2024/3/31 読 治療抵抗性うつ病への抗精神病薬を用いた増強療法

【読んだ論文】

Pharmacotherapies for Treatment-Resistant Depression: How Antipsychotics Fit in the Rapidly Evolving Therapeutic Landscape

Manish K Jha et al.

Am J Psychiatry. 2023.

(DOI:10.1176/appi.ajp.20230025.)

【研究デザイン】

Review (Up to )

【内容】

・大うつ病性障害(MDD)の成人の3人に1人は、抗うつ薬の複 数回の連続投与後、臨床的に有意な改善を経験せず、治療抵抗性うつ病(TRD)である。

・TRDの存在は、MDDに関連する 罹患率と過剰死亡率に寄与し、医療費の大幅な増加と関連している。

・TRDの定義が統一されていないため、本報告では、1つ以上の抗うつ薬コースに対する不十分な反応を考 慮し、米国で承認されている非定型抗精神病薬に焦点を当て、幅広いアプローチをとっている。

・うつ病の治療薬として、FDAからはアリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、Cariprazine、徐放性クエチアピン、オランザピンとFluoxetineの併用療法が承認されている。

・複数の急性期研究により、これらの薬剤の抑うつ症状改善効果が証明されているが、臨床的に意味のある改善(寛解)は依然として限定的である。

・アリピプラゾールのランダム化比較試験(RCT)では、8週間の抗うつ薬コースで十分な効果が得られなかった後にアリピプラゾール(2~20mg/日)を6週間追加投与した場合(36-38)、プラセボよりも高い寛解率が得られた。徐放性ベンラファキシンによる12週間の治療で寛解に至らなかった高齢患者を対象とした研究においても、アリピプラゾール(2〜15mg/日)による増強はプラセボ(29%)と比較して高い寛解率(44%)と関連していた。

・初期のRCTでは、8週間の抗うつ薬治療で十分な効果が得られなかった後に、ブレクスピプラゾールを2mg/日または3mg/日併用することで、抑うつ症状の有意な軽減が認められたが、1mg/日では認められなかった。

・ブレクスピプラゾールの併用による寛解率(1mg/日、2mg/日、3mg/日ではプラセボ(9.0%、10.8%)と差がなく、NNTは17~31であった。

・その後の急性期RCTでは、抑うつ症状の減少は同程度であったが、寛解率に差はなかった(NNTは28と42)。より長期(24週間)の研究では、ブレクスピプラゾールの併用はプラセボ(3.4%)と比較して、改善率は同程度であったが、有害事象関連の離脱率(6.3%)は高かった。

・徐放性クエチアピンの300mg/日の用量はプラセボよりもうつ病の重症度を減少させるのに有効であり、150mg/日の用量は1つの研究でより有効であったが、もう1つの研究では有効ではなかった。

・プール解析では、寛解率はプラセボの32.0%に対し、徐放性クエチアピン150mg/日で41.8%(NNT=11)、300mg/日で46.3%(NNT=7)であった。

・副作用による離脱率はプラセボ(1.9%)と比較して徐放性クエチアピン(150mg/日で8.9%、300mg/日で15.4%)で高かった。

・副作用として、体重増加、代謝機能障害、錐体外路症状、遅発性ジスキネジアなどがみられた。

・アカシジアはMDD患者の25%で報告され、プラセボでは4%であった。

・非精神病性MDD患者を対象とした多施設共同VHA試験では、アカシジアはアリピプラゾール増強療法を受けた患者の14.9%で報告され、ブレクスピプラゾールの高用量はアカシジアの高率と関連していた(プラセボで2%、ブレクスピプラゾール1、2、3mg/日でそれぞれ4%、7%、14%)。

・遅発性ジスキネジアの発生率は非定型抗精神病薬の方が第一世代抗精神病薬(例えば、ハロペリドールやクロルプロマジン)よりも低いが、これらの薬物による遅発性ジスキネジアの発生率は年率換算で1.7%から2.9%であり、長期に使用する場合には継続的な監視が必要である。

・ここ数年、抗うつ薬治療の急速な進歩により、速効性抗うつ薬(例:esketamine鼻スプレー、デキストロメトルファン・bupropion併用)、および、Zuranolone、Psilocybinなどが承認されている。

・非定型抗精神病薬の使用が古い抗うつ薬やめったに処方されない抗 うつ薬(三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害剤など )の使用を減らすかは不明である。

【要点・結論】

・非定型抗精神病薬を使用する場合、臨床医と患者は、予想される副作用、忍容性、コスト、実現可能 性に基づいて治療法の選択をパーソナライズし、情報共有の上で意思決定を行うことが望ましい。

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