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日進月歩 ~Road to MBA~#77

2021/1/16:企業財務基礎⑬
 前回に引き続き土曜日は、ファイナンスといえばこの人と呼ばれる下川先生による企業財務基礎の13回目です。秋学期の最終講義ということでしたが、本日は「行動ファイナンス」について講義いただきました。

 市場は不完全な要素が多く存在し、考慮する必要があります。伝統的なファイナンス理論では「主体は合理的である」という前提に基づいて構築されていますが、伝統的ファイナンス理論で説明のつかない市場の特異現象は、「アノマリー」とも呼ばれ、理論的な証拠があるわけではないので、経験則ともいわれています。

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 また、そのアノマリーにおいて、市場は効率的でないことを”人間の非合理性”に着目して説明しようとしたのが、「行動ファイナンス」となります。
 #64でご説明した通り、市場の不完全要素には、➀税金の存在、②倒産リスクの存在、③エージェンシー費用の発生、④情報の非対称性の存在がありますが、さらに人間の不完全要素を考慮すると、⑤合理的でない主体が存在します。つまり、人間の非合理性(感情や心理的バイアス)が投資決定や資金調達に影響を与えるということであります。


■「ヒューリスティック」と「フレーミング」
 ヒューリスティックとは、人間が全ての情報に基づいて客観的に判断しようとするだけでなく、情報を認知した段階で何らかの簡便な解法をもって処理する性質があること(単純化バイアス・アンカリング・利用可能性バイアス・代表性バイアスなど)。フレーミングとは、全体最適でなく部分最適な決定で行動したり、後悔の感情を引き起こす行動は避け、プライドの感情をもたらす行動を求めたりすること(心理会計・後悔の回避・自信過剰・対比効果など)であります。
 このように人間は、「ヒューリスティック」と「フレーミング」による非合理的な認識と判断を肯定化する心理的特徴がある(情報の近道・精神的な近道・成功の近道を求める・・・)。


■プロスペクト理論
 プロスペクト(Prospect)とは、”期待”と”予想”という意味であり、人間の意思決定は必ずしも合理的でなく、感情や感覚による歪みを伴っている。大きくは、「価値の感じ方の歪み」と「確率の感じ方の歪み」によって表されることが多く、人は得をするよりも損する方が敏感に反応する、確率を客観的に評価できないなどが存在しています。

(例)確率加重関数による歪み
 人間は、確率〇〇%と示された確率を客観的に理解しているわけでなく、「40%」の表示によって高いと感じた場合は低く見積り、低いと感じた場合は高く見積もる傾向があり、これは心理的な歪みによるものである。


■全体のまとめ
 最後に、ここまでの内容をまとめた内容を簡単に以下に記載してみようと思います(Executibve Summary)。
※#15・22・27・32・39・49・54・59・64・69・73参照

ファイナンス理論の全体像
 ✓ ファイナンスを見る視点は3つ存在する(市場・企業・投資家)
シンプルでない資本市場
 ✓ 企業と投資家における「情報の非対称性」が市場を複雑化する
 ✓ 企業と投資家の間で発生する「エージェンシー問題」がある
企業価値への影響
 ✓ 経営者(エージェント)と投資家(プリンシパル)の関係性
 ✓ コーポレートガバナンスで「エージェンシー費用の最小化」が可能
 ✓ モニタリングやボンディングコストの最小化が企業価値に影響
行動ファイナンス
 ✓ 人間の感情や感覚による歪みにおいて、不合理な意思決定が起きる
 ✓ 人間の非合理性(ヒューリスティック・フレーミング・プロスペクト理論)により影響を与える

 まずは秋学期お疲れさまでした。これからも、M2で新しい学びを得ようと思っています。一緒に学ばせていただいた教授・受講生に感謝です。

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合出場(通算115試合1得点)/関東サッカー/埼玉県サッカー
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

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