日進月歩 ~Road to MBA~#101
2021/4/26:コーポレート・ストラテジー1③
春学期の月曜日は、組織学習理論やネットワーク理論を専門とされており、最近では組織学習の失敗要因、戦略的転換の促進要因を研究されている安田先生の講義で本日は3回目となります。
前回までに経営戦略の一通りとしての流れと「①経営理念(ミッション)」の内容を振り返った上で、本日は「③外部環境・内部環境」について講義をいただいた。この講義内では、『SCP理論』や『リソース・ベースト・ビュー』の考え方が基になっており、詳しく解説いただいた。
■「③外部環境・内部環境」に外部環境(マクロ環境)
マクロ環境における主なフレームワークとしては、「PESTEL」もしくは「PEST」などがあげられるが、外部環境から現在の企業や事業がおかれている状況を考えていくものとなる。説明例としてあげられていたのが「コンビニ業界」であったが、高齢化や世帯人員の減少において様々な取組み(=宅配サービス、単身向けの店舗)をしており、また、働き手としての人材不足も課題となっており、IoTなどのテクノロジーを活用した実証実験(=ローソンにおける無人営業の実証実験2店舗)なども取組みを進めているようである。外部環境の変化を分析した上で、コンビニ業界としての戦略が見える事例となっている。
Political(政治的):政権交代、独裁制、政治システムなど
Economical(経済的):GDP、貿易赤字・黒字、予算など
Social(社会的):価値観、ライフスタイル、転職とキャリアなど
Technological(技術的):製品イノベーション、新しい技術など
Environmental(環境的):再生可能エネルギーなど
Logal(法的):独占禁止法、税法、規制緩和など
このような外部環境を分析していく上で、どのような点に留意すべきであるか、グループでディスカッションをしながら考察していった。重要な要素であるのは、”重要度”・”地理的境界”・”数字化”・”要素間の繋がり”・”時間軸”といったものがあげられるが、特に「環境変化の振れ幅と時間の経過」はその中でも最も重要な要素となっている。
■「③外部環境・内部環境」における外部環境(業界分析)
業界分析における主なフレームワークとしては「5Forces」があり、競合の要素の中には、戦略グループといった考え方も存在する。どのような点に留意すべきであるかというディスカッションでは、客観的に見ること、どこが優先順位や重要度が高いかを考えること、PESTEL同様に時間軸を考えることがあげられていた。
5Forces:
(1)もともとの目的は、産業の行動的な収益性を分析するもの
(2)企業戦略(領域の選択)だと、「収益性の高い産業」を見極めるもの
(3)相対的に見てどうかという視点が重要
しかしながら、5Forcesでは混同してはいけない視点がある。それは「収益性の高い産業」については確認できる可能性はあるが、それが「自社が勝てる産業かどうか」という視点は持っていない、そのことを改めて利用する際には認識しておく必要がある。
また、競合分析をする場合に「立ち位置(グループ)」を把握するためによく用いられるフレームワークがあり、どこが自社の競合であるのか、どの戦略グループに優位性があり、新しい参入の可能性があるのかを紐解いていくことも重要になる。
5Forcesと同様に見るべき視点がある。この競合分析をする前には、分析した結果、何を得たいのか、その目的とするかは明確にしておくことが必要となる。分析したことで「競合との競争の激しさを知りたいのか」、それとも「競合との差別化の方法を知りたいのか」といった観点であり、ここまでの現状分析をした上で、どう意思決定するかである。競合他社との差別化や比較を実施はするが、今後の方向性を考えていくためには外部環境だけの認知では難しいのではないかとも感じている。
このように、5Forces分析や競争グループ分けをしたことで現状が整理されるが、フレームワークを利用するときはメリットとデメリット、注意点やよくある間違いも認識しておくべきである。
使い方:
・業界の定義を見極めることができ、定性的な理解でなく奥まで踏み込む
・参入する立場で考えるか、既に参入済の立場で考えるか
よくある間違い:
・産業の定義が曖昧(広すぎたり狭すぎたり・・・)
・要因だけが列挙され、重要な要因の重みづけが出来ていない
・業界のトレンドや変化(一時的や構造的)が混同している
・戦略的決定のために使っていない
■「③外部環境・内部環境」における内部環境(バリューチェーン・VRIO)
内部の活動を整理するための主なフレームワークとしては「バリューチェーン」や「VRIO」といったものであり、企業の経営資源(リソース)を分析していくものである。
バリューチェーンやVRIOに関しては、「如何に競争優位性のある経営資源を獲得していくのか」については論じられていないために限界もある。あくまでも現状分析として整理するには問題ないと感じているが、今後の事業を考えていく上での方法論を確認するものではないと考えている。最近では目まぐるしい環境変化が起きているため、その資源における「転用可能性」といった要素も非常に重要となっていると感じることができた。
■「③外部環境・内部環境」における内部環境(活動システム図)
これまで時間をかけて組み合わされたユニークなリソース(蓄積経緯の独自性)と、社会が複雑になってきたため(社会複雑性)ことで変化したリソースと、それが組み合わさって複雑になればなるほど模倣困難となる(因果曖昧性)ことが述べられた。企業としては、このポイントを構築することで差別化することができ、複数の主要な企業活動を組合わせていくことで、競争優位の源泉を高めていくことができる。このような活動を整合的に示したものが「活動システム図」となり、株式会社オープンハウスの戸建事業部の事例を読んで、改めてまとめました。
このように経営資源(リソース)を起点として、活動⇒差別化⇒顧客提供価値の一連の活動を示した図であり、複雑な要素が組み合わされることによって追求されていく事業イメージや顧客価値が生み出されるという流れを示したものであり、ここから考えても資源だけでどうにかできるものではないということが分かるだろう。内部資源を起点としてはいるが、その要素の中には外部環境の要素が必ずしも入っていることを感じている。
■SCPとRBVの考え方
これまで外部環境と内部環境における分析について論じてきたが、業界環境やポジショニングから戦略を考えていくことを『SCP』と呼ばれており、また、企業の経営資源(リソース)から戦略を考えていくことを『RBV』と呼ばれている(以下は「世界基準の経営理論(入山章栄著書)」を読んでの事前予習から抜粋)。
戦略とはどちらか片方でも機能はせず、両方を兼ね備えることで生み出されていくものだと改めて理論を通じて学ぶことができた。考え方としては、『SCP+RBV』であり、
戦略とは、
強みである経営資源に基づいて、特徴あるポジショニングを取ること
と位置付けられるであろう。次回は、「④企業戦略」ではなく次の階層である「⑤事業戦略」のフェーズとなり、コストリーダーシップや差別化、競争における理論について学んでいこうと思う。
平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
※https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%B2%A9%E5%AE%97
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科