2023/1/15 読 うつ病とHbA1c値の相関

【読んだ論文】

The bidirectional longitudinal association between depressive symptoms and HbA1c: A systematic review and meta-analysis

Magdalena Beran et al.

Diabet Med. 2022 Feb;39(2):e14671.

(DOI:10.1111/dme.14671. Epub 2021 Sep 5.)

【研究デザイン】

meta-analysis (Up to ) Sep. 2020

【内容】

・うつ病とHbA1c値、およびHbA1c値とうつ病の間の縦断的な関連を評価した論文。

抑うつ症状とHbA1c値との間にわずかではあるが、有意な関連を見出されている。

・うつ病の悪化とHbA1cレベルの上昇との間には関連を認めた。

・うつ病の症状が悪化すると、糖尿病の自己管理ができなくなる。診察の予約と食事の自己管理ができなくなるのが最も大きい。抑うつ気分は運動不足や不健康な食生活を引き起こす可能性がある。

・抗うつ薬治療を受けている人は、受けていない人に比べて体重増加のリスクが5%高いことが示されている。

・インスリン治療がしっかりできていれば、血糖コントロールはよくなると予想されている。

・HbA1cが高いと、うつ病のリスクが高くなると認められた。

⇄高血糖や高インスリン血症がうつ病の発症に関係する可能性は低いと結論づけた先行するメタアナリシスとは相反する

・血漿中のグルコース濃度が高い状態が長く続くと、神経細胞内のグルコース濃度に直接影響を与える。

→活性酸素の過剰発生を誘発し、酸化ストレスを増やし、神経細胞のアポトーシスにつながる可能性がある。

・高血糖はコルチゾールレベルの上昇につながる可能性があり、これがうつ病の発症と関連があるとされている。

・ほかに、微小な炎症、血清脳由来神経栄養因子の減少、気分調節に関与する脳領域の血管損傷などが考えられる。

・血糖値が高いということにショックを受けたり、血糖値を下げることに失敗したことで抑うつ状態になることもありうる。

・重要なことは、HbA1c値とうつ病の両方が糖尿病の苦痛(糖尿病を患っていることによる否定的な行動や感情的な反応)と関連していることである。

・この研究では、1型糖尿病と2型糖尿病を区別していない。

【要点・結論】

HbA1c値の改善はうつ病の転帰に好ましい影響を与え、その逆もまたあり得る。

しっかりとDMの治療を行うことが重要であり、時に抗うつ薬を変更することも必要になるだろう。

抑うつ状態とHbA1c値不良には、運動不足や炎症などの同じ先行因子がある可能性がある。したがって、うつ病とHbA1cの最適値を同時に予防するために、これらの先行因子をターゲットとする予防の取り組みが必要と考えられる。

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