日進月歩 ~Road to MBA~#98
2021/4/21:ヒューマン・リソース・マネジメント1②
水曜日は、山﨑先生という新しく着任された先生(キャリアデザインやヒューマンリソースの講義をご担当)の基で学ばせていただいており、2回目の講義となります。
本日は、「経営戦略とヒューマン・リソース・マネジメント」と題して、事例検討や講義、研究論文から紐解いていく内容となっている。
■事例検討:人と組織のための中長期計画作り方会議
リクルートワークス研究所における「人事による、人と組織のための中長期計画作り方会議(2013)」の事例検討から、どのくらい経営戦略と人事戦略が連動しているか、人事部の立ち位置、記事から8年がたった現在でどのくらい実施できているかなどを所属している企業を例にディスカッションするところから始まった。
私のグループは上から「金融業界」・「新聞業界」・「スポーツ業界」といった構成で、規模や業種も様々なメンバーだったため、内容が異なる結果となった。経営戦略と連動している企業と、部分的に連動している企業、あまり連動していない企業の3通りとなり、結果がバラバラであった。
加えて企業によっては「人事部」の立ち位置が異なってくる。ようは経営戦略にどのくらい影響をもっているのか(今回は中期経営計画を作っていくときの影響)、人事部がどう関わっているかを3類型に分類し考察した。
➀経営ボードとの一体型人事:企業に必要な人材を定義し施策を実施
②事業と協業する人事:事業の目標達成を人の側面から支援
③独立専門型人事:経営の中の機能として独立し、育成・異動を行う
これは大きく2つの方向性に分かれており、『②事業と協業する人事⇒①経営ボードとの一体型人事』へと変革に動いている企業と、『②事業と協業する人事』のまま進んでいる企業という結果になった。現状の課題を認識し、変革に向けて動いている企業と、昔からのやり方を変えずに変革に踏み切れない企業との差であるとも感じられた。
さらにこの記事から8年が経過した現在、所属している各企業がどのくらい実践できているかを5段階評価したが、全員の結果としては非常に厳しい内容となっていた。
しかしながら、この要因は我々がしっかりと「人事の実施している内容」を理解できていないからではないかといった指摘もあり、なるほどと思えることもあった。総括として、環境の変化が起きているこの世の中で、少しずつではあるが変革していこうと動いている企業も多いことが見受けられた。ヒューマン・リソース・マネジメントの手法や講義が最近の日本企業で取り上げられているのは、こういった「変革の時代」という環境の変化による不確実性も関与しているのではないかと推測された。
■講義:経営戦略におけるHRM
日本の人事と欧米の人事に大きな特色の違いがあることも、冒頭でご紹介いただいた。日本はメンバーシップ型で内部労働市場(ジェネラリスト向けであり異動を社内で実施)、かたや欧米はジョブ型で外部労働市場(スペシャリスト向けであり社外へ転職を実施)である。
また、今回のテーマでもある『経営戦略』におけるHRMを考える上では、「戦略」を考えることも大事ではあるが、その戦略を「実行できる組織作り」も加えて重要な要素でなる。また、この組織の在り方こそがHRMの要素であり、競合優位性が高まる要素として論じられている。その概念こそが、後程も出てくる「リソース・ベースド・ビュー」となる。
リソース・ベースト・ビュー(Barney,1991)
※特徴的なのはVRIOのフレームワークであり、持続的競合優位性を高める
さらには、組織をきちんと作ったとしても、そこで働く「人材」が優秀であるかどうかも重要な要素となってくる。いかに優秀な人材を育成できるのか、また、このような優秀な人材をどのように組織に引き留め、外部市場から引き込んでいくのか。そのためには、企業が進むべき戦略と柔軟な対応が可能な組織制度(報酬や評価)といった面の整備も重要となる。
このように、戦略に合わせた組織作りを考えると、必要な要素は多岐に渡ることがあげられる。各要素である「人事評価と報酬」や「人材育成とキャリア開発」などは、ヒューマンリソース・マネジメント1の講義内で学ばせていただこうと思っております。
■講義:戦略的人的資源管理(SHRM)
前回の講義#94で「管理論」についての考え方や背景、および歴史を学んだが、その中でも「戦略的人的資源管理(SHRM)」に着目して講義が進められていった。1992年にWright & McMahanによって提唱され、①HRM施策を組織の戦略的経営過程に結び付ける、②HRM施策の間の協調や一貫性を重視する、③HRM施策が企業レベルの業績に寄与しうるという考え方が基になっている人材管理手法となる。
戦略的人的資源管理(SHRM)
前提:HRMと組織戦略との調整や連携が必ず必要である
説明:組織の目標が達成できるような計画的かつパターン化されたHRM
上記図ではたくさんの重要な要素が含まれているが、組織の戦略を達成させるために要素を調整・連携させる枠組みとなっている。
●主なキーワード
RBV:経営資源(リソース)こそ競争優位性を高める源泉
サイバネティックス:ネガティブもしくはポジティブフィードバック
行動アプローチ:防衛者、分析者、探索者による環境適応
資源依存・制度的アプローチ:政治・法律などの外的要因のHRM施策
■研究論文:ミドルマネージャと組織パフォーマンス
論文は、「ミドルマネージャの役割が組織パフォーマンスに与える影響-戦略的人的資源管理の視点から(西村孝史、西岡由美(2015)」において、ミドルマネージャの役割と経営戦略の関係性、それに基づいたヒューマン・リソース・マネジメントを検討していく。まずは、自分自身でこの論文を読み解き、まとめる過程を経て理解を深めていった。さらに事例検討と同様に、新しく「ITサービス業界」のメンバーも加わって4名でディスカッションさせていただいた。
論文からの結果では、情報伝達と部下育成の役割が与える影響としては大きいとして取り上げられたが、実際の現場を見てみると「業務量過多」によってミドルマネージャが疲労困憊になり、本来やらなければいけないことが出来ないケースが多い。こういった部分はどうやって解消していくのか。さらに情報伝達は重要であると思うが、「情報の質」といった面も重要になる、部下をどうやって育成したらいいのかなどは論文に足りない部分といった批判的な要素の議論も多く出たように感じている。
過去の私の経験からも昔に50名程をマネジメントしていた時期があったが、多忙な時は3か月くらいシャワーだけを浴びに帰るといった生活があったことを思い出した。経営層が考えていることを現場に伝えるときに現場目線でも分かる言葉(=共通言語)に置き換えて伝達したり、現場の言っていることを経営層へきちんと伝達することを無意識に心掛けていた。さらには新卒2年目のメンバーを早期にリーダーに昇格させ経験できる環境を作ること、そのためには既存事業を拡大し損益責任を増やしてポジションを作ることを大事にしていたように感じています。
しかしながら、当時25歳の私は「習うより慣れろ」といった感じでやってしまっていたなとつくづく思い出し、この時の私にこのミドルマネージャの理論を教えてあげられれば、もっと根拠のある自信を持つことができ、対応できる範囲も増えていたのではないかと感じられた。
このように過去経験したことが、理論や研究論文によって経験が整理され、体系的に頭で理解することができる。この講義が楽しいと思える要因であり、満足感を得られているのではと感じている。
※次回は「社員格付け制度と賃金」について学ぶ予定です。
平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
※https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%B2%A9%E5%AE%97
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科
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