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【インタビュー】作家・八目迷さん


 2019年、第13回小学館ライトノベル大賞で、異例の「ガガガ賞」と「審査員特別賞」のW受賞をし、デビュー。
 デビュー作『夏へのトンネル、さよならの出口』は、時空を超えるトンネルに挑む少年と少女を描き、その圧倒的なリーダビリティと斬新な設定が話題となった。
 そんな文庫界における新旗手として注目を集める八目迷さんにお話を伺ってきました。


――どのような経緯で『夏へのトンネル、さよならの出口』を書こうと思ったのでしょうか?
 昔から時間をテーマにした物語が好きで、そういうものを自分も書いてみたいと思っていました。あと、作家志望だった頃は、いろんなことに焦っていたんですよね。それは仕事だったり不透明な未来だったり、原因は様々です。
 とにかく時間の流れが速く感じて、常に不安を抱えていました。そういった焦燥から「外と中で時間の流れが変わるトンネル」というアイデアが生まれ、「夏へのトンネル、さよならの出口」を書き始めた、と記憶しています。

――なぜ小説家になろうと思ったのですか?
 これといったきっかけはないですね。もともと中学生くらいの頃から、好きな漫画やゲームなどの二次創作を書く習慣がありました。それで二十歳のとき、ふと「公募に出してみよう」と思い立ったんです。
 初めての応募作は箸にも棒にもかかりませんでしたが、落選を重ねるにつれ「ここまで来たら退けない!」と思うようになり、執筆にのめり込みました。
 負けず嫌いというわけではないんですが、執筆にかけてきた時間を無駄にしたくなかったんです。コンコルド効果ってやつですね。

――デビューして何か変わったことはありましたか?
 作家になった実感はいまいち持てないですね。もっと作品を書き続けて、たくさんの方が読んでくださったら、そこで堂々と作家を名乗れるのかな、と思いながら今日も書いています。

――新作『きのうの春で、君を待つ』について、お聞かせください。
 今作も、時間の流れにギミックのあるお話となっています。一日ずつ時間が巻き戻る現象に巻き込まれた少年が、幼馴染の少女と協力しながら、かつての恩人を救う……というのが大まかなストーリーラインです。
 ただ、これは前作の『夏へのトンネル、さよならの出口』にも言えることですが、時間的な要素はあくまで主題を際立たせるためのものです。今作の主題は、主人公である「船見カナエ」と、その幼馴染である「保科あかり」の関係性だと考えています。そのため、カナエ視点による時間を遡っていくパートと、過去のあかり視点によるパートを交互に積み重ねながら、二人の心情を深く掘り下げる構成にしました。
 ちょっと複雑な題材にチャレンジしたので、期待と不安が半々ですね。後者のほうが大きいかもしれません。多くの人に受け入れてもらえることを願います。

――これからどういうものを書いていきたいですか?
 まだ時間的な要素を絡めて表現したいことがあるので、できれば次も、時間にギミックのある話を書きたいですね。それが終わったら、ミステリーや群像劇にもチャレンジしたいと思っています。あと、才能の話とか書きたいですね。

――将来、こういう作家になりたい! など考えていることはありますか?
 本を出し続けることが作家像の確立に繋がると考えているので、どういう作家になりたいかは、これから見つけていきたいです。というか、見つけてもらいたいですね。
「八目迷はこういう作家だ」と読者の方々が仰れば、それこそが作家としての自分があるべき姿、なのかもしれません。

~インタビュアー・編集Hより~
 とある日、編集部にて「この本、面白いよ」と上司から渡されたのが、
デビュー作『夏へのトンネル、さよならの出口』でした。
 自宅に戻ってから読み始めたら・・・もう夢中で読んでしまいました。
 好奇心に突き動かされた主人公が全てを投げうってトンネルの謎を解明していくさまに、ドキドキが止まりませんでした。

 そんな八目迷さんの待望の新作『きのうの春で、君を待つ』(小学館 ガガガ文庫)が4/17に発売されました。こちらも前作と同様に、その圧倒的なリーダビリティと読み手を飽きさせない構成でラストまで一気読み必至です!

詳しくはガガガ文庫さんのホームページをご覧ください。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09451842

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