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ビストロ☆シュウ13/天城の椎茸

三島の親友から今年も夏野菜とともに伊豆の椎茸が送られて来た。奥さんの丸文字で,

「これはぜひまたステーキにして召し上がってください。」

と添え状がある。

遠くの親友を想うときボクは天才クッカーである。クッカーとは造語で,なぜコックではないのかと言えば,味音痴の妻以外にはテイストする人間がいないからだ。天才と断定するにはいささか客観的評価に欠けている。

軽く塩と粗びきの胡椒をして,薄く引いたオリーブ油で両面に火を通す。5gずつのバターを載せたら火力を上げ,鍋肌から振った醤油を一気に焦がす。…パーフェクトである。何の付け合わせも必要としない。いったい自ら光合成できない菌糸がどうやってこれほど芳醇な肉を育むのだろう。

天城と言えば山葵で知られるが,井上靖の「しろばんば」を読まれた方なら伊豆の椎茸のいかに旨いかを推していただけよう。あるいは写真をご覧になってすでに唾液腺が決壊していらっしゃるかもしれない。


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