【朗読台本】とある結末(5分程度/ファンタジー/切ない)
使用方法
作品のどこかに
”@RiRiO_358”
”おかリナ▽Works”
”岡本莉奈”
いずれかのクレジット表記をして頂く。(文字でも声でもキャプションでも可)公序良俗に反するコンテンツでは使用しない。
自作発言をしない。
商用の場合は一度ご相談ください。
性別を変えて読んでいただいても大丈夫です!(固有名詞なども変更OK)
上記を守っていただければどなたでも使用可能です!エンジョイ朗読!
もし使用報告頂けましたら作品をこちらでもご紹介させて頂きます!(もちろん作者様の許可のもと)見たい、聴きたい。
ジャンル
ファンタジー/切ない
長さ
5分程度
想定人数
1人
そうして世界は平和になった。
悪逆非道の王は倒れ、この瞬間、世に平穏が訪れたのだ。
悪魔と呼ばれた、最愛のあなたが崩れ落ちて。
あなたを貫いたナイフを引き抜き、緩やかに力を失うその身が床へと横たわる。
その、秒すら刻まない動作が永遠に目に焼き付いて離れない。
何と、艶やかなのだろう。
私だけをその世界に入れてくれた瞳が、今も変わらずこの身に注がれている。
何度も愛を紡いでくれた唇が、音もなく私の名を形取る。
いつの間にか自分のもののように違和感なく、私に触れてくれた手がこちらへ伸びる。
私は、傍らに座り込みその手を取った。
温かい。何も変わらない優しい柔らかさ。
たとえこの手が幾百万の命を奪ったのだとしても、私のよく知った手に変わりはない。
あなたはきっと、私がこうする事を知っていたのでしょう。
早朝の月の様な顔は穏やかだった。
あなたが私を良く知っていたように、私もあなたが立ち止まる唯一の方法を知っていた。
ただ、それだけの結末なのだ。
いつかあなたは言った。
私と生きる世界は美しくあって欲しいと。
そして、あなたは君臨した。
世界の恐るべき敵。悪逆の王として。
それでも、それでも。
この心が変わることなどなかった。今この瞬間でさえ、あなたしか私の世界には居ない。
これは悲劇だと、人は言うのかも知れない。
悲哀の英雄などと、言われるのかも知れない。
けれど、そのどちらでもない。
あなたの表情が、私たちが通じ合ったことを証明している。
私の選んだ結末をあなたは肯定し、私もあなたが肯定することを知っていた。
ただ、それだけ。
数多の約束を破って、あなたは今逝こうとしている。
一つの繋がりを守って、私の側に居てくれている。
どうしてか、私はあなたと歩いた花吹雪舞う並木道を思い出していた。
こうして手を繋いで笑い合っていたからだろうか。注いだ光が温かく柔らかで、美しい世界とはこの事なのだと思った。
今また、あなたと二人だけのこの瞬間。
言葉もない、ただ離れゆく互いの命の岸辺を見つめ合う事。それがまた、あの時のように美しいものに感じた。
虚ろになったあなたの目が少し不安げな幼子のように私を探す。
冷たくなったその指先を握り、あやすように包んだ。
どこにも行かない、と。
途端、あなたの目元と口元が緩む。その唇から、あなたである最期の言葉が紡がれた。
私の名前を音にして、あなたは微笑む。
何を考える必要もなく、まるで目覚めのまばたきのように、唇があなたを追うように動いた。
愛してる。
こうして世界は平和になった。
悪逆非道の王は倒れ、束の間、世に平穏が訪れたのだ。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?