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日進月歩 ~Road to MBA~#73

2021/1/9:企業財務基礎⑫
 年が明けて初めての講義となりました。前回に引き続き土曜日は、ファイナンスといえばこの人と呼ばれる下川先生による企業財務基礎の12回目です。本日は、日進月歩 ~Road to MBA~#64で整理した市場の不完全要素の考慮をしている4つの要素がある中で、”エージェンシー費用の発生”と”情報の非対称性の存在”に絞って、「コーポレートガバナンスの構築する目的」について講義をいただきました。

 情報に関する問題として、人々は将来の結果が分からない「不確実性」と人々が持っている情報は違っていて知らないことがある「情報の非対称性」によって、効率的な経済取引が阻害される諸問題が引き起こされている。

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(A)逆選択
 情報優位なプレイヤーと情報劣位なプレイヤーの間に、情報の非対称性が存在すれば、逆選択の問題が生じる。現実的には経営者と外部者(投資者など)が知りえる情報が対称だということはあり得ない。市場の発展を阻害しないように監督官庁や証券取引所が、このような情報の非対称性の解消に向けて取り組みをしている。

(B)モラルハザード
 なぜ株主がプリンシパルで経営者がエージェントなのか?という点から、株主と経営者の関係性に基づいて整理してみようと思う。

株主(投資者):株式会社の所有者となり、会社の残余財産請求者である
経営者:専門的な経営者として株主から選任され、経営を任せられている

 上記より、株主は依頼者本人(プリンシパル)として位置付けられ、経営者は株主の代理人(エージェント)と位置付けられるため、このような関係をプリンシパル・エージェント関係という。経営者が企業価値最大化に結び付かない意思決定をしても、株主が意思決定時点までに認識することは難しい。このように「情報の非対称性」によって、経営者が情報優位になっていること、私的利益を獲得する行動をすることを「モラルハザード」と呼んでいる。


 このように、経営者が株主のエージェントとして役割を適正に果たさない場合に、エージェンシー問題が発生し、この問題によって株主が受ける損失や対策として要する費用の合計を「エージェンシー費用」と呼ぶ。
 この問題は、創業期ではなく、不特定多数の投資家から資金調達をしなければならなくなった成長期の場合に、所有と経営が分離され、利益関係が一致しなくなる場合に生じる場合が多い。株主が投資リスクに見合ったリターンを得る仕組みを作るためには、経営者とのエージェンシー費用を最小化する必要があり、その解決策として注目されているのが「コーポレート・ガバナンス」ということだと認識している。


■コーポレート・ガバナンスの構築
 コーポレート・ガバナンスを構築する目的としては、「エージェンシー・コストを最小化」し、エージェンシー問題を解消することにあります。構築することによって、要因である➀モニタリング・コストの削減、②ボンディング・コストの削減、③その他コストの削減への対応が可能となり、コストを最小化していくためには、経営者と株主の間に生じる“情報の非対称性”の解消と“プリンシパル・エージェント問題”を解消させることが重要となります。

➀モニタリング・コストの削減
 株主と経営者の利害を一致させるため、株主とのコミュニケーションの場である株主総会の活用や、取締役会における社外取締役の導入によって、第三者における経営者の利己的な行動(モラルハザード)を監視する効果を期待します。しかし、このモニタリングだけでは取り除くには難しく、経営者報酬を株主利益と一致させるインセンティブ報酬制度(株価連動報酬・利益連動報酬など)を加えて導入することで、経営者が株主利益最大化行動を、自発的にとるように動機付けることができます。

②ボンディング・コストの削減
 経営者の株主に対する情報優位を減らし、適時迅速な情報公開に努めて情報を開示することが有効であり、役員報酬や取締役の能力に関する内容や、内部統制報告制度の活用、IR活動の推進によるディスクロージャーに注力していく必要があります。

 上記2つの要因に対して、コーポレート・ガバナンスを構築して解決することで、資本提供者が自らの利益を保護し、円滑に株式市場を発展させていく土台を提供することができる。また、エージェンシー・コストを最小化することによって、企業価値にも影響を与え、株価が適正に評価されるようになっていく市場を創り出すことが可能となります。

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合出場(通算115試合1得点)/関東サッカー/埼玉県サッカー
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

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