2023/1/9読 更年期障害と統合失調症、双極性障害の関連

【読んだ論文】

Menopause in women with schizophrenia, schizoaffective disorder and bipolar disorder

Anna Szeliga et al.

Maturitas

Volume 152, October 2021, Pages 57-62

(DOI:10.1016/j.maturitas.2021.07.003)

【研究デザイン】

Meta-Analysis (Up to Feb. 2021)

【内容】

更年期障害と統合失調症、双極性障害の関連を調べた論文。

①統合失調症

・統合失調症の精神症状は閉経が近づくと増悪する

・向精神薬は更年期障害の症状を増悪させることがある

・ホルモン補充療法(HRT)は精神症状の改善(PANSSスコア)だけでなく、認知機能や運動機能も改善させ、陰性症状の進行抑制作用もある

←エストロゲンは、ドーパミン神経伝達を阻害し、セロトニン活性に影響を与えるなど、非定型抗精神病薬の作用と類似しているため。また、エストロゲンは神経細胞の再生を促進し、神経細胞死のメカニズムを阻害するため。

②双極性障害

・SERMは双極性障害にも有効。タモキシフェンとリチウムの併用は、躁症状の迅速な軽減においてリチウム単独より優れていることが試験で示されている。

←プロテインキナーゼCはドーパミンの放出を促進し、その結果、躁病の症状を助長する。SERMはこれを阻害するため。

・酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)を標準治療に併用すると、躁症状がより大きく、迅速に改善すると提案がある。

・HRTは、抗うつ効果が十分にしめされている。

【要点・結論】

統合失調症や双極性障害の患者が更年期障害を併存する場合、ホルモン補充療法(HRT)や選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)が導入できる場合にはこれらが有効だろう。

【コメント】
更年期障害の治療をすることで精神病症状が増悪してしまうことや、精神病の治療をすることで更年期障害が増悪する可能性があるか(治療が相反対立するかどうか)を自分は知りたかったから読んだ論文。

基本的には問題なく、むしろ更年期障害を併せて治療をしたほうがいいということであった。

抗精神病薬以外の薬(ベンゾとかVPAとか)は更年期障害を悪化させる可能性があるので、むやみな多剤併用はやめた方がいいと思った。

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