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お酒について#65

燕球団の名誉会員に著名な作家の名が在る。
ある種、独自の文体で書かれる小説が人気で、その一文を切り取られてツイッターなどで晒されるが、その反応は「さすが!」とか「いいね!」と業績ある哲学者の残した名文句に対する反応では無く「(笑)」、「何だかねぇ」という、世界レベルの作家にしては滑稽だな、なんてネガティブな反応がほとんどである。と言うか、その作家に限っては、その様な反応を敢えて受ける為の、発信者と受信者のSNS上における、お定まりのご挨拶様式であるとも言える。

その事を私的に責め立てるものでも肯定するものでも無く、それとは別にその作家の新作は常に注目され、出版済みの本は売れ続けると言い切れる、つまり、先のSNS上の現象は真似されてこそ一人前の「島倉千代子現象」であると言える。

少し前『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』という本が出版された、本屋でパラパラめくった程度しか読んでないが、パロディーとして面白可笑しく、それぞれの作家がカップ焼きそばの作り方を書いた風に作文されている。売ったもん勝ちのエンタメ本でありましょう((タイトルが正しいかどうか画像をググると、これまた熱烈に燕球団を支持する著名なミュージシャン(関白を宣言していない方、最近は著述業も)が帯に推薦文を書いていて、妙な発見に微笑む))。

話は変わりまして、あるフリーアナウンサー(たまにプロ野球ニュースに出演)のツイートによると、順天堂大学医学部教授に「交感神経と副交感神経のバランスがF1ドライバー並」と診断されて、自慢というか、喜びの感情を表していた。それは私的に虚を突かれた一文であった。

読んで字のごとく、ご存知のように自律神経とは自分の意思でコントロールできない神経活動である。内臓の動きを自律神経が司る事は理屈で分かる、意思で止められたら人は簡単に死んでしまう。自律神経には交感神経と副交感神経、大きく二つの性格別的役割がある、別役割になったのはその方が種を残し、存続していく上で人の為に良いとなったのだろう(専門意見は存在しましょう)。

ただ、二つの役割で、副交感神経優位のみで良いはずの、例えば運動会における徒競走。例えば初デート。例えば借金の申し込み。例えば何故か万円を超える温浴施設(男湯)における待合室、等。枚挙にいとまがない上に露悪な例を持ち出していますが、それぞれの場面で自分の意思とは裏腹に『不慣れ』な状況で交感神経が優位になり、心臓の高鳴り、発汗、等、が起きる。さらにはその反応に個人差がある不思議が、アタクシの無意識下層で疑問として渦巻いていたと思われる。その疑問の存在と、それに対する答えがそのツイートにおいて、突如提供された事に虚を突かれたのである。

フォーミュラー1における超高速マシンを何時間も、それも争いながら運転するという稀有な職業、それには交感神経がずっと優位でも、副交感神経がずっと優位でもいけない、マシンのバランスのためには自らの自律神経のバランスが正しくなくてはならない。時速数百kmの状況下で心臓は平静に、発汗は日常レベルに、視界を極端に狭めること無く、マシンの状態とライバル車の位置を無線での連絡を元に冷静に把握する事が求められる。

ドライビングシュミレーター(要は車ゲーム)『グランツーリスモ7』をプレイして、兎に角上には上がいる、兎に角上には上がいる(もう一回)、日光鬼怒川の廃ホテルの様に動かしようのないその事実、全きの現実、それはアタクシめの交感神経と副交感神経の非バランス「すぐ叫び、手汗はダラダラ」が上には上を作っているのであった。

そして最後に、先に書いた著名な作家の話に戻る。『女のいない男たち』という短編集を読んだ、私的には氏の独自の、お得意な創作ニュアンスが凝縮された、いつもの作風が一度に4編も5編もお得に読めて楽しめたと思う。その短編の中の一つに「独立器官」というタイトルのお話がある。そこには恐ろしい事が書いてあった。

読了しないとその恐ろしさは理解できないでしょうが、とどのつまり、男は女より優位になれないのである、せいぜい自らの自律神経を整え、速い車の運転でしか女性に優位を表せない性なのある。さらにそれだけに済まずに、その短編集のファーストストーリーは男性が得意とする車の運転を、女性が水を得た魚のように行い、その後部座席では中年男性が死んだ女房が生前、寝取られた話をうじうじとしているのである、だから氏の小説は決して昭和イメージの男と女では無く、その革新に挑戦しているとはアタクシは思う、ただ書き手が男である事は否めないし、その性の原初が小説を創作する基幹エネルギーであるからこそ、毛嫌いする人はするのでしょう、読まず嫌いの方も読むと楽しめると思うよ、賢いキツネがうっかり落とし穴に落ちるみたいに。(その言い回しが嫌、と聞こえてきそう)

以上。



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