2023/1/10読 ガバペンチン・プレガバリンと双極性障害、不安症、不眠症

【読んだ論文】

Gabapentin and pregabalin in bipolar disorder, anxiety states, and insomnia: Systematic review, meta-analysis, and rationale

James S. W. Hong et al.

Molecular Psychiatry (2022) 27:1339–1349;

(DOI:10.1038/s41380-021-01386-6)

【研究デザイン】

meta-analysis (Up to Aug.

2020)

【内容】

ガバペンチンやプレガバリンは神経障害性疼痛やけいれんに使用されるが、GABAとグルタミン酸の調節作用から眠気や抗不安作用も有するとされている。

(電位依存性カルシウムチャネルのα2δリガンドとして結合し、神経細胞内へのカルシウム流入を抑制し、グルタミン酸などの神経伝達物質の放出を妨げる。これにより、疼痛信号の中枢神経系への伝達を抑制し、疼痛を緩和する。)

この論文では、双極性障害、不安症、不眠症に対して使用することの是非について調査している。

①双極性障害

・急性期

標準治療に加えて追加治療としてガバペンチンを投与した際に、抑うつ症状の軽減が得られた。

抗躁作用はなく、むしろプラセボ群の方が有意に改善した。

・慢性期/維持

寛解状態にある患者において、標準治療に加えてガバペンチンを投与すると、臨床全般印象尺度(CGI-BP)が有意に改善した。

②不安障害

・有意な改善が得られた。どちらの薬剤も用量依存的な効果が示唆されている。

・ガバペンチンでは、有意な急性抗不安作用には少なくとも600mg/日以上(望ましいのは900mg/日以上)が必要と考えられた。

保険上は神経障害性疼痛に対して、「初日1日量600mg、2日目1日量1200mgをそれぞれ3回に分割経口投与する。 3日目以降は、維持量として1日量1200mg~1800mgを3回に分割経口投与」となっている。

・プレガバリンは200-600mgでの使用が望ましいと考えられた。

こちらも保険上は神経障害性疼痛に対して、「1日150mgを1日2回に分けて経口投与し、その後1週間以上かけて1日用量として300mgまで漸増する。 なお、適宜増減するが、1日最高用量は600mgを超えないこと」となっている。

③不眠症

・睡眠の質および総睡眠時間に関する有益性は限定的である。

→不安障害や慢性疼痛で眠れない患者には有効だが、そうでない人には効果はなさそう。

<その他>

・慢性疼痛による不安障害・不眠症も解析対象に含まれている。

→「痛みが無くなったから精神症状が良くなった人」をカウントしてしまっている?

【要点・結論】

不安障害にはガバペンチン・プレガバリンが有効であると考えられる。

慢性疼痛(腰痛など)を併存する症例や、SSRIを使用しにくい患者では試してみる価値が多いにあると感じた。

不眠症患者では、不安や慢性疼痛のせいで眠れない場合にはガバペンチン・プレガバリンの投与を検討するが、そうでなければ敢えて使用する意義はないと感じた。

双極性障害では、不安が有意に出るような抑うつ主体の患者に併用してもよいかもしれない。

ただし保険上の観点からは、慢性疼痛を併存しない患者では、標準治療をいくつか試した上でどうしようもない場合のみ使用することになるだろう。

(慢性疼痛があれば躁に気をつけて標準治療に上乗せしてみてもよいかもしれない。)

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