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日進月歩 ~Road to MBA~#127

2021/6/12:ビジネス・オーガニゼーション4②
 土曜日は、経営組織論を専門とされている山中先生の講義をとっており、9回目の講義(春学期2の2回目の講義)となります。前講義(#122)では組織デザインの程度を決めるために必要な指針(取引費用、部門編成の基礎と基準)について学ばせていただきましたが、本講義では「命令権」や「指示命令」という観点で部門編成した時の組織デザインの種類と特徴について、講義いただきました。

■部門編成の基礎と基準(Mintzberg,1991)

 前講義に引き続き「命令権」や「指示命令」という観点で部門編成をしていく方法を用いると、以下4種類の組織に区分けがされる。

➀ライン組織(ワン・ボスシステム)
②ラインアンドスタッフ組織
③ファンクショナル(機能別)組織
④マトリックス組織


➀ライン組織(ワン・ボスシステム)

 命令の一元化によって組織における指示命令が確立され、秩序が維持される。管轄と責任が明確になることが特徴であり、変動性の低い職務を遂行する場合に適合した組織デザインとなる(上位者は例外の対処に集中可能)。

【問題】意思決定や情報伝達の過程が長く、煩雑になる
【問題】部下の職務や活動が多様かつ複雑になるとコントロールが難しい(エージェンシー問題:上位者が部下を適切にモニタリングできない、個人の知識の限界など)


②ラインアンドスタッフ
 ライン組織における上位者の過剰負担を改善した組織形態となり(スタッフへの水平的分権化)、支援するスタッフは管理職位の意思決定とコントロールに対して助言を実施する(専門知識の不足を補完)。また、変動的であまり構造化されていない職務遂行に対して、調整やコントロールを支援する際に適合した組織デザインとなる。

【問題】管理職位とスタッフ職位の間のエージェンシー問題(責任のない専門家の権力など)

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 ここまでの内容を基に考察すると、上位者が命令権や指示命令の権限を持って部下に対して管理する組織デザインのように見受けられる。講義内では「ホンダの北米事例」を基に、専門的な知識を有する現場スタッフ(部下)から出た戦略や指示命令など(創発的戦略)によって、成長を遂げた企業例もあるとの示唆をいただいた。このように、専門的な知識を持っている人が上位者になればうまくいくのではないかと考えた組織デザインが、「③ファンクショナル(機能別)組織」となる。


③ファンクショナル(機能別)組織
 管理の専門化(職能別職長制度)が特徴であり、複数の命令系統をもっている各専門管理者は、特定の職務領域について責任を持ち命令を下す。管理者の専門知識の獲得や蓄積などが促進され、上司・部下の知識や情報の非対称性の克服において適合した組織デザインとなる。

【問題】指示命令関係におけるコンフリクト、管理職位の責任不明確や部下の職務の成果に対する責任の曖昧さなど

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④マトリックス組織(ファンクショナル組織の一類型)
 指示命令系統が2つの次元(活動や対象など)に沿って編成されており、知識や情報の非対称性を緩和して管理の質を高めることが可能になる。あまり構造化されておらず、変動的な職務遂行に対する調整に適合した組織デザインとなる。
※2つの次元は「職能×製品」、「製品×地域」といった類型が多い

【問題】2つの命令系統がありどちらを聞いていいか分からない(2重の権限構造に伴うコンフリクトと混乱)


 ここまで4つの組織デザインの種類について説明を聞いた上で、グループディスカッションにて自身の企業はどの種類に属しているかを紐解いていった。業界や企業によっても多種多様な組織デザインになってくること、同じ業界においても差別化する要素によってデザインが変わるなどをディスカッションを通じて改めて感じることができました。

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■意思決定権の配分(分権化のデザイン)

 前述で述べた4つの組織デザインにおいて考えられるのは、誰にどこまでの権限を与えていくかといった視点となる。ここでは、それを「意思決定権」と置き換え、どのように配分することで組織がデザインされていくかを学んでいきたいと思う。「分権化の意義(Mintzberg,1979)」で論じられている内容となるが、大きく以下の3つの視点から考えられている。

a)認知の限界・情報処理能力の限界(情報過多の回避)
b)個別の局所的な状況に対する適応(情報伝達の地帯による遅れを回避)
c)諸個人の動機づけに対する刺激(動機づけの重要さ)

 また、分権化は2つのタイプ(垂直的分権化・水平的分権化)に分けることができ、意思決定までのスピードと質(権限と責任)をどう高めて保っていくか、という視点で組織デザインを考えることが必要となってくる。

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 さらに講義内では、日米の企業における経営比較(加護野・野中他『日米企業の経営比較』:日本経済新聞社,1983年)についても考察し、国の違いにおいても示唆をいただいた。簡単なまとめになってしまいますが、米国は日本より社長における影響力は高い傾向があり、日本は現場もしくは社長直轄の部署のパワーが強いことが示されていた。権限委譲をどこまで誰にしていくのか、それに合わせた組織デザインはどういったものが適切か、多くの企業事例から重要な視点を学ばせていただいた。

 次の講義では、分権化された活動をコントロール(調整)するメカニズムの種類や標準化に向けた実例などを紐解きながら、組織間におけるコンフィギュレーションについて考えていこうと思う。

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
※https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%B2%A9%E5%AE%97
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

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