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暗闇に灯す小さな光

210610 暗闇に灯す光

みなさんはこれまで心配や不安に駆られたり、自信を失ったりあるいは人生に希望が持てなくなった時に、どのようにして乗り越えてきましたか?

 先日5月31日、女子テニスプレーヤーの大坂なおみさんが全仏オープンを棄権する意向を表明しました。試合後の記者会見を含む大会規則についてのコメントとともに明らかにしたのは、2018年の全米オープン以降うつの症状に悩まされていたということです。そして、しばらくコートを離れいくらかお休みをとるとのこと。

 大坂なおみさん全仏棄権について、元陸上選手・為末大さんの日経電子版Think!に掲載されたコメントが印象的でした。

 国際プロサッカー選手会のアンケート調査では現役サッカー選手の38%が不安障害や鬱症状を示したことがあるという結果が出ました。一般の方が13-17%だということを考えるとかなり高い数字です。
 心身ともに強靭なイメージがあるアスリートですが、実際には日常的に強い重圧にさらされており精神的に不安定です。(中略)心は目に見えないために乱暴に扱われがちですが、心が壊れたらどんな目標も計画も意味をなしません。
 大切なことは心にも体力があり消耗するという認識を持つこと。不安を感じたらとにかく相談することの徹底だと思います。
 日経電子版Think! 2021年6月5日
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFM048Q70U1A600C2000000/

 彼らのプレーしている姿からは想像しがたいのですが、アスリートもまた私たちと同じ心をもった一人の人間ですから、彼らにとっても精神的な静養と周囲のサポートがどれほど大切かということを考えさせられました。
 

 ところで生きていくうえで誰にとっても必要な精神的サポートについては、元プロ・テニスプレーヤーの杉山愛さんのエピソードが、わたしたちに大切なこと教えてくれます。現役時代苦境に陥った時に、お母さんの言葉が支えになったというのです。                          

 私自身の一大転機となったのは2000年です。25歳のころですね。ダブルスでは世界ランク1位になったのですが、シングルスは大スランプ。自分のテニスを見失って、打ち方まで分からなくなった。続ける意味はないんじゃないかと思って、初めて引退を意識しました。そのときも母に打ち明けたのですが、当時は、
「あなた、これじゃ何をやっても、きっとうまくいかないわよ」
と言われました。そう言われても、私には頑張り方が分からなかった。それで、どうすればいいか見えてるの、と聞くと、
「見えるわよ」
と言うんです。その言葉に、どれだけ励まされ、力をもらったか。真っ暗闇の中に灯った小さな光に感じましたね。当時は外国人コーチについていたのですが、この言葉に飛びつき、母にコーチをお願いしました。自分で自分を信じるよりも強く、母が私のことを信じてくれていたのです。
 引退後に、「見えるわよ」の意味を母に尋ねました。すると、こんな言葉が返ってきました。
「どうやったら、あなたらしさを取り戻せるか。その道筋が、私には見えてたのよ」
 テニスに取り組む姿勢が変わったのは、それからです。結果に一喜一憂していたのが、その結果が出た意味とか、結果が私に何を伝えようとしているのかという、もうちょっと深いところに目を向けるようになりました。
「スランプの杉山愛を救った母の一言『見えるわよ』」
週刊朝日2012年11月23日号
 https://dot.asahi.com/wa/2012111700013.html?page=1
   

 人間生きていれば一度や二度は精神的に参ってしまうことがあるものです。

 そんな時に助けや支えになるのは、やはり信頼できる人とのつながりです。杉山愛さんがスランプに陥った時にお母さんが彼女にしたことは、彼女のことを本人以上に信頼するということでした。

 人はなぜ自信を失ってしまうのでしょう?

 それは些細なミスの積み重ねかもしれないし大きな失敗なのかもしれませんが、いずれにしても自分自身を信頼すること=将来に希望を見出すことができなくなってしまうからです。だとしたらその時に本当に必要なのは本人以上にその人のことを信頼してくれる人でしょう、しかも無条件に。

 人は、自分のことを無条件に信頼してくれる人には、良いことばかりでなく悩みや弱みを打ち明けることができるものです。

 強い自分も大切ですが弱い自分をもまた同じくらい大切にし、受け止めてくれる人がいることで、わたしたちは辛く苦しい時をなんとか乗り越えていくことができるのではないかと思います。

 このように変化が激しく不安定な時代だからこそ、自分を信頼してくれる人を大切にしたいものです。そしてまた逆にこちらから信頼を寄せることは…たとえどんなに小さくても…暗闇の中にいる人の心に光を灯すことになるのでしょう。

 

 能生の弁天岩

 新潟県糸魚川市の能生海岸には大きな岩礁である弁天岩があります。この弁天岩は、フォッサマグナの海底火山の噴火によってできたものが、後に隆起し海上に出現したものだそうです。そのため弁天岩周辺の陸地や海底も約百万年前に溶岩などが海中で冷えて固まった岩石でできているとのこと。

210621 弁天岩曙橋
210621 弁天岩入口

 朱色の欄干の曙橋を渡って島に至り、鳥居をくぐって石段を上ると、島の中ほどには航海の安全を祈る弁財天(市杵島姫命・いちきしまひめのみこと)を祀った厳島神社(いつくしまじんじゃ)があります。

210621 弁天岩頂上の鳥居

 そこからさらに石段を上ると再び鳥居が現れさらに岩場を登りきると頂上の祠にいたります。

210621 弁天岩頂上からの眺め

頂上ではなぜか祠の隣に灯台が(2016年には恋する灯台に認定)…それにしてもこの弁天岩全体が海底から出現したというのですから、驚きです。



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