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業務が"積み上がる"とはどういうことか?

先日、社内で "業務の積み上げ" というテーマが話題になりました。

その話の趣旨は、「振り返りを行い業務を適切に積み上げましょう。」というもので、積み上げるべきもの、積み上げるべきでないものの例として、下記のようなものが挙がっていました。

  • 積み上げるべきもの

    • 社内でやるべき付加価値の高い業務

    • それを遂行した社員の能力と評価や給料

    • 業務の本格導入を判断するためのテスト

    • コミュニケーションコストを下げる仕組み

    • 正確な情報を低コストでやり取りする仕組み

    • 手順が決まっている業務の正確なマニュアル

  • 積み上げるべきではないもの

    • 工数対効果や目的が不明確な業務

    • 振り返りが行われていない過去の挑戦

    • 他者が再現できない業務フローや知識

    • 参加者や頻度が過度になっている会議

    • 置き場所やフォーマットが決まっていない情報

業務の効率化やナレッジ管理を進める僕として、上記は非常に賛同できるもので、もっとこの認識を広げていきたいとも思いました。

一方で、ここで言われている"積み上げ"という言葉をより抽象化すると、どのような概念なのか、それを整理し一般化してみたくもなりました。

・・

ということで、自分なりに整理した結果、"積み上げ"には下記の6つの要素が必要なのではないか?という結論に至りました。

  1. 基礎

  2. 構成要素

  3. 配置

  4. 統合

  5. 環境

  6. 目的

図で表すと下記のようなイメージです。

"積み上げ"を実現する6つの要素


以下、業務の適切な"積み上げ"を実現するために必要となる要素それぞれについて、僕なりの解釈を加えたいと思います。



要素①:基礎

何かが "積み上がる" という場合、前提として積み上がるための場所が必要になります。それが基礎です。

基礎のないところに建物は建たないように、基礎のない場所に何かを積み上げるということはできません。

建物の基礎を考えると、必要な要素として基礎の堅牢さ平坦性が考えられます。

基礎の固さ

これは、会社で言うところの安定的な財務状況効果的なリーダーシップにあたります。
赤字の財務状況では長く業務が続けられませんし、リーダーシップがないと積み上げるエンジンになりません。

基礎の固さが足りない状態

平坦性

これは、組織内のコミュニケーション障壁の低さやスムーズなコミュニケーションのための組織文化の比喩にあたります。
傾いた基礎の上に建った建物が安定しないように、コミュニケーションがスムーズに取れる環境でないと、積み上げた業務はすぐに崩れてしまいます。

傾いた基礎

要素②:構成要素

当然ですが、何かを積み上げるということは、積み上げるものそのものが必要になります。
積み上げるものその一つ一つが構成要素です。
構成要素がなければ、積み上げることができません。

業務に置き換えると、「構成要素」=「業務そのもの」 です。

しかし、積み上げを実現するためには、構成要素が存在するだけでなく、その形が均一である必要があります。

この均一性が構成要素の条件でもあるのではないでしょうか。

形の違う構成要素を組み合わせようとしてもうまくいかないようにきません。積み上げることができたとしても、それは再現性がないものになるためです。

構成要素に均一性がない状態

では、具体的に業務において均一性がない状態とはどのようなことか。

それは、メンバーのスキルセット・知識・経験・業務の負担などが偏っている状態です。
もちろん、多少の偏りがあることは当然ですし、多様性の面で必要なことであります。
しかし、あまりにもその偏りが行き過ぎると、適切に業務が積み上がることは難しいでしょう。

また、適切に振り返りがなされていない状態も均一性が担保されないケースです。
業務に対し適切にPDCAを回して、振り返りを行わないと、どこまでがチームの共通認識になっているのか?何が正しくて何が悪いのか?など認識が曖昧なままになってしまいます。
これも、業務の均一性がない状態と言えます。

要素③:配置

ものが "積み上がる" ということは、適切にバランスが保たれているということです。バランスを保つために必要な要素の一つが配置です。

配置が不適切であると、バランスが崩れ、積み上げができません。

配置が不安定な状態

業務における配置とは、リソース配分タスクの割当て、組織としての業務への重点の置き方といったものがそれらに該当します。

たとえば、エンジニアリングが得意なメンバーに営業を任せても、うまくは行かないでしょう。(逆もまた然り)

各メンバーが最も得意とする分野に適切に業務を配置することで、適切に業務を積み上げることが可能となります。

要素④:統合

4つ目の要素は「統合」です。
これは、いわば業務と業務の接着剤のようなものです。
いくらきれいにレンガを積み上げたとしても、その接着方法が弱いと、少し風が吹いただけで崩れてしまう可能性があります。

そのため、積み上げを実現するためには、どのように構成要素同士を結びつけるかという視点はとても重要になります。

積み上げにおける統合は、接合方法構造に分けられます。

業務(=構成要素)間の連携やプロセスが仕組み化されており、スムーズに行く状態が、強い接合がされている状態です。

業務同士の接合が強い状態

また、マニュアルにより業務の再現性が高い状態や、属人性が排除されている状態は、構造的に業務の積み上がりが担保されている状態だと言えそうです。

構造的に業務が崩れにくい状態


要素⑤:環境

少し例外的ですが、積み上がるために必要な要素として、環境も考えられます。
いくら基礎が固くてしっかりしていたとしても、毎日台風や地震が発生するような環境では、基礎から崩れ落ちる可能性が高くなりますし、そのメンテナンスも容易ではありません。

このような環境はやはり積み上げには向いていないと言えます。

激しい外部環境で業務が安定しない状態

企業にとって、競争の激しい環境である場合、いくらきれいに業務を積み上げる環境が整っていたとしても、その積み上げ自体の価値が低くなってしまいます。


要素⑥:目的

最後に "積み上げ" に必要な要素として目的を挙げます。

たとえば、山登りには頂上を目指す「目的」があります。
この目的があることで、登山者は必要な準備をし、どのルートを選ぶか、どのように体力を配分するかなど、効率的で合理的な計画を立てることができます。

また、困難に直面した時にも、目的があればそれを達成するための動機付けになり、前進し続ける力を与えてくれます。

業務においてもこれと同じです。
明確な「目的」があることで、仕事の方向性が定まり、どのようなタスクが重要であるか、どのように時間を割り当てるべきかが明確になります。

また、困難や挫折に直面したとき、その目的を思い出すことで、乗り越えるためのモチベーションを維持できます。

目的がギャップを生み、それがモチベーションになる

まとめ

以上のように、業務が積み上がるためには、これらの6つの要素が必要であるということが見えてきました。

ちなみに、最初に提示した、社内で挙がった「積み上げるべきではないもの」は、どの要素が不足していたのかを示すと下記のようになりそうです。

  • 積み上げるべきではないもの

    • 工数対効果や目的が不明確な業務 

      •  →「⑥:目的」の不足 

    • 振り返りが行われていない過去の挑戦

      •  →「②:構成要素」の均一性の不足

    • 他者が再現できない業務フローや知識

      •  →「②:構成要素」「④:統合」の不足

    • 参加者や頻度が過度になっている会議

      •  →「②:構成要素」の均一性(主に振り返り)の不足

    • 置き場所やフォーマットが決まっていない情報

      •  →「④:統合」の不足

まだ個人的な仮説段階ではあり、完全に分類できるわけではありませんが、業務の積み上げに必要な要素を分解してみることで、解像度が上がりました。

日々、業務改善を担当している方、一般業務を担当している方にとっても、少し解像度をあげて業務を見てみることで、ご自身の業務がしっかり積み上がっているのかどうか確認する機会になるのではないでしょうか?

僕自身、今後もこの構造を意識しつつ、業務改善やナレッジ管理の推進に邁進したいと思います。


株式会社エイチームコマーステックにて、業務効率化などを進めています。少しずつ発信を増やしていきたいと思っているので、興味ある方はXのフォローなどもお願いします。


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