京大ロー3年次後期ふりかえり

・京大ローのすべての課程が終了しました。しんどい日々でしたが、なんとか卒業することができてよかったです。

・先輩方の授業振り返りブログにすごく助けられたので、バトンを回すという意味で備忘録を残します。あくまでも一個人の私見ですので、話半分で読んでいただけると幸いです。選択科目を取る際の一助になれば…!

・2年次ふりかえりはこちらから、3年次前期ふりかえりはこちらからご覧ください。


3年次後期

・刑事訴訟実務の基礎(MRKM先生)

・検察官の先生による刑事手続&事実認定の授業でした。修習の先取りみたいな印象です。めちゃ優秀な検察官の心の内が聞けるというのもポイント高いです。

・授業は事前配布されたレジュメに沿って進められました。レジュメの分量がエグいので最初はビビりますが、条文を確認する程度の軽い設問が多いため、見た目ほど重くはなかった気がします。予習は伊藤塾の定石本・入門刑事手続法(三井・酒巻先生のやつ)を読めば十分だと思います。

・刑事手続分野は、刑事訴訟法を司法試験頻出論点〜かなり実務的な制度まで幅広く扱いました。勘所をコンパクトに網羅しているので刑訴法の復習にピッタリです。司法試験前に受けたかった。

・一方、事実認定分野はそこまで深掘りしない(注意すべきポイントを軽く指摘するくらい)ので、授業だけで課題・期末試験を乗り切るのはかなり厳しい気がします。検察終局処分起案の考え方の該当部分を読みましょう(ほぼ必須レベル)。

・ソクは席順で、設問の答えを示せば解放される優しめのソクでした。パスも許されるので必要以上にビビらなくても大丈夫です。

・試験は事実認定の大問と刑訴法の大問という形式でここ数年変わっていません。事実認定部分は検察終局処分起案の考え方を読んでいれば乗り切れるのではないでしょうか。刑訴法部分はレジュメの自習課題部分から出ることが多い気がするので、ヤマは張りやすかったです。

・民事執行・保全法(YMD先生・選択科目)

・科目名のとおり、民事執行・保全法を全範囲さらっていく授業でした。先輩のブログを見て履修を決めたのですが、修習の事前課題を解く際にメッッッチャ役立ったのですごくおすすめです。

・授業は先生お手製のレジュメに沿って進められます。要点を箇条書きした簡素なレジュメなので、実際は教科書を読み込むことになると思います。教科書指定されている有斐閣アルマは試験との関係でも必要十分だと思います。「アルマ合わないな…」って人は平野先生の「実践民事執行法民事保全法」がおすすめです。平野先生の本は一見すると分厚いですが、発展的内容や私見、実務に関するコラム・書式例を除くと300ページ行かないくらいなので通読も容易です。

・民事執行保全に関する問題集は(私の知る限りでは)見当たらなかったため、試験対策のアウトプットは過去問演習or平野本のケース部分に限られます。また、先輩のブログに解答例と一言解説が載っていたのにもかなり助けられました。

・試験は大問が3つ出題される形式で、とても難しかったです。大問2.5個吹っ飛ばしてしまったのですが、中の中の成績がきて驚きました。易しめの問題が毎年出題されており、この救済問題を答えられれば単位は来るのではないでしょうか。目安としては、レジュメを読んでみて、制度の概観や論点を「あ〜あのことね」ってすぐ想起できるのであれば余裕でA、6割くらいできるならBの中位は取れるといった印象です。

・現代法理論(KNDU先生・選択科目)

・「現代法哲学講義」(井上達夫編)を用いて、法的概念を根っこから考え直す授業でした。扱う内容のクセがかなり強いので、教科書を立ち読みしたりレジュメを見せてもらってから履修を決めたほうが良いと感じます。私は結構好きでした。

・授業は先生お手製のレジュメに沿って進められ、授業後に一定回数リアクションペーパー(教科書の議論への質問・批判等を書くやつで、平常点に関係する)を提出することになります。内容によっては、授業中に先生が取り上げてくださることもあります。1回の授業で教科書3,40ページくらいを扱うので、そこまで負担も重くなかったです。

・レジュメは、教科書の議論が簡潔にわかりやすくまとまっていて、予習段階で意味がわからなかったこともだいたい解決します。試験対策としてはこのレジュメさえあれば十分ではないでしょうか。

・試験は、授業で扱ったテーマから3,4個が指定され、そのテーマについての例文について法哲学の観点から文章を書くものでした。学部の一般教養の期末試験を思い出しました。レジュメにまとめてあった議論や用語をいっぱい詰め込んで作文したら中の中の成績が来ました。興味を持てたテーマが出題されるかによって点数はかなり上下するといった印象です、祈りましょう。

・地方自治体における政策形成(SG先生・選択科目)

・地方自治に関する議題について、その場でリサーチしてグループディスカッションをしよう!って感じの授業でした。SG先生は「ローで授業を持つのは最初で最後」という趣旨のことをおっしゃっていましたが、マジのマジで勉強になったので、もし開講されていれば受講を強く強くおすすめします。もし当局の方が見ていたら前向きにご検討いただけると嬉しいです。

・「図書館はベストセラーを多く置くべきか?」「マイナポータルの新しい活用方法を考えよう!」みたいなテーマが授業の最初に発表され、班ごとでリサーチ(ググる)して答えをまとめて発表する、グループ間での議論&先生による講評という形式で進行します。みんなして明後日の方向へ突き進むというグループディスカッション特有の現象が度々発生します。ふつうの就活生ってこんな難しいことやってるんだな〜と実感しました。皆で答えのない問題に取り組んでまとめるというのは貴重な経験になりました。

・あと、「法律で何でも解決できると思いがち」という(私を含めた)弊ロー生の悪い癖(職業病?)に気づくこともできました。どのテーマであっても六法やe-gov法令検索を開くところから始めるのはよくないですね…。ロー生活で溜まった毒気を適度に抜いて視野を広げられたという点でも勉強になりました。

・試験はなく平常点評価で、授業後にリアクションペーパーを5回提出すれば足ります。負担も軽いうえ、GDの経験&頭でっかちから脱却するきっかけを得られるおすすめの授業です。

・企業法務2(OD先生・選択科目)

・長年企業法務に携わっている弁護士の先生が、企業法務で扱う法分野について講義する授業でした。「企業法務で何をするのかを知ろう!あと実務上よく扱う法分野についてザッと学ぼう!」というコンセプトなのだと個人的には理解しました。

・授業は先生お手製のレジュメに沿って進められます。記載された事項について深掘りしたり、先生の実体験を交えて解説したりという形の講義でした。適宜レジュメに加筆していけば、いい感じのまとめノートができあがります。

・試験は、授業で扱ったテーマがおおまかに3つ指定され、そこから大問が出題される形式でした。各テーマについて基本書等を読み込むことは現実的ではないので、書き込みをしたレジュメの読み込みで挑むことになります。授業で出てきた用語や議論を用いて作文したら中の中の成績は来るので安心してください。

・医療訴訟の現状と課題(UED先生・選択科目)

・裁判官の先生が、民事訴訟の制度や不法行為法の解説をした上で、医療訴訟特有の問題点についても解説する授業でした。民事訴訟・不法行為の良い復習になるので、司法試験との関係でも役立つと感じました。

・授業は先生お手製のレジュメに沿って進められ、設問部分については席順のソクが入ります。医事法判例百選を読んでおけば予習は十分ではないでしょうか。先生がちょくちょく裁判官の本音を話してくださるのがとても新鮮で興味深かったです。

・年末年始あたりに、実際の事件記録を用いた記録演習(民事の事実認定をするやつ)が実施されます。期末試験も同様の事実認定問題が出題されるので、先輩ノート等に頼らず自力で真面目に取り組むことをおすすめします。間接事実の摘示の程度や推認過程等の考え方は、修習でもめちゃ役立ちます。

・試験は事実認定問題x2・民事訴訟or医療訴訟の手続問題x1といった形式でした。前者は記録演習をしっかりやって復習すれば、後者はレジュメの該当部分(主に授業後半)を読み込めば十分Aも取れると思います。復習に全力を尽くしましょう。

・ヨーロッパにおける外交と国家主権(KRT先生・選択科目)

・キッシンジャー「外交(上)」を主な題材として、近代以降のヨーロッパにおける主権概念・外交を学ぶ授業でした(今話題のウクライナ問題あたりまで扱います)。大学受験レベルの世界史知識があれば楽についていけると思いますし、世界史ミリしらでも意外となんとかなります(私は日本史・倫理政治経済選択でしたがなんとかなりました)。

・キッシンジャー「外交(上)」等について1人1章ずつレジュメを作成して発表→先生が解説して深掘りしていくという形式の授業でした。先生の話がシンプルに面白く、予習で得た知識が次々とつながっていくので楽しかったです。発表担当者への問いかけやソクも無いのでビビらなくても大丈夫というのもポイント高いです。また、中間・期末に1回ずつまとめ回があり、それまでに扱った内容をギュッと凝縮したレジュメも配布されます。

・世界史ミリしら勢の方々は、中公から出ている「世界の歴史」シリーズや山川世界史を事前に読んでおくと、授業の理解度が段違いに上がるのでおすすめです。なんとなくの流れが頭に入っていれば前提知識としては十分ではないでしょうか(ウエストファリア体制、ウィーン体制、プラハの春等の単語の意味が分かっていれば全然OK)。

・試験は「何かしらは書ける形式の問題を出す」との予告通り、自分の発表回に引きつけて書くことのできる問題が出ました。自分の発表回とまとめ回をしっかり復習すれば中の中くらいの成績は来る気がします。

・民事裁判演習(HND先生・選択科目)

・2年次の「民事訴訟実務の基礎」を民訴寄りにして、課題がない代わりに模擬裁判が実施されるような授業で、進め方等もほぼ同じでした。そのため、民事訴訟実務の基礎の担当先生がいい感じだったのであれば、その先生の授業を取ることをおすすめします。個人的には必修にすべき授業だと感じました(とにかく民事訴訟手続に詳しくなれます)。

・授業レジュメは「民事訴訟第一審手続の解説」に沿って作成されているっぽく、設問の答えはほとんど書いてありました。模擬裁判対策には要件事実論30講が役立ちました。

・HND先生担当の場合、レジュメ記載の問題に加えて関連的な問題について即興ソクが入ります。HND先生はソクがメチャクチャ上手く、個々の学生がギリギリ答えられそうなソクが次々に入り理解度を引き上げてくださいます(勘違いしていた点を矯正してくださったことが何度もありました)。実務上の体験談も多く話してくださるので、とても刺激的で面白かったです。

・試験は要件事実、民事実務、事実認定、民訴手続とかなり幅広い範囲から出題されました。大問半分くらい吹っ飛ばしましたが中の上くらいの成績が降ってきたので、採点はかなり甘めっぽくそこまでビビらずとも大丈夫です。

おわりに

・3年次後期の内容としては以上となります。選択科目の履修は無限に組み合わせがあるので、同級生や先輩等から情報を集めてかっこいい時間割表を組んでください。

・悪いことは言わないので、要卒単位ギリギリでの履修は避けておいたほうが良いです(プラス1,2科目は取っておきましょう)。冗談抜きで胃がしにます。平常点科目を取る等して、試験の負担を軽くするのもおすすめです。

・その他、聞きたいこと等あれば、コメント欄やTwitterのDM等で送っていただければ、対応できる範囲でお答えいたします。生き延びてください!!

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