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陰謀論・基本編(1)---陰謀論概観

新型コロナ騒動以来、一般社会に定着した言葉の一つに「陰謀論」が挙げられます。
この言葉自体は日本でも1980年代から存在しましたが、一般にはあまり知られていませんでした。

それが何故今になってマスコミで取り上げられるようになったのか…という問題はとりあえず置いておきますが、2020年以降にこの言葉を知った人の多くは「陰謀論」というとおそらく、
・証拠もないのにただ「反ワクチン」を掲げ、
・感染防止策を軽んじて無視し、
・乱暴な「ニセ科学」を振りかざす人たち
という印象を持っているのではないかと思います。

上記で述べた通り、「陰謀論」「陰謀説」自体はずっと以前から存在しています。
そして一括りに「陰謀論」言いますが、実は陰謀論と呼ばれるものにも色々な考え方があり、意外と幅広いのです。

それゆえ本を1冊読んだだけで全部わかるというものはないのですが、概要をだいたい一通り網羅していて、尚かつ読みやすいという点では、私は個人的にはこの本をお勧めしています。

偽情報退散! マスコミとお金は人の幸せをこうして食べている
(Thinker, 2011, 徳間書店)

ただこの本は2011年初版と少し古く、現在絶版になっていて入手しづらいようですので、ここで本書の主要な内容の要約に、2020年以降の情報を少し追加して紹介していきたいと思います。

※ご紹介する書籍の内容に間違いが含まれていないとは言い切れません。紹介する内容をご参考に皆さん自身でも調べてみてください。

●陰謀論とは?

「陰謀論(Conspiracy theory)」って何でしょう。
全般的に共通するのは、

ごく一部の悪巧みをする人によって世界が支配されている。

『偽情報退散! マスコミとお金は人の幸せをこうして食べている』p.194

という考え方です。

「ごく一部の悪巧みをする人」とは、「エリート」、つまり王族とか貴族とか、政治家、資本家、金融業界のトップなんかがだいたい想定されています。
具体的にはロックフェラー一族やロスチャイルド一族のような国際銀行家、英国王室、場合によっては日本の皇族もその一部だとする説もあります。

また別系統では、フリーメイソンやイルミナティといった秘密結社によって世界が支配されているという説もあります。こういうのがあるので、ちょっと怪しい印象になっている訳です。

昨今知られるようになった「Qアノン」や米国のトランプ前大統領、新型コロナやワクチン関する陰謀説については、また新しい流れですので別の機会に譲ります。

●「陰謀論(Conspiracy theory)」と「陰謀学説(Conspiracism)」

英語には、著述家のフランク・P・ミンツ(Frank P. Mintz)が1980年代に普及させた「陰謀学説(Conspiracism)」という言葉もあるそうです。
これは以下のように説明されています。

金融崩壊やその他社会システム腐敗の根源と責任は一部のエリート支配者層にあり、大衆が彼らを権力の座から引きずり下ろすことで、社会を健全なものにできるという展望を与えるものである。この学説は、アメリカは元よりその他の国々においても、様々な政治的または社会的グループの活動に貢献するものであり、これらの展望をあたえることのない陰謀論とは、一線を画すものである。

『偽情報退散! マスコミとお金は人の幸せをこうして食べている』p.196

ミンツの言うところでは、たとえば「坂本龍馬はフリーメイソンだった!」というような単なる暴露本的なものは「陰謀論」、「一部のエリートどもが現代社会の腐敗を招いている」という論を展開しつつも「ではどのように行動するべきか」「どのような社会の在り方が望ましいと思われるのか」等が提案されていれば「陰謀学説」ということになります。

●陰謀論が「怪しいもの」と見られるようになったきっかけ

陰謀論は、元は

ある犯罪や政治的な事柄の背景には何らかの隠された計画がある

『偽情報退散! マスコミとお金は人の幸せをこうして食べている』p.195

という見方を表すだけの中立的な用語でした。
それが何故怪しいものと見られるようになったのか。

最初のきっかけは、1960年代のケネディ大統領暗殺やベトナム戦争なのだそうです。

これらの政治的動乱の背景に陰謀の存在を疑う国民が増え始めたことを恐れた政府が、陰謀論とは不確かで証拠がない、少数派の当てにならない思い込み、というネガティブな意味づけをしたのだ。そのために、大学の御用学者やマスコミ知識人と新聞・テレビなどマスコミ各社が総動員された。その結果、「陰謀論=怪しい説」というイメージが欧米社会で定着した。それが、のちに日本にそのまま輸入されている。

『偽情報退散! マスコミとお金は人の幸せをこうして食べている』p.195

それゆえ

日本の大半の専門家や評論家は「まともな学者なら、陰謀論を真面目に受け取ってはいけない」というアメリカの御用学者の教えをありがたく忠実に守っているに過ぎない。

『偽情報退散! マスコミとお金は人の幸せをこうして食べている』p.195

のだといいます。

確かに陰謀論の中には変なものや怪しい説も諸々混在しているのは事実なのですが、「ある政治的な時間や出来事の裏に隠された計画がある」というのは全て妄想や憶測ではありません。

●冷静に、できるだけ多面的な視点を持つことが肝要

たとえば戦争が起これば軍需産業が大儲けできるのは、誰もが知っていることです。
アイゼンハワーも1961年に大統領退任演説で、「軍産複合体」の存在とその高まる影響力を抑え込まねばならないと警告しています。

欧米の国際銀行家が、軍需産業やマスコミ、またアメリカの中央銀行の株式を所有していることは事実です。
それを御用学者や大手マスコミが巧みに陰謀論として話をすり替えている訳です。

特に2020年以降、テレビや新聞など大手マスコミで語られていた陰謀論は、ほとんどの場合怪しいフィクションめいた側面だけを取り上げており、これだけを聞いたら誰しも信用するに足りぬものと思うでしょう。

しかし一度冷静に、実際に起こっている出来事と、「お金の流れ」を見てみて欲しいのです。
そんな訳で次回は銀行とお金のお話を。

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