イルカ探訪誌 6

 錦鯉は滝を登ると龍になるというが、イルカはどうすればクジラになるのだろうか。

 いや、おそらく違う。

 クジラとイルカは同種ではあるけれど、イルカが鯨に成長するわけではないのだ。

 私は人間であるが、どうあがいても白人にはなれない。

 両者は限りなく近い存在だが、どこまでいってもパラレルなのだ。

 空と海が交わることがないように。

 さて、ウィキペディアによると、だいたい4mがクジラとイルカの境目らしい。

 4mというと、人間と巨人の境目もそのくらいではないだろうか。

 もっとも、巨人なんてものが存在すればの話だが。

 人類の最高身長として、ギネスブックに載っているのは272cmだそうだ。

 ロバート・パーシング・ワドローというアメリカ人で、1918年から1940年までの、世界が最も慌ただしい時代に生きた。

 彼の驚異的な身長は脳下垂体腫瘍によるもので、人気者ではあったが決して楽な人生ではなかっただろう。

 私が言いたいのは、つまり人類はまだ3mの壁を越えてはいないということだ。

 もし3mのイルカがいたとしたら、それは人類の誰よりも大きなイルカだということだ。

 我々は、我々よりも大きな生き物を、果たして許容できるだろうか。

 水族館のスターとして、海のアイドルとして、愛せるだろうか。

 我々が畏怖を抱かないギリギリのライン。

 それが4mなのではないか。

 人々から恐れられたとき、イルカはクジラとなるのだ。

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