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日進月歩 ~Road to MBA~#147

2021/7/10:ビジネス・オーガニゼーション4⑥
 土曜日は、経営組織論を専門とされている山中先生の講義をとっており、13回目の講義(春学期2の6回目の講義)となります。前講義(#142)では「組織のコンティンジェンシー要因(続編)」と「組織のコンフィギュレーション(基本的類型:概要)」について学ばせていただきましたが、本講義では「組織のコンフィギュレーション(基本的類型:特徴)」について講義いただきました。

(1)企業家的組織(単純構造)
(2)機械的組織(機械的官僚制)
(3)多角的組織(事業部制形態)
(4)専門職業的組織(専門職業的官僚制)
(5)革新的組織(アドホクラシー)
(6)伝道的組織
(7)政治的組織

■組織のコンフィギュレーション:(1)企業家的組織

 枢要部分としては「戦略尖」であり、「作業核」を引っ張ることで構成されるものとなっている。戦略尖は意思決定に対する統制を保持することによって引力を行使し、様々な調整は直接監督によって達成され、有機的な組織構造となっている(最高経営者を中心に調整)。

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(a)構造
 戦略的ビジョンへのニーズが最優先されてしまう場合は、より集権的なコンフィギュレーションをもたらしてしまう。また、他の構成より単純な構造となっていることで、その活動は形式化されていないのが特徴としてあらわされる(計画化や訓練、統合手段は最小限で構成)。

(b)環境条件とコンテクスト
 経営者(戦略尖)が単独で影響力を保持し得るために、環境も相対的に単純であることが重要となる。変動的な環境が柔軟な有機的構造を要求するため、適応可能な戦略を考察できる。構造としてよく見られるのは、小さい地域企業もしくは地域的ニッチ市場を対象としている「地方生産者」や強力なリーダーシップを発揮する「カリスマ的な経営をしている企業」となる。

(c)戦略形成過程
 戦略形成は経営者(戦略尖)の責任であり、直観的で気化器の積極果敢な深策を志向する。事業環境が単純のために焦点が明確化されるため、「個人」の知識で処理可能な範囲においては、極めて強力で有効的な構造となる。また、事業が成功を収めると成長して大規模化をもたらしていくため、形式的な計画立案やニーズ、他社の説得が必要になってくることで個人的性質を脅かす可能性も秘めている。

(d)企業家的組織に関する諸問題
 戦略の策定と業務遂行が経営者(戦略尖)に集中するため、日常的に業務問題に追われてしまうことが起きえてしまう。そうなってしまうと戦略を策定することができなかったり、見失って路頭に迷う企業が出てしまうリスクが懸念される。経営者個人に組織が依存してしまうリスクを持っていることもあげら、経営者が権力を持ちすぎてしまうことによる濫用も生じかねないのが問題としてあげられる。

令和元年経済センサス‐基礎調査(総務省:令和2年度の結果には未だ載っていなかったので、令和元年度の結果より抜粋)

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 企業家的組織になりうる事業者(戦略策定と戦略実行を同時に遂行している者)は日本の中で約6割も存在しているとされ、双方が集中する難しさがある。戦略を策定する時間をどう創出するかが、永遠の課題になる。


■組織のコンフィギュレーション:(2)機械的組織

 枢要部分としては「テクノ構造」であり、職能別部門制(コストセンター)の考え方に沿った組織構造となる。また、専門化の利点を追求することで、人員の集中的利用(規模の経済)があげられる。

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(a)構造
 枢要の「テクノ構造」は合理化(rationalize)しようと引力を行使し、業務プロセスの標準化を通じて目標を達成しようとする。集権化された官僚制となっているため、トップマネージャーのみが構造内で唯一のゼネラリストという構成となる(調整機能をもつ)。

(b)環境条件とコンテクスト
 単純で安定した環境に適合しており、さらに比較的大きく成熟した組織に構成が見られる。上位組織あるいは外部統制者から課された目的達成に向けて、合理化を追求することも特徴としてあげられ、環境適応の問題を考慮する必要がなくなるよう構成されている。目的のために合理化する場合に、閉鎖システム的形態となり、環境を統制して安定化させる。また、大量生産などを事業とする組織にも普及する傾向がある。
※「数量化可能」な目的を追求(システムとして組織の成長を促す)

(c)戦略形成過程
 戦略の編成と実行の間に明確な「分業」があると仮定されている。しかしながら、実は戦略的プログラミング(企業家のビジョンや目的を正当化して計画を立案する)に過ぎないため、戦略形成ではなく計画立案となってしまうことがあげられ、計画立案は機械的視点によって戦略的思考を阻害している。
 また、戦略策定をする場合に必要な情報や知識が経営者層において集約されなければならないが、明確な「分業」のために情報や知識が現場にあるという点が特徴としてあげられる。それによって、情報のフィルタリングやバイアスが介在してしまう問題が起こり、戦略形成に必要な「ソフト」な情報は容易に伝達されなかったり、定型化され整理された「ハード」な情報は時間を要する場合がある。

※戦略形成が戦略実施から明確に分離されるべきであるという「二分法(①戦略形成者が完全かつ不十分な情報を保有し、②戦略をしている期間において世界が不変もしくは予測可能な状態で変化する)」の条件が成立しなければ機能しないのも特徴となる。


(d)機械的組織に関する諸問題
 環境変化に対する適応問題として、変化に合わせた職能部門間を調整できるのは経営者層のみとなるため、意思決定までの時間がかかるうえに誤った意思決定が行われることがおきえてしまう。市場や技術などの環境変化が激しいような場合や多角化戦略が採用されるような場合は、調整の頻度が増大するために適合が難しい構造となる。
 また、専門化によって活動が限定されているため、異質な部門間における情報交換が行われにくくなっており、イノベーションが生み出されない。さらに部門目標を過度に重視してしまう傾向にあって、部門間のコンフリクトやセクショナリズムも横行してしまう(情報交換やコミュニケーションの阻害による相互調整の問題解決が行われない)。

■組織のコンフィギュレーション:(3)多角的組織

 枢要部分としては「中間ライン」であり、事業部別組織(プロフィットセンター)の考え方に沿った組織構造となる。

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(a)構造
 自律性を追求する「中間ライン」は、限定的かつ並行的な垂直的分権化を通じて、構造を分割統治しようと引力を行使する。市場を基準とした事業部群が本社を中心に連結されており、事業部は全ての職能部門を包括して組織全体に利益をあげる利益責任単位(利益管理の権限と責任:包括的意思決定権限)となる。経営環境の変化(特に製品・技術・地域の多様性)を分化した各事業部に対応させることで、企業として環境の多様性を単純化させる構造を持ち合わせている。
 また、本社は全社的視点から各事業部の調整と統制を行う(アウトプットの標準化によって監視する)こととし、全体的な企業戦略を編成して総合的かつ長期的な意思決定を行う(事業ポートフォリオの確立)ことによって、事業部間の資金配分を統制している(PPM)。

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(b)環境条件とコンテクスト
 市場の多様性に応じて、組織の成長が多角化や事業部化を促進する傾向がある(多角化によるリスク分散と成長機会の探索)。コングロマリット的多角化が多角的組織の最も純粋な形態となっており、大規模な企業や政府その他公共領域にも増えているのが現状である(マルチダイバーシティ)。

➀範囲の経済(バーニー):活動の共有/コア・コンピタンスの共有
②取引コスト理論(ウィリアムソン)
⇒多角化の経済価値は、「NPV(A+B+C)>NPV(A)+NPV(B)+NPV(C)」が成り立つ場合に存在している(多角化の類型に基づく)


(c)戦略形成過程
 本社が企業戦略を諸事業のポートフォリオとして経営するのに対し、事業部が個々の事業戦略を経営する(戦略的意思決定の垂直的分権化)のが特徴となる。さらに経営陣が業務負担から解放され、長期的な戦略的意思決定に専念することができるようになったことで、環境の変化に対する戦略を決定・行動することができ、且つ迅速かつ柔軟な対応が可能となる。

(d)多角的組織に関する諸問題
 事業部の大規模化や数の増加によって、本社が各事業部の活動を把握・評価できないことが起きてしまうことでバランスを崩し、各事業部が独走してしまうことが考えられる(企業全体の戦略転換や事業部の再定義が必要)。また、コングロマリット的多角化は資本の配分という点で、時として高コストで非効率にもなりえてしまう(淘汰されるべき事業部門にも投資をし続けてしまう)。
 さらに各事業部が独自に包括してしまっているため、設備や人員の重複がもたらされており、スケール・メリットが十分に発揮されない。且つ業績統制システム(アウトプットによる統制)によって、イノベーションを阻害してしまう懸念があったり、事業部間の情報交流などが行われにくい。

■組織のコンフィギュレーションの類型を学ぶ目的

 このように各組織における構造やタイプを理解することで、環境に合わせた特徴や多様化に向けた取組みに対する組織構造を理解することができる。理論と全く同じ状況の企業組織は無いと考えるが、課題や仮説を推察することが可能となり、論理的に導き出すことが可能となる。次回の講義では「組織のコンフィギュレーションにおける基本的類型の7パターンにおける特徴(構造的特徴、環境条件とコンテクスト、戦略形成過程、その組織構造における諸問題)」の残り(4)専門職業的組織~(7)政治的組織について考えていこうと思う。

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】春日井JFC/FC.FERVOR/中京大中京高校/駒澤大学/横河武蔵野FC(JFL)/エリースFC東京(関東)/ラスタサッカーファミリー(埼玉)
※U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合(通算115試合1得点)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%B2%A9%E5%AE%97
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

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