Chapter.3 「好みじゃない人」を愛するということ。(5547字)
「好みのタイプってどんなの?」
恋人いませんと言った後に続く茶番劇の、骨子となるセリフの一つである。私は長年、この質問が苦手であった。何しろ28年独り身だったのだ。片思いさえほとんどしたことがない。好みを断定するには蓄積データが少なすぎた。
もっとも、この世には「好きになった人がタイプです♡」というクソしゃらくさい慣用句が存在する。いずれ好きな男ができたら、その男のことを指し示し、堂々と「こちらをご参照ください」と言えばいいのだろう……。私はずっとそう思っていた。