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知ることは愛することだ
自分の哲学を持とう。自分だけの、自分のための哲学を持とう。そしてお互いの哲学を交換しよう。親しいひとでも、見ず知らずのひとでもいい。理解できてもいいし、ぜんぜんできなくてもいい。ひとの哲学にふれることで、自分の哲学をもっと、深めよう。そうやってすこしずつ、変化させながら、つくりあげたあなたの哲学がいつか、どこかでかならずあなたを守る。その瞬間がきっとくる。
ところで、わたしが大切にしている、わたしの哲学のひとつに、知ることは愛することだ。というのがある。
それをはじめに思ったのは、知りたいと思った時ではなく、知らないことに気がついた時だった。昔つきあっていた男の子の写真をふとツイッターで見かけて、そのリュック知らないなあと思った時だった。ああ、わたしは彼のことを、今までよく知っていたんだな。と思った。はっきりと思い出せた。彼がいつも背負っていたリュックのかたち。履いていた靴の色や、被っていた帽子のブランドも。好きだった曲、家族のこと、口ぐせ、幼なじみの名前、嫌いな食べもの、高校の制服、飼っていた犬の名前、その犬に向かって間違えてわたしの名前を呼んだことがあること、初恋がどんなものであったか、メールアドレスの意味、そのひとつひとつを、わたしはよく知っていた。わたしの知らない十数年間のことを知りたかった。君のいままで生きてきた、そのひとつひとつを知りたかった。いつも君が今日なにを食べたのか知りたかった。たぶん、あれが愛だった、わたしにとっての。
わたしの知らないきみの話をしてほしい。グーグルで検索しても出てこなくて、ウィキペディアにも載っていない、きみの、きみだけの話を聞きたいんだよ。
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