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名前について
ある神を信仰するひとたちにとって、この世でもっとも美しい言葉はその神の名前なのだ、と大学生のころに芸術の授業で習った。それまで名前を「言葉」としてとらえたことのなかったわたしは、価値観をガツンと叩き割られるような衝撃を受けた。
彼らにとって神の名を口にすることは、祈ることと同義であるらしい。だから名前はこの世でいちばん美しい言葉であり、祈りであり、呪文なのだ。
誰かを好きになることは一種の信仰だと思う。だからあなたの名前がこんなにも美しく感じられる。
健康になってほしいから「康」の字をつけようとか、幸せになってほしいから「幸」の字をつけようとか、そういうのもよく考えたら祈りだ。ふだんはわざわざ意識しないけれど、わたしたちは誰かに名前を呼ばれるたび、その祈りを呪文のように聞きつづけながら生きる。だからわたしも丁寧に呼びたい。あなたの名前を、ちゃんと、祈りながら呼びたい。
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