火花


すごいものを見たと思った。よみはじめてからの18ページでものすごいものを見させられたと思ったのはこれが初めてか、二回目か、とにかく自分はすごいものを読んだのだと思った。又吉直樹の火花。又吉がいつか直木賞?芥川賞?をとったとき、どうせ芸人だからとれたんだろうと勝手な想像をして本屋にどれほど火花がならんでも映画になってもテレビでみても、本を買おうとはしなかったし買おうと思ったこともなかった。それが自分が本のことについては信じている千葉大のころの友達に東京で1年ぶりにあったとき、そのときたまたま持っていた東京百景を貸してくれて、それがはじめて読んだ又吉の本だった。すごかった。特に花火について書いた文章、いま振り返るとなんともおこがましい話だけど自分には到底かけないと思った。いつか作家になろうと思っていた自分は到底作家になんてなれないと思ったのは、川上未映子がにおいについて書いた文章をよんだときに並んでそれが2回めだった。とんでもない文章を書く人だとわかって、それから又吉の本を読みたいと思っていたけど特に自分から図書館や本屋で探すわけでもなく、なんとなくそのままになってバンクーバーに戻ってきて、大学の図書館でみつけた又吉の火花。ここで本を借りるならこれを借りようと思って読みはじめた。18ページ。ものすごく生きてきた人の書く文章、自分もこうありたい、こう書きたいと思ったとたんにそれは叶わなくなってしまうのだけど、ただ目の前の文章が自分におれはこう生きてきたと言っていて、自分もただこんな文章で生きたいと思う。


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