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新 戦国太平記 信玄/海道龍一朗

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戦国の雄・武田信玄。緻密な検証から知られざる実像を明らかにしていく歴史巨編!
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2023年11月の記事一覧

新 戦国太平記 信玄 第七章 新波到来(しんぱとうらい)7 (下)/海道龍一朗

 一方、先に館を出ていた飯富昌景は、元城屋町の屋敷で叔父と対峙していた。 「叔父上、夜分遅くにお訪ねし、申し訳ござりませぬ」 「どうせ、眠れぬ夜を過ごしていたのだ。構わぬ」  飯富虎昌は俯き加減で力なく笑う。 「源四郎、そなたがかような時刻に来たということは、すでに御屋形様へすべてを打ち明けてしまったということであるな?」 「さようにござりまする」  昌景は胸元から何かを取り出し、叔父に差し出す。  錦袋に包まれた短刀だった。 「叔父上、この身を裏切者とお思いになるのならば、

新 戦国太平記 信玄 第七章 新波到来(しんぱとうらい)7 (上)/海道龍一朗

   八十五    三好一派が公方、足利 義輝を弑逆。  その耳を疑うような一報は、躑躅ヶ崎館にも届いていた。  ――義輝殿が三好に御所巻されたか……。  信玄は半眼の相で灯火を見つめながら思案にくれる。  ――新第招待の御教書もこちらに届いており、そろそろ上洛を考える頃合いかと思うていたが、当人の首が落ちてしまったのでは、御披露目どころの騒ぎではあるまい。確か、義輝殿には僧籍にはいった実弟がいたはずだが、無事なのであろうか。ともかく、三好が次に誰を担ぎ上げるつもりかも含め

noteにお引越し!「新 戦国太平記 信玄」バックナンバーはこちらから

皆さんこんにちは。 Web集英社文庫にて連載しておりました、海道龍一朗さん「新 戦国太平記 信玄」がnoteにお引越し! バックナンバーは以前のページでご覧いただけます。 各話へは以下から。 【第一章 初陣立志】 【第一章 初陣立志2】 【第一章 初陣立志3】 【第一章 初陣立志4】 【第一章 初陣立志5】 【第一章 初陣立志6】 【第一章 初陣立志7】 【第一章 初陣立志8】 【第一章 初陣立志9】 【第一章 初陣立志10】 【第一章 初陣立志11】