見出し画像

米国市場:12/11週の振返りと12/18週の予定

市場概況

 先週のS&P500指数は、4,719.19と前週比+ 2.49%で終了しました。NASDAQは37,305.16と前週比+ 2.92%で終了しました。
 先週の株価は、13日のFOMCまでは少し上昇を示してはいるもののほぼ横ばいの動きでしたが、13日にFRBがハト派的な姿勢を示し、来年3回の利下げ予想を示したことで、大きく上昇しました。この結果、S&P500指数は年初来の高値を更新し、2022年の年初の高値に迫る勢いを見せています。
 経済指標を見ると、先週はインフレに関する様々なデータが示されています。12日には消費者物価指数が発表され、3.1%と予想と一致しました。物価の変動が大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは4.0%と前月から変わりませんでした。ただ、AAAのガソリン価格は今週も先週比で下落しており、個別の項目でもマイナスに転じているものも出てきており、物価の上昇ペースは更に鈍るものと思われます。
 14日に発表された小売売上高は前月比0.3%増と予想0.0%を上回っています。世論調査では、消費に対しての米国民の消極的な態度とは裏腹に、堅調な消費が示されています。全体的なインフレは続いていますが、多くの項目の価格は下がってきていることが示されており、12月も堅調に推移しているように思えます。ただ、来年の見通しについては不透明感が否めなく、雇用市場・平均時給の伸びが落ち込んでくるとこちらの数字も変化していることが予想されます。このことから、インフレは落ち着いてきており、FRBが目標としている2.0%にだんだんと落ち着いてきている、消費も爆発的な伸びはないが堅調に推移していることがはっきりとしてきたと考えています。ほぼ平常運転に戻ったと結論付けられると思います。
 13日のFOMCもこの結果を認識しており、今回発表された経済予想サマリーにもその内容が顕著に現れていたと思います。経済はおかしくはなってはいないが、今の金利状態ではタイトすぎるため、次年度は3回程度の調整の利下げを予定しているということが総括になると思います。この結果、利下げが明らかになったことで、長期金利は大きく下げ、4%を割り込むという形になっています。調整程度の利下げということを考えるとこの4%を切るような大きな下げは少し下げすぎではないかなとも考えており、その揺り戻しが今後発生してくるのではないかと思います。長期金利が上昇することによって株式市場も少しギクシャクするのかなと思います。
 FOMCにて利下げの可能性が示されたことで、株式市場は全体として大きく値を上げましたが、その中でも特に好調であったのは住宅セクターでした。住宅ローンの上昇に苦しんでいただけに、今後この住宅ローンが下げに転じるということが予想されることから大きく買われていました。指数の方は、若干買われすぎで割高になってきています。FactSetによる来年度の予想EPSは245.4となっており23年度と比較して約11%の成長が見込まれるとアナリストは予想していますが、来年度の相場を引っ張る機関車が見つからない中ではなかなか厳しい数字ではないかなとは思っています。ただ、この数字からでもS&P500指数はPER19.2倍となっており、相場は買われすぎの水準に入ってきています。今年の主なイベントは先週で終了してしまい、相場が大きく上昇する要素はほぼなくなりましたが、季節性からしてまだ上昇は続くと思いますが、コンセンサスが下がることによって上がりにくくはなってくるものと思っています。

株式

 アナリストや企業は、S&P 500種構成企業の第4四半期の業績見通しを、過去の平均と比べてより悲観的にみているようです。結果、S&P 500種構成企業の第4四半期の予想利益は、期初の予想よりも低下しています。前年同期比では、S&P 500種構成企業の第4四半期の利益成長率は第3四半期を下回ると予想されています。
 S&P500構成企業の業績見通しについて、アナリストは平均より大きく引き下げています。予想EPSを比較すると、第4四半期の予想利益は9月30日以降5.8%減少しており、この減少は5年平均(-3.5%)、10年平均(-3.3%)よりも大きくなっています。また、四半期の予想EPSの減少幅としては、2023年第1四半期(-6.4%)以来の大きさとなっています。
 S&P500構成企業のうち、2023年第4四半期のEPSガイダンスとしてマイナスの見解を示した企業の数、割合ともに平均を上回っています。72社がマイナスのEPSガイダンスを、39社がプラスのEPSガイダンスを発表しています。ネガティブなEPSガイダンスを発表している企業数は5年平均(57社)、10年平均(62社)を上回っています。S&P500種構成企業のうち、2023年第4四半期のEPSガイダンスがマイナスの企業の割合は65%(111社中72社)で、これも5年平均の59%、10年平均の63%を上回っています。
 アナリストによる業績予想の下方修正と各社によるEPSガイダンスの下方修正により、2023年第4四半期の推定(前年同期比)利益成長率は第4四半期の開始時点と比較して低下しており、9月30日時点の予想(前年同期比)増益率8.1%に対し、12月15日時点では2.4%の増益となっています。仮に2.4%が実際の増益率となれば、S&P500種指数は2四半期連続で前年同期比増益となりますが、第3四半期(4.9%)より低い成長率となります。
 11セクター中6セクターが前年同期比で増益となる見通しで、通信サービス、公益事業、一般消費財セクタ ーなどがその牽引役となる予想です。一方、前年同期比で減益と予想されるセクターは、エネルギー、素材、ヘルスケアを筆頭に5つとなっています。
 収益の面でも、アナリストは当四半期中に予想を下方修正しており、9月30日時点の予想では3.9%の増収であったのに対し、12月15日時点では3.1%の増収予想となっています。仮に3.1%が実際の増収率となれば、S&P500種指数は12四半期連続の増収となります。
 金融セクターを筆頭に、8セクターで前年同期比増収が見込まれています。一方、前年同期比で減収となるセクターは、素材セクターとエネルギー・セクターを筆頭に3セクターと予測されています。
 今後の見通しとして、アナリストは2024年第1四半期の利益成長率(前年同期比)を6.2%、第2四半期を10.5%と予想しており、2024年度は、(前年比)11.5%の増益を予想しています。
 12ヵ月予想PER は19.3 で、5 年平均(18.8)、10 年平均(17.6)を上回っている状況です。(Source FactSet)

来週の主な決算発表(予定)

12/18(月):
<寄付き前>-
<引け後>Heico (HEI)
12/19(火):
<寄付き前>Accenture (ACN)
<引け後>FedEx (FDX)
12/20(水):
<寄付き前>General Mills (GIS), Winnebago (WGO)
<引け後>Micron (MU)
12/21(木):
<寄付き前> CarMax (KMX), Cintas (CTAS), Paychex (PAYX)
<引け後>Mission Produce (AVO), Nike (NKE)
12/22(金):
<寄付き前>-

米国の主な経済指標

12/18(月):
12/19(火):住宅建築許可件数・着工件数
12/20(水): 中古住宅販売件数
12/21(木):フィラデルフィア連銀景況指数、新規失業保険申請件数
12/22(金):個人所得・支出、PCE、新築住宅販売件数

今週の着目点

 今週は、経済指標としては米国住宅市場に関するいくつかのデータが発表されます。今週のFRBの利下げ予想によって、住宅メーカー株価は急騰していました。もし11月の一戸建て住宅着工件数が予想外に低い結果になると、これらの銘柄は今週の上昇幅から大きく後退する可能性があります。まだ、住宅市場の動きがはっきりとしないため、もう少し観察が必要かなと思います。
 また、インフレ統計として11月の個人所得・支出、PCE価格指数も発表されます。インフレ圧力が後退し、賃金上昇が続いていることから、11月の個人所得・支出統計で実質賃金の上昇が続いていることを確認しておきたいです。パウエルFRB議長のコメントにもあるように、FRBは今後のインフレ・データで更なる進展を確認することを示しており、この数値を見ることで、これらの結果を確認することでさらなる進展の兆候を探ることになると思います。
 来週から年末休暇が始まりますが、大企業の決算がいくつか発表されます。今後の経済を確認するうえでも影響のある企業が多いので、しっかりとコメントを確認していきたいです。代表的なところとしては、フェデックス(FDX)の景気と年末商戦に関するコメントがどのようになるか、ゼネラル・ミルズ(GIS)の決算は、食料品店における価格動向や消費者数の現状を確認します。マイクロン(MU)の決算では、PCとスマートフォン市場の回復と、データセンター需要に関する最新情報が提供されますので、アップル(AAPL)、クアルコム(QCOM)、エヌヴィディア(NVDA)にも派生してくると思います。また、ナイキ(NKE)からは、景気の減速が心配されている中国や欧州についての消費者需要や動向に関するコメントにも注目したいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?