンジニア」という3つの能力に分かれていきます。

AI人材

AIサイエンティストは、今で言うところの「AI人材」であり、機械学習の理論に精通し、より高度なアルゴリズムを開発する役割です。この役割は引き続き必要とされますが、一流の研究者以外は徐々に淘汰されていくはずです。

一方、AIデザイナーは「AIで何ができるのか」を理解し、このテクノロジーを使ってどんな課題を解決すべきか?どうやったら解決できるか?を考える役割です。
そのために必要なのは、機械学習の知識よりも、ロジカルシンキング、デザインシンキングをはじめとする思考法や、ビジネスモデルジェネレーションやジョブ理論といったフレームワークです。
これは、いわゆる企画やマネジメントの仕事であり、現在そのようなポジションにある人は、数学の勉強を始めるよりも迷わずこのポジションを狙うべきです。

さらにAIエンジニアは、世の中に公開されているAIサービスを組み合わせて、アプリケーションを開発する役割です。この役割は、従来のアプリケーション開発技術がそのままアドバンテージになります。これまでエンジニアとしてのキャリアを積んできた人は、イチからPythonを勉強して自らAIを開発するのではなく、世の中に公開されているAPIをリサーチして使い倒す訓練をした方が、ずっとスピーディに強烈なAIアプリケーションを構築することができるようになるはずです。

まとめ:今から勉強するなら?

まとめると、「AIを学びたい!」というモチベーションを持つ方に対する僕の提案は以下です。

■研究者になりたい→AIサイエンティストを目指す!
Python、数学、統計学、機械学習

■今は企画やマネジメントの立場にある→AIデザイナーを目指す!
ロジカルシンキング、デザインシンキング、ビジネスフレームワーク

■今はエンジニア→AIエンジニアを目指す!
Webアプリケーション開発、公開されているAPIの利用

AIが高度化していき、色んなことが自動化されていくと、最終的に一番人材不足になるのはAIデザイナーだと考えられます。これから、どんなビジネスを考えるにもAIは不可欠な存在になるでしょうから、「AIデザイン」という能力はビジネス基礎力としてすべての社会人に必要となるはずです。

AIデザイン講座を開催します!

私も所属する未来技術推進協会にて、AIデザイナーに必要なアイデア発想法と機械学習ツールを1日で学べる「1日で分かる!AIデザイン講座」を開催します。ノンコーディングで動かせるAIツールのハンズオンや、アイデア創出のワークショップを通じて、AIによる課題解決を体験できる新しい講座です。また今回は、日本初のAI専門メディアであるAINOWさんのご協力も得て、色々な事例もご紹介できる予定です。
皆様のご参加をお待ちしています!


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