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お酒について#66

その前はちょっと一杯やってキャバクラの看板が視界に入るだけで胸膨らみ、憂国、希望、未来、と大海原を前にする吉田松陰先生の様な心境になり、値段もよく見ず飛び込みで入って、数万払ってさらにそれで飽き足らず、アルコールでどんより鈍る景色に極彩色の同じような看板をまた見つけると、またぞろどんな店かと想像を巡らしつつも、財布が随分薄くなっている自覚だけは最低限持ち合わせ、部屋に帰って即寝。翌朝、治癒にだいぶ時間を必要とする二日酔いと、携帯には早々と送られた営業用のメールだけが残った、全く不毛を量産する時期、その行為であった。

さて、都市において大箱キャバレーという男の夜の施設がほぼ姿を消した。先日、桂宮地師が大阪のキャバレーを紹介する様子をTVに映していたがどうなるか分からない、インバウンド用に営業スタイルを変えるとか、時間貸しとか、キャバレーとして存続するには手を打たないといけないと思われる。

幸運?にして閉店前の大箱キャバレー「蒲田レディータウン」に闖入した事があった。2名で訪問致しますと50〜60代(もっと上の方も居られたと)のお姉様が3名付いて瓶ビールが3本セットで最終的な支払いは1人1万円到達しなかったと思われる。とかくテーブルに付いた60代と思しきお姉様の1人が、ビールを注いだり、カラオケの本を持ってきたり何をするにもスピーディーで、世の中にそんなスピードで動く60代はいないよと心配したものである。カラオケは生演奏、帰りに貰った名刺の裏には往年の少女漫画で描かれるような、目に星がいくつも散りばめられた鉛筆書きの自画像が添えられていた。

キャバレーより小さい規模の男の夜の施設は順にキャバクラになり、クラブになり、パブになりスナックになる、では小さいお店に客が流れているかと疑うと、日経平均株価がバブル期を越えたからといってあの時の銀座の賑わいはピンと来ず、スナックにラーメン屋の様な行列が出来ている光景なぞ見た事はない。男の夜のお楽しみ施設は回帰やスパイラルする事無く衰退、金はどこぞかに有るがそこに流れてくる理由、動機が全国的に失われたのである、ホストは知らんけど。

ホストは本能。(女性のと入れないのが逃げ腰し)それだけではパンダをパンダ、クマをクマと指摘するだけで不毛ですが、不毛に金を溶かした身として、酒と女と欲望を飲み込むTOKYOにこの文章で1本の産毛を植毛したとす。










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