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『4D DRAWING』展に寄せて

表参道のTIERS GALLERYにて4D DRAWING展を開催します。本展覧会では、クリエイターの深地宏昌さんとのコラボレーションで制作した作品群を展示します。

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『4D DRWAING』展のテーマは「4次元」です。ここでの「4次元」は数学の研究分野であり、「4次元ユークリッド空間」のことを指します。2次元の「正方形」、3次元の「立方体」のように、4次元にも「超立方体」と呼ばれる図形があります。私たちは3次元までの世界しか見ることができず、この4次元の図形を直接見ることはできませんが、3次元や2次元に投影することで可視化できます。

『4D DRWAING』展の原案は9年前の2012年、筆者が情報科学芸術大学院大学[IAMAS]に在学していた時に制作した4次元グラフィックスの習作です。IAMAS在学時、宮崎興二先生の著書『高次元図形サイエンス』を読んで、「4次元」の世界に出会い、2次元に投影されたグラフィックとしての「4次元」の美しさに魅了され、4次元グラフィックスの研究を行っていました。当時は正五胞体、正八胞体、半切正八胞体など「正多胞体」をテーマにグラフィックの習作を制作しましたが、作品としては未発表のままでした。

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4D DRAWING

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『4D DRAWING』展では、深地宏昌さんとのコラボレーションで作品を制作しています。深地さんは代表作である『Plotter Drawing』で国内外の様々なアワードを受賞している気鋭のクリエイターです。筆者は3年前に開催された「YouFab Global Creative Awards」のトークイベントで初めて『Plotter Drawing』の作品を拝見しました。プロッターは1960年代のコンピュータ・アート初期の時代から使われている枯れた技術ですが、水平思考から生まれた『Plotter Drawing』の表現としての新規性と美しさ、紙とペンによる工芸的な質感に感銘を受けて、今回お声がけさせていただきました。

今回のコラボレーションでは、筆者が9年前に制作した「4次元」のプログラムをプロッターで描画できるようにアップデート、「デザインツール」として深地さんに共有し、『Plotter Drawing』の技法で作品を制作しています。

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この「デザインツール」はAdobe IllustratorやPhotoshopのような汎用的なソフトウェアではなく、『Plotter Drawing』のために再設計したオリジナルのソフトウェアです。深地さんとの対話からパラメータや機能を追加するなど継続的に開発を続けてきました。

「デザインツール」はアウトプットの幅をコントールしながらも余白を含めて設計しますが、驚くべきことに、深地さんによる「デザインツール」を用いた実験の繰り返しとアイデアによって完成した作品は、筆者の想像を遥かに越えるものになりました。プロッターで描画することは、技術的には可能ですが、この作品は筆者のアイデアと経験だけでは作ることができないもので、コラボレーションだからこそ実現できた作品だと思います。これはコラボレーションによる作品制作の醍醐味でもあり、『4D DRAWING』展では、その制作プロセスも併せて見ていただけたら幸いです。

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2020年、コロナ禍の影響で多くの展覧会が延期又は中止となりました。『4D DRAWING』展も昨年予定していた開催を断念し、1度延期しています。しかし、延期後も検討に検討を重ね、まだ状況は良くなったと言えませんが、『4D DRAWING』展の開催を決めました。9年前作品として発表できずに中断していた「4次元」のテーマをこのような形で発表できることを嬉しく思います。

領域横断的コラボレーションによる「4次元」の美の探求を是非ご覧ください。

4D DRAWING
会期 2021年6月23日(水)〜6月30日(水)
時間 11:00 ~19:00(期間中無休・入場無料)
会場  TIERS GALLERY
主催  深地宏昌 + 堂園翔矢

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